コンテンツにスキップする

ロナウドを口説き扉開く、「確率1%に賭けた」シックスパッド

更新日時
  • ブランド戦略で他社より高い価格設定、学術的裏付けも
  • メルカリに次ぐ今年の大型上場、松下社長保有株は時価1860億円

熱意が通じてサッカー界のスーパースター、クリスティアーノ・ロナウドと出会えたことが会社急成長への扉を開いたー。EMS(筋電気刺激)機器「シックスパッド」のヒットもあり、7月東証マザーズに上場したMTG。松下剛社長(48)は「ビジネスライクな関係だけなら商品は生まれていなかった」という。

  「マッチョになりたい、くびれが欲しい」というニーズをつかみ、腹筋のシックスパックを連想させる形状のシックスパッドは販売100万台を突破。1996年創業の新興企業を上場企業にまで押し上げる原動力の一つになった。野村証券の繁村京一郎アナリストは、ヒットの秘密の一つに「ロナウド選手による商品開発への参画と販促への影響力」を挙げる。

MTG founder Tsuyoshi Matsushita Got Ronaldo and Madonna To Represent His Brands

松下剛社長

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  ロナウド起用のきっかけは、同選手の肉体美に魅せられ商品をデザインしたことだ。その第一号として美容ローラーを試作し、広告代理店に本人への接触を依頼したものの、無理だと一蹴された。仕方なく「ロナウド知ってる?ツテはない?」と自力で接触を試み、「人との出会いで一人一人近づき奇跡が起こった」。ようやく本人に行き着き、商品を気に入ってもらえたという。

  後日、美容ローラー宣伝のため来日したロナウドを自宅に招待した縁から、スペインの邸宅を訪ねることになり、そこで新たにシックスパッドのアイデアを披露。「意気投合しチャンスをもらえた」といい、ロナウド自身が商品開発に参画することになった。「彼はお金が通用しない相手。お金だけならもっと大手の企業がある」と松下氏は言う。

Christiano Ronaldo Promotes MTG

クリスティアーノ・ロナウド選手と松下社長

Photographer: Jun Sato/WireImage

  2015年7月に発売したシックスパッドは美容ローラーの「リファ」に次ぐブランドに成長。社全体の売上高はシックスパッド販売開始当時(15年9月期)の208億円から、直近の17年9月期には434億円に倍増した。7月にはマザーズ上場を果たし、メルカリに次ぐ今年2位の大型案件となった。松下氏の実質的な株式保有比率は約72%あり、上場により時価1860億円相当の資産を手にしたことになる。

ブランドカンパニー

  シックスパッドは主力商品が2万5000円程度と他社製品よりも高い価格設定が特徴的だ。競合商品が多い業界で同社が先行しているのは、「しっかりとブランドを作っているため」と、エース経済研究所の池野智彦シニアアナリストは分析する。有名人を使いインパクトのある販促活動をし、「成果が期待できる付加価値のある商品を安売りせず、それなりの値段で売っていく価格戦略」とみる。

  MTGは自称「ブランド開発カンパニー」。シックスパッドはロナウドの起用だけではなく、京都大学の森谷敏夫名誉教授が唱えた効率的に筋肉を鍛えられる周波数も採用、学術的な裏付けにこだわった。グローバルで1300件超の知的財産の権利化を実現し、模倣商品対策も強化している。

  市場調査の富士経済によるとEMS機器の市場規模はMTGが参入するまで年90億円前後だったが、参入した15年は124億円に増加、18年には倍増近い231億円を見込む。インバウンド需要も期待でき、個人消費の低迷とは関係なく、健康機器への需要は底堅い。

2015年のSIXPAD参入で100億円越え

身体用EMS市場規模

(折れ線は販売台数:万台)

出典:富士経済

幼少期

  松下氏が起業を目指したきっかけは、小学5年生で自身が養子だと知ったこと。養家は決して豊かではなく、大事に育ててくれた恩返しとして「経営者になって松下家を自分が豊かにする」と決意した。小学生時代に新聞配達で貯めた資金を投じ当時珍しかったパンダウサギを飼育・販売。希少価値でつがい6000円で売れたのに、販売が進むと需給のアンバランスから「値崩れ」が発生した。「当時は必死だったが、あの時の経験が今思うと良いトレーニングになっていた」と振り返る。

  幼なじみで現在はMTGの工場長を務める清川卓也氏は、松下氏が幼いころから人と違ったのは「とにかく本気だったこと」と証言。「こんな商売をやりたい。この商売だと月にこれだけ売り上げる」などと具体的なシミュレーションまでしており、「一緒に夢を応援したいと思うようになった」という。

「マッチョになりたい、くびれが欲しい」という健康ニーズをつかみ、シックスパッドは販売100万台を突破。1%の確率に賭けた、美容・健康機器のMTGについて森来実記者(@rumireports)がレポート。

(Source: Bloomberg)

  ロナウドなど国際的な有名人を生かし、国内市場にとどまらず「1つ1つのブランドをグローバルに仕上げていく」という。EMS技術を使い国内で始めたジムをグローバルで5000店の展開を目指す。ものづくりから新規領域への展開も検討中だ。17年に決済機能付き指輪製造の英社を買収。「指輪を作るハードだけの会社か。クレジット機能も含めてやるのか、あらゆる選択肢を検討している」と述べた。

  ロナウドや、化粧品を共同開発したマドンナなど有名人の起用が当たったMTG。松下氏は成功の秘訣をこう言う。「そもそも無理だと思ってアプローチする人も少ないと思うが、われわれは1パーセントの確率に賭けた」。

(第10段落に工場長のコメントを追加しました.)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE