【コラム】ロンドンのバンカー待つ「ゆでガエル」の運命-ギルバート

  • ドイツ銀が清算業務の半分をフランクフルトに移すとFT報道
  • ロンドンで雇用が生まれず、ダブリンやパリでポストが埋まる可能性

ドイツ銀行がユーロ建てデリバティブ(金融派生商品)取引のクリアリング(清算・決済)業務のうち、約半分をロンドンからフランクフルトに移したと英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた

  このニュースは驚くに当たらない。マネーは最も歓迎されると感じる場所に流れ、優遇される場所にとどまるものであり、英国の欧州連合(EU)離脱後のロンドンは、金融にとってより好ましくない環境になるという現実をあらためて思い起こさせるにすぎない。

  ロンドン証券取引所グループ(LSE)はこれまで、傘下のクリアリングハウス(清算・決済機関)LCHを通じて、ユーロ建てデリバティブ取引のクリアリング業務を牛耳ってきた。しかし、ドイツ取引所のテオドア・バイマー最高経営責任者(CEO)は2月のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、クリアリング業務で25%のシェア獲得を目指す意欲を示し、6月の会議では「敵が弱みを見せれば、波状攻撃を仕掛けるのが当然ではないか」と語った。

  クリアリング業務は、英EU離脱後の金融システム規制の行方を左右する主戦場になっている。5730億ドル(約64兆円)規模のビジネスがEU当局の監督権限の外に置かれることが、ブリュッセルやフランクフルトを非常に不快にさせるのは明らかだ。

  ドイツ銀の法人顧客グループのグローバル共同責任者シュテファン・ホープス氏はFT紙に対し、フランクフルトへの業務移転が人員の異動につながらず、「クリアリング業務を行うのは、ロンドン在勤の同じ人間であり、別のクリアリングハウスを使うだけだ」と説明した。

  しかし、それは当面のことにすぎないだろう。1、2年後にユーロ建てデリバティブ取引の清算・決済ボタンをフランクフルトのボルフガンクではなく、ロンドンのジェーンが押す合理的な理由があるだろうか。

  欧州の金融センターとしてのシティー(ロンドンの金融街)の地位を脅かす目下のはっきりした危険は、数千人規模のバンカーが一斉に脱出することではない。ロンドンで雇用が生まれず、ルクセンブルクやダブリン、パリで代わりにポストが埋まるということだ。ドイツ国債トレーダーやイタリア債のセールスウーマン、政府系ファンド(SWF)リレーションシップバンカーの採用場所を検討する投資銀行が、どうしてロンドンにデスクを割り当てようとするだろうか。
  
  「ゆでガエル」のストーリーは現実には考えにくい。カエルはゆで上がるまでおとなしくしているわけではなく、我慢できないほど温度が上がれば鍋から逃げ出そうとするだろう。ロンドンはまだそこまでいってはいないが、英国が合意なしにEUを離脱する見通しはこれまで以上に高まったように思われる。ドーバー海峡を渡る金融業者の数は今後増えることになりそうだ。

 

A Lot to Lose

The U.K. dominates clearing of euro-denominated derivatives

Source: 2016 central bank survey, via Bloomberg Intelligence

  (このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:London Traders Are Frogs Boiling in a Brexit Pot: Mark Gilbert
Deutsche Bank Shifts Half Clearing from London to Frankfurt: FT(抜粋)

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