トヨタ副社長:グラブ出資でコネクティッド加速、業界の変化に対応

  • シンガポールで年度内にも全グラブ車両にトヨタの通信システム搭載
  • データをビジネスに、車メーカーからモビリティ企業への転換急ぐ

トヨタ自動車は東南アジアで配車サービスを展開するグラブへの出資を足掛かりに、アジアでコネクティッド事業の拡大を加速させる。シンガポールでは今年度内にグラブの全車両にトヨタの通信システムを搭載する方針だ。トヨタは車両の走行データを活用し、従来の自動車の製造販売を超えたビジネスモデルの構築を急ぐ。

友山茂樹副社長

Photograph by Albert Bonsfills

  友山茂樹副社長が名古屋市内でブルームバーグの取材に答えた。アジア全域でのコネクティッドサービス拡大について「できる限り早くやるよう努力している」と説明。シンガポールではグラブが配車サービスに利用する全車両約7000台でトヨタのシステムを搭載し、データの収集や販売ができる体制を整える方針で、「目安としては年度内くらいには全部そうなると思う」と話した。インドネシアやベトナムなどでもディーラーとともに「着々と進めている」と言う。

  自動運転などの新技術や1台の車を複数人で共有するシェアリングなどの急速な普及が見込まれるなか、トヨタは今年1月、自動車をつくる会社から人々の様々な移動を助ける「モビリティ・カンパニー」になると宣言。昨年から提携しているグラブに対して今年6月に10億ドル(約1100億円)を出資し、配車サービス領域での協業を拡大すると発表した。8月には米配車サービスのウーバーに5億ドルを出資するなど他社との提携を進めている。

  友山氏は、グラブにはアジア全域でトヨタの通信機器を備えた車両の利用率を高めてもらい、ディーラーによるメンテナンスや保険でもトヨタの通信プラットフォームを活用してもらう体制を整えると説明した。すでに自動車のシェアリングサービスを手掛ける事業者がいる海外で一から立ち上げていくことは「現実的ではない」と指摘。各地域の有力な事業者と提携し「そこに我々が移動のプラットフォームを構築していくということが戦略的に非常に重要」と配車サービス大手と提携を進める狙いを語った。

  さらに自動運転車においても、運転手のコストが削減でき車の稼働率も高められる観点から個人利用よりもライドシェアなどのサービス事業者がまず自動運転車を利用する可能性があり、トヨタの技術を実証的に試験していく必要性があるとの見方を示した。個人向けの自動運転車の導入については価格面や社会的コンセンサスが求められる点などから「当面はない」と友山氏は見ており、トヨタは配車サービスの企業と組み、自動運転車を「大量に試して、データを取るにはより実証に近い所で取らなくてはいけない」とした。

社長・副社長でSNS

  友山氏は1990年代前半から業務改善を行う部署で、当時上司だった係長時代の豊田章男社長と販売店で顧客から下取りした車を写真に撮り、店舗で展示する前から情報端末の画面に画像を表示して中古車として商談を始められるようにするシステムを導入するなど、生産現場以外での生産性改善や顧客との接点づくりに努めてきた。

  ITを活用したサービス提供などを目的に00年に設立された「ガズーメディアサービス」では豊田氏が初代社長、友山氏が副社長を務めたが当時の経営陣の意向で社名に「トヨタ」を使うことができず、「画像」の連想からの造語「ガズー」を名乗った。今ではトヨタコネクティッドとなり、トヨタのビジネス変革を支える拠点になっている。

  トヨタを中心とする従来のサプライチェーンを越えて異業種との連携が増える中で、友山氏が大切にしているのは「人間関係とスピード」だと言う。日本では時価総額トップのトヨタでも海外ではより大きな企業がたくさんあり、トヨタの「カラーを取って話をすることが重要」とし、頭の中にアイデアを常に用意し、交渉先に何かを「必ず提案する」ようにしていると明かした。

  新しい分野への取り組みはトヨタの社風をも変えつつある。友山氏によると、トヨタはもともとボトムアップ型の会社だが、変革期にはトップダウンが必要になるとし、豊田社長と副社長だけのSNSグループをつくり、意思疎通の迅速化を図っていると明かした。「今のままのビジネスモデルでは続かない。ただ漠然と本業を続けていくことはもう通用しないという危機感」を持ち、生き残りをかけて魅力的なモビリティサービスの提供に努めたいと話した。

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