トヨタ:吉利にHVユニット販売検討、中国と関係深化-関係者

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  • 吉利以外の複数メーカーからも引き合い、燃費規制で需要高まる
  • 合弁以外への提供は新しい方向性、HV仲間作りか-アナリスト

トヨタ自動車が中国の吉利汽車に対し、ハイブリッド車(HV)の基幹ユニットを販売する方向で検討していることがわかった。現地では燃費規制の達成に頭を悩ませる自動車メーカーが多く、中国事業強化を目指すトヨタは得意のHV技術での貢献を通じて販売拡大を図る。

トヨタの主力HV「プリウス」。中国での販売は苦戦している。

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  複数の事情に詳しい関係者が匿名を条件に明らかにしたところによると、トヨタは吉利に対してHVシステムのユニット販売や技術サポートなどを行う方向で検討している。

  トヨタと吉利は電動化技術の提供などをめぐって協議していた。2人の関係者によると、現地メーカーは燃費規制を懸念しており、そのためにトヨタのHV技術が求められているという。トヨタ幹部は吉利以外にもHV技術を持たない複数の現地メーカーから要請がきており、年内には現地での事業拡大についての計画の詳細を明らかにする予定だと話した。

  日本や米国、東南アジアなどで高いシェアを持ち、独フォルクスワーゲン(VW)などと並んで年間のグループ世界販売台数が1000万台を超えるトヨタも中国市場では苦戦。日本政府による尖閣諸島(中国名・魚釣島)の国有化に端を発した2012年の反日デモでは抗議する群衆によってトヨタのディーラーが放火、破壊された。その後、状況は正常化したもののトヨタの昨年の中国販売台数は129万台とVWや米ゼネラル・モーターズだけでなくホンダや日産自動車にも後れを取っていた。

  中国政府は走行中に環境負荷の高い物質を排出しない電気自動車(EV)に加えてプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を「新エネルギー車(NEV)」と指定し、免税措置や一定規模の販売をメーカーに求めるなどの措置で普及を支援してきたが、HVはその対象から外され、人気車種の「プリウス」も販売が低迷するなどトヨタの強みが生かせなかった。しかし、中国政府や自動車業界関係者の間ではここにきて企業平均燃費(CAFE)規制をクリアするにはHVが必要、との認識が高まっているという。

  HVはEVと違ってゼロエミッションではないものの充電の必要がなく、価格も低いなどのメリットがある。

2012年9月、北京の日本大使館前での抗議行動で中国国旗を掲げる人たち

Photographer: Nelson Ching/Bloomberg

  関係者によると、今年5月に中国の李克強首相が同社の北海道の拠点を視察して以来、中国の地方政府の幹部らが愛知県豊田市のトヨタ本社を頻繁に訪れているという。李首相の訪問と前後してトヨタは中国で積極姿勢に転じ、30年ごろまでに現地での生産を年間350万台規模まで増やすことも視野に現地の事業を強化する方針を進めていた。

  トヨタは13日、ダイハツ工業や日野自動車を含めた今年のグループ世界生産台数計画を1059万4000台に引き上げることを明らかにした。昨年12月に公表した従来計画から約20万台増えることになる。中国での販売拡大と小型SUV「C-HR」の好調などが理由としている。

  トヨタ広報担当の喜多亜貴子氏は電話取材で、トヨタと吉利が電動車に関して協議しているとしたうえで、環境技術などに関して「トヨタは従来からオープンポリシーで取り組んでおり、電動化技術に対しても同様」と説明した。一方で、決まったものはなくコメントできないと話した。

  中国でのHVに関しては、トヨタなどが出資する車載用電池製造子会社のプライムアースEVエナジー(PEVE)も江蘇省の工場に2棟目の建屋を建設してHV用ニッケル水素電池の年間生産能力(電池が搭載される車の台数ベース)を現状の10万台に11万台上乗せし、計21万台とする方針だ。1人の関係者は、さらにこの生産能力を2倍以上の48万台に引き上げる計画を検討中だとも話した。

  PEVEの鈴木茂樹社長は8月のインタビューで、中国で「HVが受け入れられ始めている」とし、さらなる能力増強についても、足元の好調が続くならば「その覚悟というか、構えはしておかないといけないと思っている」と話していた。

  SBI証券の遠藤功治アナリストは電話取材で、現地の合弁会社ではなくこれまで関係がなかった吉利へのHV技術供与は「新しい方向性」と指摘。トヨタは国内でスバルやスズキなどと行ってきたHVの仲間づくりを中国でも進めるのではないかと述べた。HVをつくるメーカーが多くなれば「コストは下がるし、ロイヤルティー収入も入る」と話した。吉利は中国から車を輸出しようとしており、「米国や欧州など中国以外で売っていくならHV技術は重要」と考えたのではないかとの見方を示した。

  トヨタの13日の株価は一時2.2%高の6805円まで上昇し、6783円で取引を終えた。吉利の株価が香港市場で一時8.5%高と2月26日以来の日中上昇率となったほか、トヨタによるHV技術の供与で恩恵を受けるとの思惑から、華晨中国汽車や広州汽車集団、長城汽車など中国自動車大手の株価が軒並み大幅上昇した。

(トヨタの世界生産計画引き上げの情報を追加し、株価を更新します.)
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