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日本ワインを将来「屋台骨」に、ボルドー至上主義を超えて-メルシャン

  • ブドウ栽培面積を拡張しワイナリーも増設、海外は香港拠点に拡大へ
  • コストダウンや醸造知識の普及、マーケティングが日本ワインの課題

「日本ワイン」のブランド力向上が期待される中、キリンホールディングス傘下の国内ワインメーカー最大手メルシャンは、ブドウの栽培面積を増やしワイナリーを増設するなど同事業を拡大している。

  国産ブドウのみで造る日本ワインを、海外産原料を使用したワインと区別する国税庁の表示ルールが10月30日に適用され、欧米などの主要ワイン生産国では整備されている公的な表示が日本でも始まる。来年には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)発効で、関税と、醸造方法などに関する輸入規制が撤廃され日本ワインが輸出しやすくなる見込みだ。

 Inside the Chateau Mercian Katsunuma Winery

「シャトー・メルシャン勝沼ワイナリー」でチェックされるピノ・ノワール

Photographer: James Whitlow Delano/Bloomberg

  和食やフレンチを中心に素材を重視した料理が世界的潮流となりつつあるが、日本固有のブドウ品種「甲州」や「マスカット・ベーリーA」のほか、日本産の欧州系品種で造る日本ワインは優しい味わいが特徴で繊細な味付けと相性が良いとされる。

  メルシャンの代野照幸社長(58)は、「海外のコンペティションへの出品を通じて評価を高めるとともに、世界のグルメが集まる香港で草の根の販売活動に注力したい」と語る。同社の販売量のうち98%を日本ワイン以外の国内製造ワインと輸入ワインが占めるが、日本ワインは「どんどん伸びていく可能性がある」とし、2027年までの拡張計画達成後の目標として売上高に占める日本ワインの比率を現在の約2%から将来は5%に引き上げ、「ワイン事業の屋台骨」にしていきたいと考えている。

 Inside the Chateau Mercian Katsunuma Winery

ワイナリーが集まる山梨県勝沼町

Photographer: James Whitlow Delano/Bloomberg

  日本ワインが海外で高く評価される先駆けとなったのは、1989年の「信州桔梗ヶ原メルロー1985」のスロベニアでの国際ワインコンクール大金賞受賞だった。メルシャンは8日、このワインの原料となったフランス・ボルドー地方原産の赤ワイン品種メルローの栽培に成功した桔梗ヶ原(長野県塩尻市)でワイナリーをオープンした。

  現在、同県、山梨、福島、秋田の計4県の契約農家と自社管理畑を合わせたブドウ栽培面積は40ヘクタールで赤ワイン用8品種、白ワイン用4品種を栽培。温暖化を見据えスペイン原産の品種なども手掛ける。2027年には栽培面積を76ヘクタールとし、昨年3万9000ケース(1ケースは720ミリリットル12本)だった販売量を6万7000ケースにまで増やす計画だ。

 Inside the Chateau Mercian Katsunuma Winery

ワイン醸造に使われるオーク樽

Photographer: James Whitlow Delano/Bloomberg

  米国、シンガポールに加え、昨年6月には、本格的に香港向け輸出を開始。バンコクや上海などアジアの他都市への販路拡大も視野に入れる。輸出はインバウンドにも波及し、年間約12万人が訪れる勝沼ワイナリー(山梨県甲州市)では香港からの観光客の姿が目立ち、1人で計20万円相当を購入する人もいるという。来年秋には椀子ワイナリー(長野県上田市)がオープン予定で、同社の日本ワインのワイナリーは3カ所となる。

日本に合うブドウ

  国税庁の資料によれば、16年度に国内で製造されたワインの生産量のうち、国産ブドウのみを原料とする日本ワインの割合は約2割で、主に輸入原料を使ったそれ以外のワインが約8割を占めている。今回の新ルール適用で日本ワインが区別され、各産地で収穫されたブドウを85%以上使用し同地で醸造すれば産地名の表示が可能となる。

  メルシャンのチーフ・ワインメーカー、安蔵光弘氏(50)は「ワインにとって産地の情報は重要」と指摘。「日本のテロワール(生育環境)で栽培したブドウを日本人の感性で醸造することによって日本のワインになる。最も意識しているのは海外のコピーを造らないこと。われわれの前の世代はブルゴーニュやボルドー至上主義だったが、若い世代は肩の力が抜け、いろいろな品種を試して日本に合うブドウを見つけようとしている」と話す。

 Inside the Chateau Mercian Katsunuma Winery

安蔵光弘氏

Photographer: James Whitlow Delano/Bloomberg

  国税庁の資料によると、主に果実酒を製造する製造場数は、16年度末時点で10年前と比較して36%増えている。ワインを製造する231業者のうち生産規模300キロリットル未満の213業者は生産量のほとんどを日本ワインが占め、小規模ワイナリーの多くが日本ワインを製造していることが分かる。

  安蔵氏は日本ワイン全体の課題として、コストダウンと醸造知識の普及を挙げる。瓶詰め機械などの設備を複数のワイナリーで共用するなどしてコストを削減することでワイン価格を下げ、競争力を高めることができると考えている。また、醸造の知識がない状態でのワイン造りは日本ワイン全体のイメージの低下につながると指摘。日本ワインがカテゴリーとして成長するためには全体の品質向上に努めていかなければならないと語る。

 Inside the Chateau Mercian Katsunuma Winery

シャトー・メルシャン「藍茜」

Photographer: James Whitlow Delano/Bloomberg

  メルシャンのブランドコンサルタントで、日本在住でただ一人、ワイン業界最高峰のマスター・オブ・ワイン資格を持つ大橋健一氏(51)は「日本ワインの輸出比率は1%以下にとどまり、海外ではワインの有識者でも日本でワインを造っていることを知らない人もいる。ワインツーリズムなどを通してインバウンドの愛好家を取り込むと同時に、海外市場のターゲットを選別して売り込んでいく戦略的なマーケティングが必要だ」との見方を示した。

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