日銀の政策修正はステルステーパリングに向いている-翁元金融研所長

  • 本音と建前のかい離拡大、信認低下につながるリスク高まっている
  • いずれ景気回復局面終わる、日銀の時間稼ぎは「かなり絶望的」
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

元日本銀行金融研究所長の翁邦雄法政大学大学院客員教授は、日銀が先月末に行った決定について、「方向としてはステルステーパリング(隠れた緩和の縮小)に向いている」との見方を示した。正常化に向かいたい本音と、物価2%目標達成に向けた姿勢を維持せざるを得ない建前とのかい離が大きくなっており、信認の低下につながるリスクが高まっているとも指摘した。

  日銀は2年ぶりとなる政策の修正を「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」と説明している。しかし、翁氏は21日のインタビューで、長期金利の上昇容認や指数連動型投資信託(ETF)買い入れ減額の余地を作るだけでは緩和の後退と受け取られ、為替が円高に反応する可能性があるため「フォワードガイダンス(政策金利の指針)という包み紙に入れて緩和の強化と言っている印象だ」と語った。

  異次元緩和の副作用を軽減し、持続性を高めるためできる限り微調整した結果として、「建前と本音のかい離が大きくなってきている」と述べ、その行き着くところは「説明責任の放棄による信認の低下だ」との見解を示した。

  日銀は先月31日の金融政策決定会合で「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」という指針を導入。0%程度を目標とする長期金利やETFの買い入れ額が上下に変動しうることも決定した。市場では、今回の政策修正が緩和の強化なのか正常化への一歩なのか、見方が分かれている。

  翁氏はフォーワードガイダンスも実態は緩和の強化と呼ぶのは難しいとみる。2019年10月の消費増税などの「不確実性を踏まえ」と前置きしているため、リスクゆえに金利を上げられないという悲観論を強めかねず、期待に働き掛ける力は弱いと分析する。増税前に「本格的な金利調整ができるとは誰も思っていない」ので、追加的な緩和効果は「ほとんどない」と言う。

  フォワードガイダンスは、古代ギリシャのアポロン神殿の信託にたとえて、将来を予想した後は経済情勢次第で運営するデルフィ型と、船乗りを溺れさせる魔女の歌声を聴くため主人公が自らをマストに縛り付けたホメロスの叙事詩にちなみ、厳格な約束に基づき運営するオデッセイ型に分類されると言われる。

  翁氏は、緩やかな約束であるデルフィ型を採用してきた米連銀に対し、01年の量的緩和導入以降の日銀の時間軸政策はオデッセイ型だったが、今回新たに導入したのは「想定している」という緩めの表現からも、明らかにデルフィ型だと言う。

  日銀は原油など輸入価格主導で物価が上昇する「願望シナリオ」に期待しているが、「いずれ景気後退局面は訪れる。貿易摩擦など外部環境の悪化リスクも相当大きい」とし、日銀の時間稼ぎは「かなり絶望的に見える」と指摘した。

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