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トランプ大統領は自分に倍賭け、ひたすら猛進へ-ミクルスウェイト

外の世界から見たドナルド・トランプ氏は、多少なりとも追い詰められている。

  検察当局の捜査網は絞られ、長年仕えてきた弁護士のマイケル・コーエン被告は寝返った。中間選挙では民主党が下院の過半数を取り戻す勢いと目され、そうなれば大統領弾劾への動きに弾みがつく。ホワイトハウスからの要人流出には歯止めがかからず、先日は法務顧問の退任が決まった。立法アジェンダは行き詰まり、一段と強国化する中国をはじめ各国との貿易戦争がどうなるのか、企業は戦々恐々としている。

  大統領が後ずさりするのは時間の問題だ。これとは正反対の景色が、大統領執務室の机の向こう側に座った当人には見えている。

U.S. President Donald Trump Interview

大統領執務室でインタビューに応じるトランプ大統領(8月30日)

撮影: Al Drago/Bloomberg

  大統領は自分自身に最上級のAプラス評価を与えている。経済は活況を続けている。モラー特別検察官による捜査は「違法」であり、「素晴らしい働きぶりの人を弾劾する」のは不可能だと大統領は8月30日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで語った。支持者集会で自分に向けられる「愛のレベル」は「見ていて美しい」ほどだという。

  マクガーン法律顧問の後任探しも問題ではなく、「確実に言えるのは、誰もがこの仕事に就きたがっていることだ。みんながほしがるポストだ」とトランプ氏は述べた。

変化を認識せず

  トランプ氏の目には、状況は悪化していない。例えば貿易。トランプ氏によればメキシコはすでに折れ、次はカナダだ。中国は叩かれて、また叩かれて結局降伏するはずだ。米国の方が強いからだ。そして「欧州連合(EU)は中国と同じくらい悪い、ただ小さいだけだ」。欧州は次の標的だ。EUの自動車関税撤廃案は「十分なものではない」という。

  ついでに世界貿易機関(WTO)に不満を伝えることも忘れない。「正しく振る舞わなければ」米国は脱退も辞さない。

  世界各地でひんしゅくを買っている外交についても、トランプ氏はまったく萎縮していない。北朝鮮との交渉については、「私は世界の誰よりも忍耐力がある」と自認する。

相次ぐ失望

  ドイツのメルケル首相やトルコのエルドアン大統領と、トランプ氏を失望させた人は少なくない。セッションズ司法長官は当面現職にとどめるつもりだが、ロシア疑惑では誰よりも追及されるべき民主党をなぜ追い詰めないのか、トランプ氏は憤りを感じている。

  トランプ大統領は自分への評価が気になって仕方がない。自分が支持した候補者のほとんどが今年の共和党予備選で勝利したのは、まったくの想定内だという。

  トランプ氏によれば、ヘルシンキで開かれたロシアのプーチン大統領との首脳会談は、大成功だった。なぜなら大成功だと知っているからだ。そうではない解釈はすべてフェイクニュースだ。

  トランプ氏を批判する人たちは、これこそ同氏が現実から目を背けるナルシストの証拠であり、遅かれ早かれ報いを受ける兆候と受け止めるかもしれない。確かにトランプ氏の転落を待ち構えるわなは無数にある。しかしその日が来るのはずっと先であり、反トランプ陣営が期待するよりずっと先となる理由は2つある。

現実にある功績

  トランプ氏の自画自賛はさておき、現実にある功績は批判したくても認めざるを得ない。経済は実際に過去最長の好調に近く、それはウォール街も同じだ。北朝鮮はもはや、米国にミサイルを撃ち込むと脅さなくなった。欧州も防衛支出を拡大する。中国の市場開放を心待ちにする企業は多い。

  数々の不祥事と法的問題にもかかわらず、共和党内でのトランプ氏の支持率は確かに高い。

  もう一つの問題は、トランプ氏の目に映る世界がいかさまであろうがなかろうが、トランプ氏はみじんの疑いも持たず、これまでの行動を重ねていくことだ。中国には今週、2000億ドル(約22兆2000億円)相当の産品に関税が発動される。欧州には別の処方箋が近く突きつけられるだろう。その結果がどうであれ、困難を乗り切るにはアクセルをもっと踏み込んで走り抜けるしかないと信じているのが、今の米国大統領だ。批判しようとしても、ターゲットは常に動いている。

  英国の街頭に抗議の暴徒が溢れた1980年、当時のマーガレット・サッチャー首相は政策転換を求める著名エコノミストや閣内からの圧力を受けながら、「メディアが喜ぶUターンという言葉を息を潜めて待っている人々に、一つだけ言っておきます。Uターンはあなた方がすればいい。私はしません」と宣言した。

  サッチャー氏が存命だったら、貿易戦争からストーミー・ダニエルズ氏絡みのスキャンダルに至るまで、トランプ大統領の行動には目をふさぎたくなるだろう。しかしそこにあるセンチメントは同じだ。トランプ大統領はUターンしない。

原題:Trump Doubles Down on Donald Trump: John Micklethwait(抜粋)

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