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首相発言は日銀に福音かリップサービスか、黒田総裁は「粘り強く」

  • 正常化に「フリーハンドを与える趣旨」と元審議委員の木内氏
  • 「当面は出口へ向かうこと容認するつもりない」とパリバ証・河野氏

安倍晋三首相が日本銀行の異次元緩和を「ずっとやっていいとは全く思っていない」と述べたことが波紋を広げている。日銀が金融政策の正常化に向かう上で政治的な許容度が広がったとの見方がある一方で、政策的な意味合いはないとの声もあり、見方が分かれている。

  安倍首相は14日の自民党総裁選に向けた公開討論会で、異次元緩和の出口にどう道筋をつけるのかとの質問に、「私の任期のうちにやり遂げたい」との考えを示した。安倍首相が出口に言及するのは異例だ。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは19日付のリポートで、「出口を容認した点で驚きの発言」と指摘する。

  政府と日銀は2013年1月、2%の物価目標を掲げた上で、日銀が「できるだけ早期に実現することを目指す」とした共同声明を発表。黒田東彦総裁は同年4月、2年で2%を達成するとして異次元緩和を導入した。その後もマイナス金利の導入など追加緩和を実施したが、達成時期や出口が見通せない状況が続いている。  

  元日銀審議委員の木内登英野村総研エグゼクティブエコノミストは19日付のリポートで、首相発言は2%物価目標の達成いかんに関わらず、日銀が正常化に踏み切ることに「フリーハンドを与える趣旨の発言」と受け止めている。

  黒田総裁は同日の定例会見で、首相発言への具体的な言及は避けつつ、「金融緩和にしても引き締めにしても、いつまでも続けたいということはない」と強調。その上で、「目標をできるだけ早期に達成して、正常化のプロセスに入りたいというのはどこの中銀でも同じ」とかわした。一方で、2%物価目標達成に時間がかかっており、「粘り強く政策を続けて実現する必要がある」との考えを示した。

  日銀は前回7月の金融政策決定会合で、物価見通しを大きく下方修正した上で、長期金利の変動幅を拡大するなど、緩和の長期化を見込んで副作用対策を実施。同時に「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」としたフォワードガイダンス(政策金利の指針)を初めて導入した。

  緩和の出口が見通せない中、首相発言は総裁選で金融政策が争点になることを避ける狙いがあったとの見方もある。対抗馬の石破茂元幹事長は17年6月のインタビューで、「異次元の政策がいつまでも続いてもらっても困る」と語っている。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは19日付のリポートで、「安倍政権はもはや2%目標の早期実現にはこだわっていないと見られる」が、日銀が2%インフレ目標を放棄すれば主要国との物価格差を許容し、円高を再び容認するというメッセージになるため、日銀が「旗を降ろすことはない」とみる。

  その上で、来年に参院選や消費増税が控える中、「当面、安倍政権として、日銀が出口へ向かうことを容認するつもりはない」との見方を示した。

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