テスラのマスク氏が非公開化を検討-実現なら過去最大のLBOに

更新日時
  • 株価終値は11%高でも提示予定額の420ドルを大きく下回る
  • 非公開化に必要な660億ドルをどう用意するかなど多くの疑問点も

イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)

Photographer: Krisztian Bocsi / Bloomberg

Photographer: Krisztian Bocsi / Bloomberg

米電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は7日、同社の株式非公開化を検討していると、ツイッターへの投稿で明らかにした。非公開化が実現すれば、赤字が続くテスラへの圧力は緩和する見込み。

  この発表は投資家を驚かせ、テスラの株価は一時約13%高となった。マスク氏のツイートに先立ち、サウジアラビアの政府系ファンドがテスラ株を約20億ドル(約2230億円)相当まで買い増したと報じられていた。

  しかし、テスラ株約20%を保有するマスク氏が非公開化完了に必要な660億ドルをどうやって用意するのかなど、多くの疑問点がある。マスク氏が買い取るとしている1株当たり420ドルを基にしたテスラの評価額は債務も含め約820億ドル。マスク氏は株式非公開化を実現するためには過去最大規模のレバレッジド・バイアウト(LBO)を行う必要がある。これまで最大のLBOの例は2007年の電力会社TXU(当時)。 

  マスク氏は従業員宛ての電子メールで、「そうしようとする理由は、要するにテスラが最も良く運営できる環境を作り出すことだ」と説明。株価の大きな変動は従業員を「ひどく動揺」させるほか、上場企業であるために「テスラは、ある特定の四半期のためには良くても必ずしも長期的には適正ではない決定をするよう強大な圧力を受ける」と述べた。

  テスラ株は1時間半余り売買が停止された後、取引が再開され、7日終値は11%高の379.57ドル。終値が420ドルを大きく下回ったのは、マスク氏の計画が実行不可能ではないかという市場の懐疑的見方の表れとみられる。マスク氏は、自分が株式非公開化を推し進める決定を下すか、そしてCEOを続けるかを最終的に決めるのは株主だと述べた。

  メーンステイ・キャピタル・マネジメントのデービッド・クドラCEOはマスク氏について、「市場は彼を信じていない。幾つかの出来事で彼の信用に疑問符が付いた。もし市場が彼を信じているなら、株価は420ドルにもっと近づいていたはずだ」と指摘した。

  事情に詳しい関係者によると、サウジのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)はこの数カ月、より広範な投資戦略の一環としてテスラ株を積み増した。PIFの買い増しについては先に英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が伝えていた。PIFの担当者にFT報道に関しコメントを求めたが返答はなく、テスラの広報担当者はコメントを控えた。

  マスク氏は以前から、投資家やメディアからの監視の目に怒りを示してきた。同氏は15年1月のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、自分が率いるスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)を非公開会社として運営するメリットを語る一方、10年6月のテスラの株式公開への不満を表し、「上場企業は多くの雑音に取り囲まれる。人々は株価や企業価値についてあれこれ言い続ける。どんな企業でも株式公開が経営者の付帯的コストを増大させることは確かだ」と語った。

  ベンチャーキャピタル会社ループ・ベンチャーズのマネジング・パートナー、ジーン・マンスター氏は、テスラを非公開会社にするのは「非常に道理にかなう」と指摘。「マスク氏は上場会社を経営したくないと思っている。彼は壮大な構想を抱いており、株主の四半期ごとの期待に応えることは難しい。われわれはマスク氏が実際にこれを成し遂げる確率は3分の1とみている」と述べた。

  テスラは多額を借り入れられる企業の典型とは異なり、上場以来毎年、営業損益は赤字となっている。またセダン「モデル3」の生産目標を達成しようとする中で、高水準の現金燃焼(フリーキャッシュフローの赤字幅)が続いていた。

  ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ジョエル・レビントン氏は、株式非公開化の可能性は「極めて低い」とした上で、「フリーキャッシュフローが赤字の事業にとって500億ドル余りを調達するのは、異例とは言わないまでも難しいだろう」と指摘した。

原題:Musk Mulls Taking Tesla Private at an $82 Billion Valuation (1)(抜粋)

(背景などを追加して更新します.)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE