パウエルFRB議長の講演、20年前に酷似の課題がテーマに

  • 1998年のストック氏の論文、不確実性の中で積極的な政策を提唱
  • FRBのエコノミストも同じトピックで23日に論文公表

20年前に時を戻してみると、米経済は現在と大いに似た様相だった。

  1998年5月の失業率は4.3%でコアインフレ率は2.2%。エコノミストはそれほど低い失業率がインフレ高進につながっていない理由を理解しようと懸命に取り組んでいた。職場でのパソコン(PC)やインターネットの普及に伴う90年代の生産性向上の奇跡は、エコノミストのリサーチテーマとして当時、大流行した。翌月の98年6月、日本銀行は金融政策への影響を見極めるための会議を開いた。

  そこで提出された論文の1つが、同分野に使われる定量的手法の形成に寄与した有力エコノミスト、ジェームズ・ストック氏が執筆したもので、表題は「変わりゆく経済における金融政策」だった。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が今月24日にワイオミング州ジャクソンホールで行う講演の演題と同じだ。

  7月の失業率は3.9%で、コアインフレ率が2.4%という状況に照らせば、20年前にストック氏がたどり着いた反直感的結論が、依然として今日的な意味を帯びていると米金融当局者は受け止めるかもしれない。ストック氏の結論は、経済が根本的に変化しているかどうか中央銀行当局者として確信が持てないなら、積極的姿勢を取る方が良い結果をもたらすという内容だった。

  今年のジャクソンホール会合でのテーマは、1998年の会議と不気味なほど似ている。主催するカンザスシティー連銀によると、20年後の今年の会合でもテクノロジーやグローバル化の結果として「生産性や経済成長、インフレの変化に寄与したダイナミクス」について討議される。経済活動の構造的変化をめぐる議論は、米当局が向こう数年にどこまで利上げするかという投資家にとって今年最大の問題に影響を与える。

  米金融当局は2015年12月に利上げを開始し、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を現在1.75ー2%としている。6月公表の連邦公開市場委員会(FOMC)予測では、来年末までに3-3.25%に、20年末までに3.25ー3.5%に引き上げる見通し。

  これは来年のある時点で、経済成長を加速も抑制もしない中立金利と当局が推計する水準を政策金利が上回ることを意味する。大半の当局者は現在、その水準を2.5-3%と考えている。そうした金利政策が理にかなうのは、当局のモデルで失業率が自然失業率を下回る水準にあるからだ。6月時点で当局は同水準を4.5%と想定した。ただ、当局にとって問題なのは、失業率が約20年ぶりの低水準にあるにもかかわらず、インフレ率にあまり加速の兆しが見えないことだ。

  最もよくある説明の一つは、当局者が見積もる自然失業率が高過ぎるというもので、シカゴ連銀のエバンス総裁は8月9日、推計の誤差範囲は「上下2ポイント」と述べた。言い換えれば、失業率が最低2.5%まで低下しても物価に上昇圧力をかけない可能性があるということで、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁ら一部当局者はそう論じている。

  パウエル議長の講演予定に先立ち、FRBの上級エコノミストらがストック氏と同じテーマで論文を公表。自然失業率の推定値を巡る不確実性があったとしても、インフレが顕在化するまで静観するだけよりもその推定値に基づいて金利を設定すべきだと指摘した。この論法は、政策金利が中立水準に来年達した後も利上げを継続する姿勢を当局者予測が示唆している理由になる。パウエル議長がこれに同意するかどうかは、24日の講演で手掛かりが示される可能性がある。

原題:Powell’s Speech Title Mirrors 1998 Paper Reflecting Same Debate(抜粋)


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