日銀決定は緩和強化か事実上の正常化策か、上下0.2%容認で見方交錯

  • 日銀は持続性を強化すると主張、緩和推進派の2委員は反対
  • 政策調整問題は今回では終わらないとBNPパリバ証券の河野氏
Pedestrians walk past the Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日本銀行は31日の金融政策決定会合で、当面、低金利を維持するフォワードガイダンス(指針)を導入した。政策金利の指針は黒田体制になって初めてで、日銀は緩和の持続性を強化する措置だと主張した。しかし、上下0.1%という狭い範囲に抑えていた長期金利の変動幅を倍増させる方針が黒田東彦総裁の会見で示されたことで、副作用に配慮した金融正常化への一手との見方も出ている。

  前日銀審議委員の木内登英野村総研エグゼクティブ・エコノミストは会見後のリポートで、「強力な金融緩和のための枠組み強化」という発表文のタイトルとは逆に、長期金利の変動拡大と上昇容認を通じて副作用の軽減を狙った「事実上の正常化策」だと指摘した。追加緩和という位置付けであるフォワードガイダンスに、緩和推進派の片岡剛士、原田泰両審議委員が反対したことからも裏付けられるという。

  日銀がフォワードガイダンスの導入で物価目標の実現に対するコミットメント(公約)を強めるとともに、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化する措置を決定したのは、物価が経済・雇用情勢に比べて弱めの動きが続いており、2%物価目標が「これまでの想定より時間がかかることが見込まれる」ためだ。一方、金融緩和の副作用への言及は発表文にはない。

  黒田総裁も会合後の会見で、変動幅の拡大は「金利水準が切り上がっていくことを想定しているものではない」と言明。フォワードガイダンスによって「早期に出口に向かうのではないか、金利が引き上げられるのではないかという市場の一部にあった観測は完全に否定できる」と正常化への一歩との見方を否定した。

  円ドル相場は発表後、1ドル=111円台前半から半ばに弱含んでおり、日銀の説明を額面通り受け入れているように見える。ただエコノミストの分析はさまざまだ。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、会見後の電話取材に、緩和方向と引き締め方向が「プラスマイナスゼロ」との見方を示した。「超金融緩和の長期化の弊害の本丸は金融機関収益の下押しによる金融仲介機能の低下」だが、今回の決定では「対策が先送りされた」と指摘。副作用は着実に蓄積されていくため、「政策調整問題は今回では終わらない」とみる。

  異次元金融緩和が長引く中、金融機関の収益への悪影響や市場機能低下など副作用が累積している。足元の物価は低迷を続けており、緩和の長期化が必至となる中、副作用の軽減策を採らざるを得ない事態に陥ったともいえる。4月の決定会合では、「2019年度ごろ」としていた物価目標2%の達成時期を展望リポートから削除した。

  米欧で金融正常化が進む中、政策対応余地を確保するべきだとの意見もある。元日銀審議委員の中原伸之氏は電話取材で、「日銀は2%を中長期の物価目標として堅持した上で、金利の弾力化をもっと進めていくべきだ」との見方を示した。

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