共産党政権の正当性、貧困対策が左右か-格差拡大する中国

  • 昨年の党大会、貧困削減を極めて重要な闘いとして重視
  • 急激過ぎる都市化で地方は一段と出遅れ、問題は悪化しつつある
Men having lunch at Liang Fucai’s home. Photographer: Bloomberg/Bloomberg
Photographer: Bloomberg/Bloomberg

北京から車で3時間。住民550人ほどの建新は、写真に撮りたくなるような渓谷の村だ。かつては誰もが急斜面に立つ老朽家屋に住んでいた。夏に激しい雨が降れば洪水や土砂崩れに悩まされた。道路は閉鎖され、村自体が何週間も孤立することもあった。 

新しくできた集合住宅

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  中国当局は建新を「生活に適さない」と分類。そして村民らを200戸余りから成る新しい集合住宅に移すことを決めた。クリニックやデイケアセンターを備えた最新住宅だ。当局が6000万元(約9億8000万円)を投じたこの住宅は2016年に完工。それから163家族がここに移り住んだ。

  だが今年5月の取材時、住民らとのインタビューでは、それほど感謝の声は聞かれなかった。むしろ資金の使途を巡る不透明さに対して怒ったり、仕事がないことを懸念したりする人々が多かった。そして貧富の格差拡大が不満の一因であることが分かった。

梁玉誠さんの家

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  梁復才さん(56)の寝室3部屋を備えた100平方メートルの新しい住まいは、確かにかつて親族と共同で暮らしていた古い農家と比べれば大違いだ。だが梁復才さんは定期収入がなくなったと嘆く。2万元と引き換えに住んでいた土地の区画を森林局に引き渡す契約に署名したのだ。「前は農業をしてたのに、土地も家も持っていかれてしまった。どうやって食べていけばいいのか」と話す。

  昨年10月に開かれた5年に1度の共産党大会で、習近平総書記は金融リスク抑制、公害対策と共に、貧困削減を極めて重要な3つの闘いの1つとして挙げた。

  政府は20年までに3000万人を極貧から抜け出させると表明。国家主席でもある習総書記の裁量で使える潤沢な資金があることを踏まえれば、目標の達成は問題ではないはずだ。それより難しいのは、そうしたプログラムの恩恵を受ける住民に、当局者の動機が単なる私欲によるものではないと確信させることだ。 

家の中の様子

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  中国問題の専門家ジューン・ドライヤー米マイアミ大学教授は「支配される側とする側との間にある不信感が大きいことを踏まえれば、善意の貧困対策でさえ、良くて冷笑、悪ければ不信で迎えられる」と指摘する。「生活改善の最新の取り組みを耳にして、人々が直ちに尋ねるのは『それで誰が利益を得るのか』だ」という。

  ロンドン大学SOAS中国研究所ディレクター、スティーブ・ツァン氏は「これまで以上に良い明日を実現できるかどうかに一段と依存するようになっているのが、習政権下での共産党の正当性だ。習総書記がさらなる貧困緩和を進めることができなければ、失敗だ」との見解を示す。

  梁玉誠さん(67)が妻と住むのは古びた家だ。そのすぐ隣に新しい集合住宅が立つ。梁さん夫妻は新しい集合住宅に移るのに必要な1万元を用立てることができなかった。そして何より、新しい住まいに無償で移り住むことができるほど貧しいのが誰か、地元の当局者が決めることには失望している。

  「自家用車を持っていても貧困に分類される者もいる」と梁玉誠さん。「何もかも役人とのコネ次第だ」と言う。

   国際通貨基金(IMF)が6月に公表した調査報告書ではエコノミストのグループが、世界で今最も格差の大きい国の1つが中国だと指摘している。急激過ぎる都市化で地方は一段と出遅れ、問題は悪化しつつあるという。都市部世帯の平均可処分所得は昨年5600ドル(約62万円)と、地方の2064ドルのほぼ3倍だった。

梁玉誠さん

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(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウイーク」誌に掲載)

原題:Chinese Village Xi Transformed Still Angry Over Inequality(抜粋)

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