「和食には酒」、世界清酒市場に日本食材卸事業で先手-宝HLD社長

  • 海外売上高はここ8年で10倍超に拡大、比率の長期目標は50%程度
  • 今後のM&Aは「案件ごとに検討」、高付加価値の清酒輸出増やす
「和食には酒」、世界清酒市場に日本食材卸事業で先手-宝ホールディングス社長

海外向け清酒供給最大手、宝ホールディングス(本社・京都市)は、和食文化の世界的広がりを背景に、海外売上高比率を50%程度と、現在の33%から引き上げることを目指している。この長期的目標の達成に向け米国での日本食材卸市場シェア拡大を最優先し、合併・買収(M&A)も選択肢に入れる。木村睦社長(55)がインタビューで明らかにした。

  同社は、清酒の国内市場が縮小する中、海外現地生産と輸出を着実に伸ばしつつ、清酒と共に味わう日本食材の卸事業を拡大することで、海外売上高をここ8年で10倍超に伸ばしてきた。今年5月には、国内事業を手掛ける宝酒造とバイオ事業のタカラバイオグループを含めた宝グループ全体の2020年3月までの3カ年の中期経営計画の目標を上方修正。海外売上高比率は当初計画の33%以上から35%以上に引き上げた。14年3月期の実績は13%だった。

スパークリング清酒「澪(みお)」

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  木村社長は「清酒は、単にアルコールを摂取するというより食と共に楽しむ飲用シーンがメイン。食との相性が重要で、和食には清酒が最も合うと思う。和食が世界でどんどん広がっていき、それを追い掛ける形で清酒の消費が増えていく」と語る。

  財務省貿易統計によれば、昨年の清酒の輸出金額は前年比20%増の約187億円、輸出数量は同19%増の約2万3482キロリットルと、8年連続で過去最高を記録。今年1-6月の累計は、前年同期比で輸出金額が22%、数量は14%、それぞれ増えている。しかし、全出荷量に占める輸出量の割合は16年時点で3.5%にすぎない。

  「フランス産ワインは自国で消費されるより圧倒的に海外で消費される量の方が多い。清酒に置き換えれば、海外で受け入れられるポテンシャルはまだまだある」。6月28日に就任した木村社長はそう語る。

欧州では首位

  1842年創業の宝HLDは1951年に米国向け清酒輸出を開始し、健康志向からすし人気が高まっていた83年に米国宝酒造を設立。米国での清酒生産で先駆的企業の一つだ。

  木村社長は「当時、すしはビールやワインと一緒に食べられていて、すしに合わせるなら清酒となったのは最近の話。清酒の飲み方も熱かんの時代が長く続き、だんだんと冷やや常温という日本と同様の楽しみ方がされるようになった」と指摘。「和食の普及よりも相当時間をかけてお酒が切り替わっていく」と説明する。

木村睦社長

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  和食の普及が清酒の消費拡大につながるとの見方から、和食が国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録される3年前の2010年に、海外の日本食レストランや小売店に白米やのりといったすし材料などの日本食材を販売する卸事業に参入。同年4月にフランスのフーデックスの株式の80%を取得し、現在は同事業の売上高で欧州首位となっている。16年11月には米ミューチャルトレーディングを子会社化した。

  最大の市場である米国での同事業の売上高はキッコーマン、西本Wismettacホールディングスに次いで3位だが、現在西部と東部にある計9拠点に加え中西部と南部にも拠点を設け、売り上げを伸ばしていく計画だ。M&Aについては「身の丈に合ったものを、案件ごとに検討していきたい」と語る。

  17年7月には宝酒造の海外事業を分社化し宝酒造インターナショナルを設立。木村氏が社長に就き、宝HLD社長就任後も兼務している。宝酒造インターナショナルグループの18年3月期の海外売上高は前期比88%増の707億円だった。

神戸市「白壁蔵」での日本酒づくり

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  米国での酒類事業では今後、手頃な価格のボリュームゾーンを中心とした清酒の現地生産で市場の伸びと同程度の年約6%のペースでの増加を維持するほか、スパークリング清酒「澪(みお)」や米国向け商品「松竹梅白壁蔵・特別純米」など高付加価値商品の輸出も増やしていく方針だ。

  清酒メーカーが日本食材卸事業を拡充する戦略について、野村証券の藤原悟史アナリストは「日本食レストランにとってワンストップでビジネスができ、理にかなっている」と指摘。日本食レストランの増加に伴い市場が伸びているので、新規取引の開拓ができればシェアを拡大する余地はあると話す。海外売上高比率の長期的目標である「50%程度」については、キッコーマンは50%を超えているが、国内食品メーカーとしては高い水準で、野心的と言えるとの見方を示した。

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