トヨタが描く自動運転技術の未来、主役はあくまでドライバー

  • 自動運転技術で自動車をより安全で使い勝手をよくするのが狙い
  • 意識改革が必要、漠然と本業を続けるのでは通用しない-友山副社長

ジョン・レオナルド氏が米マサチューセッツ工科大学(MIT)キャンパスにある平屋建ての殺風景なガレージのドアを開けると、中にはトヨタ自動車のセダン「レクサス LS 600hL」があった。レオナルド氏の説明によれば、この銀色のレクサスには最大200メートル離れた人や物体を感知・特定して反応するレーダーやビデオカメラ、レーザーが装備されている。

  「タクシーで通り過ぎれば、トヨタの将来がここでデザインされているとは誰も想像できないだろう」と話すレオナルド氏は、トヨタが2016年1月に米国に設立した人工知能研究会社「トヨタ・リサーチ・インスティチュート(TRI)」の自動運転研究担当バイスプレジデントだ。そしてこのレクサスこそ、自動運転車開発に向けた同社の取り組みに不可欠な存在だ。

自動運転研究担当バイスプレジデントのジョン・レオナルド氏

Photographer: M. Scott Brauer for Bloomberg Businessweek

  ほんの4年前、マラソンロードレースで人間のドライバーに勝るものが出てきた場合にのみ、自動運転車を追求すると語っていた豊田章男社長だが、もはやそのような発言は聞かれない。トヨタが取り組みを強化しなければ、アルファベットの自動運転テクノロジー部門ウェイモや中国の百度(バイドゥ)といった新興勢力への単なる車体サプライヤーになりかねないからだ。

  カリフォルニア州ロスアルトスに本拠を置くTRI設立にトヨタは約40億ドル(現行レートで約4500億円)を投じ、MITやミシガン大学、スタンフォード大学と正式な連携研究を行うことにした。TRIの最高経営責任者(CEO)には米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)で長年、ロボット工学や自動運転車の研究を手掛けたギル・プラット氏を起用した。

  トヨタは6月、東南アジアの配車サービス大手のグラブに10億ドルを出資。8月には米ウーバー・テクノロジーズに5億ドル出資するとともに、自動運転車づくりに共同で取り組む提携拡大で合意した。多目的の自動運転車の開発で自動車メーカー以外とも協力する。

トヨタ・コネクテッドのオフィス(テキサス州プラノ)

Photographer: M. Scott Brauer for Bloomberg Businessweek

  トヨタは必ずしも自動運転車が米国やそれ以外の地域の道路で支配的な存在になる日は近いとする過大な期待を受け入れているわけではない。TRIがウェブサイトに掲げる目標は「衝突事故を起こすことがない車をいつの日か開発する」ことであって、衝突することのない車が自動運転であるかどうかは特定していない。

  トヨタのビジョンは人間のドライバーをなくすのではなく、自動運転技術を活用して自動車をより安全で使い勝手をよくすることだ。運転席にいるドライバーが生産的であり続けるのを手助けする機能を満載することにある。同社は、理論上は完全自動走行を可能にする人工知能とセンサー能力を、人間のドライバー向けにデザインした車に搭載したシステムを「ガーディアン(高度安全運転支援)」と名付けた。

  TRIのプラットCEOは「IT企業がわれわれに似た存在となる前に、われわれがもっとIT企業のようにならなければならないビジネス上の必要性がある。会社が非常に力強い状態にある今こそ、優れたものを全てわれわれで見つけ出すときだ」と話した。

  プラット氏をDARPAから誘い、TRIを創設したのは豊田社長が自分の「将軍」と呼ぶ友山茂樹副社長だ。同氏はトヨタの生産方式として知られる「カイゼン」の信奉者で、ネットでつながった車からの大量のデータを売り物になる製品やサービスに転換することを狙った米子会社トヨタ・コネクティッドの設立にも携わった。

友山茂樹副社長

Photographer: Albert Bonsfills for Bloomberg Businessweek

  ミシガン大教授でトヨタについて複数の著書があるジェフリー・ライカー氏はテクノロジーに精通する友山氏について、半分トヨタで半分シリコンバレーの「フランケンシュタイン」と呼び、友山氏本人は「フランケンシュタインって人造物じゃないですか、でもどこか心がありますよね。だからまあ、光栄ですよ」と語る。

  大手自動車各社はモビリティー・アズ・ア・サービス(MaaS)と呼ぶ概念を構成するテクノロジーの開発を進めている。トヨタはガーディアンのテクノロジーを人間が運転する車だけでなく、同社自体やウーバーなどパートナーが運営するロボ・タクシーに応用することで、この新たな世界で利益の上がる地位を築くことも可能だ。

  しかし、友山氏はトヨタだけでなく、サプライヤーやディーラーの意識改革の必要性を強調。「本業を捨ててはいけないけれども、ただ漠然と本業を続けていくことはもう通用しないという危機感を共有するということが今でも大きなチャレンジ」とコメントした。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウイーク」誌に掲載)

原題:Toyota’s Vision of ‘Autonomous’ Cars Might Still Require Drivers(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE