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アベノミクスで財政悪化に歯止め、それでも努力足りないと債券市場

  • 安倍政権下で新規国債や機関投資家向けの発行額はほぼ一貫して減少
  • 数字上改善しているのは事実、歳出削減努力は不十分-メリル日本証
安倍首相

安倍首相

Photographer: Akio Kon/Bloomberg
安倍首相
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

20日の自民党総裁選で勝利すれば最長3年間の続投が可能となる安倍晋三首相。6年近くに及ぶ政権下での大胆な金融緩和などのアベノミクス効果から景気は回復し、税収増加や新規国債発行の減少で財政状況の悪化には歯止めがかかった。それでも債券市場関係者は財政再建への努力が足りないとみている。

  2012年12月の第2次安倍内閣発足前に編成された12年度当初予算で44.2兆円だった新規財源債は、18年度には33.7兆円に減少。満期償還分の借り換えを含めた機関投資家向けの発行額も149.7兆円から134.2兆円に減った。国・地方の長期債務残高は今年度末に1108兆円と過去最高を更新する見通しだが、対国内総生産(GDP)比率は前年度末の198%から196%へ低下して頭打ちとなる。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、財政状況が「今のところ数字上、改善しているのは事実だ。低金利はもともとだが、税収増が効いている」とする一方、「歳出削減の努力は不十分で、これからの課題だ」と指摘。このままでは米景気の長期拡大が転換点を迎えて円高になると日本経済にも影響が及び、税収が減って再び財政が悪化する恐れがあるとみている。

◎国の一般会計での税収と新規国債発行額の実績(単位:兆円)

     年度     税収   発行額
201243.947.5
201347.040.9
201454.038.5
201556.334.9
201655.538.0
201758.835.6
201859.133.7

(注)2018年度は当初予算、17年度の新規国債発行額は補正後

  国の税収は12年度実績の43.9兆円から今年度当初予算では59.1兆円まで増加。第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミストは、今年度税収は見込みを上回り、過去最高である1990年度の60.1兆円程度に達しても違和感がない状況と説明する。一方、新発10年物国債利回りは金融緩和効果で政権発足前の0.6%程度から0.1%前後まで低下し、国債の借り換えや増発のコスト抑制につながっている。

安倍政権下の長期金利とCDSの推移

  経済・財政状況の改善で、日本国債の評価も上向いている。米S&Pグローバル・レーティングが4月に格付け「A+」の見通しを「ポジティブ」に引き上げたのに続き、国内最大手の格付投資情報センター(R&I)は先月、「AA+」の方向性を「安定的」に戻した。日本国債は債務不履行リスクの保証料率(CDSスプレッド)も政権発足時から大きく低下し、信用力が回復している。

  ただ、安倍政権は景気対策を最優先し、歳出圧縮や消費増税などの財政改革は先送りしてきた。14年4月に予定通り消費税率を8%に引き上げたが、10%への再増税は二度延期。今年6月には、国・地方の基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標の達成を25年度へ5年先延ばしした。来年10月の消費増税に合わせて景気対策を行う方針も示したことで、来年度予算での6年ぶりの国債増発観測も出ている。

  SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは「本当は景気の拡張時に歳出を減らして財政収支を改善しておかないといけない。しかも日本は少子高齢化が進むので、財政健全化はますます難しくなっていく」と指摘。歳出を減らせないなら、消費増税で社会保障関連費の財源を確保すべきだと言う。

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