パウエルFRB議長に幾つかの選択肢、コミュニケーション向上で

  • ドット・プロットが発するシグナル、議長自身も重要性を否定
  • 各ドットがどの当局者のものか明示してほしいとエコノミストは希望

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2月に就任して以来、金融当局のコミュニケーション手法について既に独自色を打ち出してきた。それをもう少し進めたいと議長が望むなら、幾つかの選択肢が考えられる。

  経済学博士が使う表現よりも、「平易な言葉遣い」が望ましいとするパウエル議長は、金融政策発表の声明を見直すとともに、年8回開催の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見を現在の1回おきから、来年以降は毎回行うようにする。

パウエルFRB議長

写真家:Andrew Harrer / Bloomberg

  FOMCの各参加者が四半期ごとに提出する経済予測のパッケージを調整することも、一般へのメッセージ伝達をさらに刷新する選択肢の1つだ。現行の手法には批判があり、パウエル議長自身も長期見通しの有用性に難色を示している。

  ただ、変更には潜在的な危険があるとしてエコノミストは警告し、パウエル議長がそうしたリスクを冒すか懐疑的だ。FOMCにはコミュニケーションの在り方を検討する小委員会があり、同委が想定しそうな選択肢を幾つか挙げてみる。

ドット・プロットをやめる

  ウォール街のエコノミストのグループは2016年の論文で、各当局者の政策金利見通しを点で表したドット・プロット(金利予測分布図)について、「もはや有用ではなくなった」と主張した。当時FRB理事だったパウエル氏はドット・プロットを擁護しつつも、FOMC声明と「相反するシグナルを発すると受け止められる」ケースが時々あると認めた。議長就任後の今年3月の記者会見では、「FOMCとして見通し中央値について採決したり意見が一致したりしているわけでない」と述べ、ドット・プロットが発するシグナルの重要性に否定的な考えを示した。

  それでも、パウエル議長がその公表を完全にやめてしまうとする意見を見つけるのは難しい。元FRBエコノミストで現在はコーナーストーン・マクロのパートナーであるロベルト・ペルリ氏は、ドット・プロットに欠陥はあるかもしれないが、取りやめることになれば透明性向上に向けた当局の漸進的な歩みを逆転させるものと受け止められかねないと指摘する。

  ペルリ氏は「それをやめるなら何かで置き換えなければならないだろう。金融政策が秘密裏に策定されていた暗黒の日々に戻りたくない」と論じた。

予想対象期間を短縮

  代替案の1つは、政策金利の道筋だけでなくインフレ率、失業率、経済成長率についても、予想対象期間を短縮することだ。そのようすれば、金融当局の知識の限界を強調するパウエル議長の取り組みにもぴったり合致する。

  3月の記者会見で20年の政策金利の予想中央値について問われたパウエル議長は、「3年近く先のことで、それほど将来のことを見通す能力はわれわれにはない。従って、それにあまり重点を置くつもりはない」と答えた。
  
  これまでのやり方に変更がなければ、FOMCは26日公表の最新の経済予測に21年の分の予測を新たに加える。エコノミストは、新たな数字が予想としてはほとんど有用性を欠くとの点で一致するが、どんなに欠陥があっても情報が少ないよりも多い方が望ましいとして、対象期間の短縮に賛成する意見はない。

  ソシエテ・ジェネラルの米国担当シニアエコノミスト、オメイア・シャリフ氏は21年の予想について、今週の「発表で私が最も関心を持つものだ」とコメント。「信頼できるというわけではないが、経済の先行きや、フェデラルファンド(FF)金利をどこまで引き上げることになりそうかを巡って、金融当局の考えを探る役立つ道しるべになると引き続きみている」と話した。

誰の予想か明示する

  もっと人気を博すであろう変更は、金利見通しを示すそれぞれのドット(点)がどの当局者のものかを明示することだろう。議長を筆頭に、一部の当局者は金融政策策定で他の当局者よりも一段と影響力を持つと考えられるため、こうした方式が採られれば助けになる。

  これが金融当局者にとって踏み込み過ぎであるならば、匿名のままの各ドットに、同じ予想者の経済見通しを結び付けて示すという選択肢もある。これならば、それぞれ予想の間のバリエーションを説明するのに役立つ。例えば、ある当局者が高めの金利予想が、成長に対する一層楽観的な見解によるものなのか、インフレを巡る一段と悲観的な見方によるものなのかが浮き彫りとなる。

  元FRBスタッフで、現在はドイチェ・バンク・セキュリティーズのチーフエコノミストを務めるピーター・フーパー氏は、「これならばあまり多くを明示することなく有益な向上となる」と話した。

可能性は低いが

  実現の可能性はかなり低いと考えられているものの、もう1つ望ましいアイデアは、当局者個々人の予想はやめて、四半期ごとにコンセンサスの政策金利見通しで合意し、FOMCの意図についてずっと強力なシグナルをはっすることだろう。米金融当局は過去にこの可能性を探ったことがあるが、FOMC全体を一つの見通しにまとめるのはあまりにも難しいと判断した経緯がある。

  「彼らはそれをやるべきだが、恐らくそうすることはないだろう。あれほど多くの人がいる中で、コンセンサスに達するのは困難だ」とペルリ氏は指摘した。

原題:Fed’s Powell Has Several Options for Tweaking Communications(抜粋)

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