海上橋と高速鉄道で一体化、政治的分裂が露呈も-中国ベイエリア

  • 中国国家主席のメガロポリス構想、シリコンバレーと競う
  • 「高度の自治」約束された香港の民主化、脅かされる懸念

香港とマカオ、そして中国広東省の珠海を結ぶ全長55キロメートルの海上橋が完成した。かつての英国とポルトガルの植民地と本土がつながる。だが、より難しいのは政治的分裂の克服だということが証明されるかもしれない。

  1日当たり約2万9000台の乗用車やトラックが行き来することになる「港珠澳大橋」では、年内に見込まれる開通式に向け準備が進む。

  この橋の建設は中国の習近平国家主席が描く壮大なプランの一環だ。中国本土の広東省と香港、マカオという「ベイエリア」から成るいわゆる「粤港澳大湾区」を米カリフォルニア州のシリコンバーに匹敵するハイテクメガロポリスとする構想で、HSBCホールディングスによれば、人口6700万人の粤港澳大湾区は経済規模が1兆ドル(約111兆円)に達し、輸出は日本を抜き世界4位になる可能性がある。

港珠澳大橋

写真家:Justin Chin / Bloomberg

  習主席のベイエリア構想は中国の工業力と香港の資本市場、マカオのカジノ産業の結び付きを強める一方で、中国政府の影響力増大に伴う緊張を高めるリスクがある。特に香港は英国からの返還前に中国が約束した「高度な自治」を維持しながら、中国台頭の恩恵にあずかることができるかという難問に直面している。

Bridging China's Greater Bay Area Cities

Sources: Statistics Bureau of Guangdong Province, Census and Statistics Department Hong Kong, Macau Statistics and Census Bureau

  スタートアップ企業を支援する政府系の組織、香港科技園(HKSTP)のアルバート・ウォン最高経営責任者(CEO)は「香港に必要なのは多様化だ。サンフランシスコにもなれるし、ベイエリアのシリコンバレーにもなれる。この船に乗り遅れることはできない」と話す。
  

広深港高速鉄道

写真家:Billy HC Kwok / Bloomberg

広深港高速鉄道の「西九龍駅」

写真家:アンソニー・クワン/ブルームバーグ

  だが香港大学の盧兆興教授(政治学)の「政治的支配のために経済政策を活用するというのは古くからある共産党の戦術だ」と指摘する。習氏が共産党総書記に2012年に就任して以降、こうした懸念は強まるばかりだ。香港では14年に民主化を求める大規模なデモ活動が展開されたが、その後、香港政府は民主化で譲歩することを拒否し、香港独立を支持する政党の活動禁止に動いている。

  インターネット界の巨人テンセント・テクノロジーズ(騰訊)やスマートフォンメーカーの華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が本拠を構えるのは香港に隣接する広東省深圳だ。

  9月には香港と中国本土を結ぶ「広深港高速鉄道」が開業する。深圳経由で香港と広東省の省都、広州がつながるが、香港ではビクトリア湾を臨む新たな鉄道ターミナルで出入境・税関検査が行われことになり、本土の法執行職員が香港で職務活動をすることを禁じた措置に抵触するとして住民の反発が広がった。

深圳開発に向けた会議での鄧小平氏ら中国指導者を描いた肖像画を鑑賞する観光客

写真家:Imaginechina

  深圳や中国金融の中心地、上海の急成長で、世界最大の人口を抱える中国の玄関口として、香港がこれまで担ってきた役割も圧力にさらされている。香港経済の規模は今、中国国内総生産(GDP)の3%未満の水準にすぎない。中国に返還された1997年は18%相当だった。香港の貨物港としての地位も世界6位に低下し、上海や深圳に後れを取る。

香港側から深圳の中心部を臨む

写真家:Justin Chin / Bloomberg

  マカオもまた同様の圧力を感じている。本土からの裕福な観光客がカジノに殺到するが、マネーロンダリング(資金洗浄)と資本逃避を規制しようする中国政府の存在感も大きくなっている。香港などからの人材の活用を図りたい中国国務院は香港とマカオ、それに台湾の住民に対し新しい居住証を発行し、本土での公共・社会サービスを受けやすくすると発表している。

原題:China’s Silicon Valley Threatens to Swallow Up Hong Kong(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE