Photographer: Akio Kon/Bloomberg

日銀が長期金利変動容認も、地銀トレーダーの国債回帰目線には届かず

  • 10年債で最低でも0.5%の利回り必要との声も-地銀トレーダー
  • 急速な利回り上昇は保有債券に評価損出す恐れも
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

日本銀行が長期金利の変動幅拡大を容認したことは、地銀の国債購入を後押しする材料にはなっても、保有残高を異次元緩和前の水準に戻すには不十分とみられている。地銀トレーダーからは10年債で最低でも0.5%程度の利回りが必要だとの声が聞かれた。

  日銀は7月30、31日の金融政策決定会合で、副作用が指摘される異次元緩和政策の持続性強化の一環として、長期金利の変動幅をプラスマイナス0.1%から0.2%に拡大することを容認した。これを受けて、長短金利差の拡大(イールドカーブの傾斜化)が進行。8月2日の長期金利は一時、1年半ぶりの高水準である0.145%を付けた。

  ある西日本の地銀トレーダーは、日銀の政策修正をきっかけに今までになかったボラティリティーが出てきているため、少し取引対象にできる可能性はあると指摘した。例えば10年国債を0.15%で買って、0.05-0.08%くらいに低下した局面でまた売ればいいとした。東日本の地銀トレーダーは金利上昇に対する耐性がわずかながら増すとして、向こう数カ月はやりやすくなったとみている。いずれもブルームバーグの電話取材に匿名を条件に語った。

  一方でこのトレーダーは、まだ満期保有の国債償還時に乗り換えられる水準ではないとも話す。別の東日本の地銀トレーダーは「焼け石に水」と突き放す。多くの地銀は有利子の預金で資金調達しており、コストを差し引くとほぼ金利はなくなる。国債回帰の目線としては、複数行が自行の円債平均利回りとの見合いを理由に0.5%を挙げた。逆に、急に0.5%まで上がると、保有債券に評価損が出てしまうと懸念する声もあった。

本業不振でリスク拡大

  実際に、地銀の国債保有残高は減り続けている。日銀統計によると、5月時点で20兆5600億円と2008年3月以来の低水準まで落ち込んだ。前出のトレーダーの1人は、政策修正は従来の全く動かない狭いレンジの市場に比べればまだいいが、大きくは変わらないと説明。特に、短期金利が変わらず貸出金利回りにポジティブな影響がないことから、市場部門だけでなく、本業の融資を含めた銀行全体の収益としてみてもあまり改善はないとした。

  金融庁が7月に公表した地銀の運用に関する報告書は、マイナス金利政策の導入で本業の貸出金利ざやが急速に縮小する中で、収益確保のためにリスクを拡大する動きがあると指摘した。地銀・第二地銀の円金利リスク量は自己資本対比で主要行の3倍に近く、円・外貨金利が18年3月末から0.5%上昇すると、4分の1超でコア業務純益を上回る含み損が発生すると試算。地銀に対し、含み損を年間コア業務純益の範囲に収めるなどの対応を求めた。

  こうした圧力の下で、地銀の運用部門は難しい舵取りを迫られている。ある西日本の大手行トレーダーは、自行の国債保有スタンスについて、金利が上がっていけば少しずつ増えていくとし、まず0.3%、次に0.5%が目線になると話す。長期金利は1%あればさらにいいとしながらも、バランスシート、海外の金利や株式、信用コストなどを総合的に勘案して絶対水準というよりは相対水準で考えると説明した。

  マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストは「皆が取引量を増やすなら流動性が増えてくる。現在、10年債は発行額よりも日銀の購入額の方が多い状態で、着実に流動性が失われている。ボラティリティーが出ることでプレーヤーが増えてくるならトレーディングがしやすくなる」と指摘。ただ、利益を出すには「過去の経験上、金利が下方向の時の方がたぶんもうけやすいだろう。今は全体としては金利が上昇していく方向だ」とコメントした。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE