FRB議長「パウエル・ドクトリン」打ち出す、実際の経済動向重視

  • 理論的な経済モデルの推計、よくても「ぼんやり」とした航行指針
  • 完全雇用の古い推計に固執なら160万人の雇用が犠牲-パウエル氏

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は金融政策を巡り、理論的な経済モデルが指し示す内容と同じ程度に、実際の経済動向も踏まえてその策定に当たるべきだとした「ドクトリン(原則)」を打ち出した。米金融当局は10年近くに及ぶ景気拡大をさらに息の長いものにしようとしている。

  就任後初めてカンザスシティー連銀主催のシンポジウムで講演したパウエル議長は、漸進的な手法を擁護するとともに、市場に広がる9月利上げの見通しを一段と強固なものとした。さらに、経済学博士号を持つFRBスタッフがカバーしているような経済動向の推計については、よくても「ぼんやりとした」航行指針だと強調した。

パウエルFRB議長(24日、ジャクソンホール)

フォトグラファー:David Paul Morris / Bloomberg

  従って、こうした推計は実際の経済データをじっくりと観察して検証しなければならない場合が多い。こうした手法は、しばしば不確実性の下で政策運営に当たる当局者が経済モデルに従って引き締めを急ぐのではなく、手探りしながら進まなければならないということを意味する。また、政策金利が一段と引き上げられ景気抑制的になるとともに景気拡大局面が終盤に入るにつれて、金融当局の仕事はさらに複雑になるのは必至だ。

  バークレイズの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・ゲーペン氏(ニューヨーク在勤)は「講演内容から伝わってくるのは『パウエル・ドクトリン』の確認だ。世の中がどう動くかの枠組みやそれについての推計はあるが、不正確さが伴う。パウエル氏はやや率直に語って不確実性を認め、それを踏まえて政策を策定していく意向だ」との見方を示した。

  24日に講演したパウエル議長は、経済モデルでアスタリスク(星印)で示されることが多い指標について、「シフトする星印」という表現で幾度か言及した。こうした推計値が変化するものであることを認識し、不動の指標であるとは見なさないことが米連邦公開市場委員会(FOMC)の仕事だと論じた。

  パウエル氏は聴衆である各国・地域の中央銀行当局者やエコノミストに対し、完全雇用についての以前の推計値に米金融当局が固執すれば、160万人相当の雇用が犠牲となりかねないと、あらためて注意を喚起した。

  元FRBスタッフエコノミストで、現在はUBSセキュリティーズのエグゼクティブディレクター、ロバート・マーティン氏は「これはパウエル氏が記者会見で発しているのと同じメッセージだ。政策策定の中心を経済の現状に据えるという趣旨だ」と述べた。

パウエルFRB議長は、米景気拡大の勢いは力強いとの見方を表明

出所:ブルームバーグ)

原題:Powell Doctrine Emerges as Fed Chairman Debuts at Jackson Hole(抜粋)

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