Photographer: Xinhua Xinhua / eyevine/Redux/eyevine

米国とは異なる「超大国」中国、次の覇権を握れるのか

  • 初の海外軍事基地をジブチに、「孔子学院」でソフトパワー強化
  • 非常に自己本位的な大国-ジョージ・ワシントン大シャンボー教授
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中国は今、長い歴史の中で初めて真にグローバルなビジョンを持つ指導者に率いられている。必然的にこれまで唯一の超大国とされていた米国と比較される。

中国が南極大陸に設けた「長城基地」(2017年1月)

撮影:Rong Qihan / Xinhua / eyevine via Redux

  だが習近平総書記の共産党指導部は次の覇権国として見なされることには躊躇(ちゅうちょ)しており、覇権国が担うコストを引き受けることには慎重だ。「超大国」という言葉をあえて避け、米国のようなやり方で超大国として振る舞うことはイデオロギー的に受け入れられないとしている。

  中国人民大学重陽金融研究院の王文執行院長は習総書記が13年に国家主席に就任した後に頭角を現し始めた党幹部だ。中国の将来に対する自信はあふれるばかりだが、南極観測に参加し、数百人の学術関係者から成る米国の南極観測チームを目の当たりにした時にはその規模に圧倒された。そして中国は追い付く必要があるとの結論に至った。王氏に大国としての中国はどのようなものになるのかと尋ねると、「米国のようなものではないこと」は確かだと言う。  

  米国が超大国への道を歩み始めた時もまた、それまで列強が行ってきた帝国・植民地主義を繰り返さないとの決意があった。その米国は今、11の空母打撃群と世界中に展開する軍事基地を通じ自国の権益を守っている。 

北京で使われている顔認識ソフトを使ったモニターに映る人々

撮影:Gilles Sabrie / New York Times via Redux

  中国も似たような道を行こうとしているのかもしれない。中国人民解放軍は昨年、アフリカのジブチに初の海外基地を置いた。外交予算も大きく増加。米国に代わる世界のテクノロジー大国となることを目指す「中国製造2025」や人工知能(AI)の世界を30年までに牛耳ろうとする計画もある。
 

Baby Bust

China's population is projected to start declining as soon as 2023, in millions

Source: United Nations World Population Prospects 2017

  ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、中国の国防支出は昨年時点で2280億ドル(約25兆5000億円)と、1990年の210億ドルから急増している。権威主義的な政治体制と国主導の市場経済に基づく中国の発展モデルはすでに、米国そして国際通貨基金(IMF)のような第2次世界大戦後に設立された国際機関によって長く推進されてきたよりリベラルな理想に反発するカンボジアなどの一部の国を引き付けている。豊富な資金力もまた北京に目を向けさせる要因だ。 

中国の南極観測隊(2014年)

撮影:Xinhua / eyevine via Redux

  中国政府は国内において言論の自由などの取り締まりを強化しているが、そのことが習政権が自信にあふれ、体制の基盤が盤石であることを示唆しているわけではない。米中間の貿易戦争を受け株価は大きく下落し、習氏が米国とあからさまに対峙(たいじ)し過ぎたのではないかとの議論が本土内でも見受けられる。

  中国では人口高齢化がすでに始まっているが、平均的な国民はまだ平均的なメキシコ人よりも貧しい。共産党が自らの正統性を誇示するため進めてきた投資主導の成長に何十年も融資をしてきた国内大手銀行の健全性に疑問を抱く投資家もいる。

  オーストラリア国防省で情報収集を担当していたポール・ディブ氏は、中国政府は国防よりむしろ内政に資金を投じると指摘。「銃か老人介護かのどちらかを選択しなければならないだろう」と語る。

中国が設けた5カ所目の観測基地(2018年1月)

撮影:Bai Guolong / Xinhua / eyevine via Redux

  ベテランの中国専門家の1人である米ジョージ・ワシントン大学のデービッド・シャンボー教授によれば、超大国にとって必要なのは軍事力のみならず、テクノロジーと強い経済力、そして影響力を維持するためのソフトパワーで、「中国はそれを理解している」。中国が世界中に展開する中国語と中国の文化を教える「孔子学院」は500を超えた。

ナイロビでの鉄道建設(2018年6月)

撮影:千葉康義/ AFP via Getty Images

  だが同教授は中国に真の同盟国はほとんどなく、依然としてせいぜい部分的な超大国にとどまっているとも指摘する。南シナ海に軍事拠点を築く動きに加え、現代版シルクロードとされる広域経済圏構想「一帯一路」を通じた多額の海外向けインフラ融資が小国を従わせるための債務のわなでなはいかとの懸念が、こうししたソフトパワー強化の取り組みを損ねている。中国の文化は豊かで深みがあるものの、ハリウッドを擁し個人の自由を理想に掲げる米国の影響力には遠く及ばない。

ジブチの中国人民解放軍(2017年8月)

撮影:AFP via Getty Images

  シャンボー教授は「中国軍はまだ地域的」で外交力も同様だと分析。大きな国際合意の主導権を握ったことはなく、「非常に自己本位的な大国」で、「世界的秩序を形成することに関心はない」と論じる。

China's Rise

China overtakes the U.S. economy, in USD adjusted for purchasing parity

Source: IMF

  北京で全球化智庫(センター・フォー・チャイナ・アンド・グローバリゼーション)を設立した王輝燿理事長は異なる見方だ。中国は米国が築き上げた世界秩序から恩恵を受けており、それを壊すことは望んでいないと説明。アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの新たな国際的な枠組みを加える「グローバリゼーション2.0」を実現させたいのだという。中国の規模を「人々は恐れている」が、中国はより包括的なグローバル化を望んでいると解説する。

Spending Power

China's spending power in nominal USD has been volatile, percentage change

Source: IMF/Bloomberg

  南極観測に加わった王氏の見立ては「中国は欧米の社会科学で説明できない非常に興味深い段階に入っている」というものだ。「もし欧米のセオリーを用いるなら、中国の外交政策は理解できないだろう」と語る。

  王氏は今年夏にまとめた報告書で、領有権の主張を凍結した1959年の南極条約にもかかわらず、南極の地下深く眠る膨大な資源を巡り「猛烈」な地政学的な争いが繰り広げられていると分析。主張を強めなければ、中国は敗れてしまうとの恐れを隠さない。「中国は深海や極地、宇宙、インターネットといった新たな分野のルール作りにより積極的に参加する必要があると習国家主席は繰り返し強調している」と記した。

習近平総書記(2017年10月の共産党大会)

撮影:Qilai Shen / Bloomberg

原題:What Does a Chinese Superpower Look Like? Nothing Like the U.S.(抜粋)

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