中国に残る10年前の負の遺産-巨額の景気対策に動けず

  • 債務総額は対GDP比260%余りと2008年当時から急増
  • 貿易摩擦による景気減速への対応、中国当局にとって難しい作業に

今から10年前、中国は巨額の景気刺激策を使って世界金融危機の自国への波及を阻止した。トランプ米政権から関税攻勢を受ける現在、同様の自己防衛策を講じるのはかなり難しくなっているように見える。

  理由は簡単だ。中国経済の腰折れを回避するには積極的な支出が必要だと習近平政権が結論付けても、同国が抱える巨額の債務が足かせになる。債務総額は対国内総生産(GDP)比260%余りと、2008年から大幅に膨らんでいる。10年前の景気対策による負の遺産だ。

  習政権はこの2年にわたり信用の伸びを抑える取り組みを進めてきた。貿易摩擦の激化に伴う景気減速への対応が政策当局にとって難しい作業になっている。JPモルガン・チェースの中国担当チーフエコノミスト、朱海斌氏(香港在勤)は「中国には『国内の経済活動が弱く、関税を巡る争いは激化しており、景気減速を防ぐためより積極的に対処すべきだ』と訴えるロビー圧力が非常に強い」と指摘。その一方で、「レバレッジ削減の取り組みをやめ、これまでとは逆の方向に動けば中国にとって政策上最大の誤りになる恐れがある」とも話す。

China’s Debt as a Share of GDP

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Data: Bloomberg Intelligence

  堅調な世界貿易の後押しを受け、2018年の中国経済は好スタートを切った。だが、与信抑制の取り組みによる予期せぬ大きな影響が表れ始めたところに、米国による中国製品500億ドル相当の追加関税発動や2000億ドル相当へのさらなる関税計画が重なり、中国株や人民元相場は大きく下げることになった。

  中国のGDP成長率は今年6.6%、来年は6.3%へと減速する見通しだ。ただ、この予想にはトランプ大統領が言及した中国からの全輸入品に対する制裁関税措置は織り込まれていない。雇用への影響も深刻なものとなりそうで、朱氏の試算によると、全てに25%の追加関税が課されたと想定した最悪シナリオでは中国は550万人分の仕事を失うことになる。

上海南部の洋山深水港

  本格的な景気刺激策には中国人民銀行(中央銀行)の基準金利引き下げや不動産価格抑制策の緩和、財政赤字の拡大などがあるが、モルガン・スタンレーの中国担当チーフエコノミスト、邢自強氏(香港在勤)はこうした規模の対策が講じられる可能性は現時点で高くないと語る。

  債務が高水準にあるほか、こうした措置を取れば不動産価格が跳ね上がり、個人消費を損ねる悪循環に中国経済を陥れることになり、危機の引き金を引く恐れがある。北京など大都市の住民は家賃の2桁の伸びに直面して既に消費を減らしている。

  トランプ政権は中国との新たな通商協議に向けた取り組みを再開しており、米中間の全面的な貿易戦争は最も可能性が高いシナリオとしてアナリストらは想定していない。ブルームバーグのエコノミスト調査によれば、米国が既に賦課した追加関税と今後の関税計画による影響で中国の来年のGDP成長率は約0.3ポイント押し下げられる恐れがある。

  中国政府は今年の成長率目標を6.5%前後に設定。来年の目標は6-6.5%のレンジに引き下げられるとJPモルガンの朱エコノミストは見込んでいる。政府はいかなる代償を払っても成長率を最大化しようとはせず、成熟化とともに成長が鈍る中国経済を適切な軌道に導くとしており、こうした方針と整合的だ。

  現時点では、中国が10年以内に高所得国(世界銀行の定義では1人当たり国民総所得が約1万2000ドルを上回る国)の仲間入りをし、それから長い時間を置かずに米国の経済規模に肩を並べる方向にあることに変わりはない。トランプ政権の貿易戦争による圧力を受けて、こうした目標に不透明感が出てこない限り、中国指導部は静観することを望んでいる。

Credit Supplied to China’s Economy

Year-over-year change

Data: People’s Bank of China

*Through July 31

原題:China’s Choices Narrowed by Debt as Trump Threatens Economy(抜粋)

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