日銀会合、ETF対象変更ならバリュー・小型優位-全体影響限定

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  • TOPIX型を増やすと銀行や輸送用機器、卸売など恩恵
  • 流動性を無視して買い進むと小型株が指数を押し上げる弊害も

日本銀行が30、31日の金融政策決定会合で、上場投資信託(ETF)の買い入れ手法の柔軟化を検討しているとの報道が相次いだ。株式市場全体への直接的影響は軽微ながら、長期的にはバリュー・小型株優位が進むとの見方がある。

  事情に詳しい複数の関係者によると、日銀は早すぎる正常化への動きと受け取られない形で副作用を軽減できる方策に焦点を当てており、長短金利操作やリスク資産の買い入れ額の変更など、現時点で大きな政策変更が行われる可能性は低い。ETF購入政策については、購入配分でTOPIX連動型などを増やし、日経平均連動型を減らす方向で議論していると日本経済新聞が報じた。

日銀の黒田総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  アセットマネジメントOne運用本部の柏原延行チーフ・グローバル・ストラテジストは「ETF購入政策は金額自体が主目標のため、金額を変更するのは難しい」とした上で、「買い入れ対象を柔軟化、複数化したり、TOPIX型に変えていくというのは市場が反対するような話ではない」と述べた。

  日銀は現在、ETFを年間6兆円の枠で購入している。TOPIXと比べて日経平均は指数構成銘柄が少なく、特定銘柄にウエートが偏っており、個別銘柄の影響が大きくなっている。日経平均の構成比が7.95%で最も高いファーストリテイリングの場合、TOPIXではわずか0.25%で92位。東京エレクトロンは日経平均で4位、TOPIXは46位だ。

  野村証券の試算によると、20日時点での日銀保有ETFはTOPIX連動型が簿価12兆円(時価14.7兆円)、日経平均連動型が7.9兆円(11.3兆円)、JPX日経インデックス400などが1.2兆円(1.3兆円)。2016年9月にTOPIX型の比率を上げて日経平均型を減らしたものの、その2カ月前に年間購入額を引き上げたため、日経平均型は従来と変わらないペース(年1.7兆円)で買い続けているという。

  その結果、「日経平均の一部銘柄は日銀の保有シェアが高くなり、日銀がETF購入を長く続けるためには限界が近づいてきている。購入対象が日経平均型からTOPIX型に一部組み替えられるだろう」と三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之シニアストラテジストは語る。

  SMBC日興証券の圷正嗣チーフ株式ストラテジストらは、日経平均ウエートよりTOPIXウエートが大きい上位業種は銀行、輸送用機器、卸売などバリューに分類される業種が多く、反対に日経平均ウエートの方が大きい上位業種は小売、電機、医薬品などグロースが多いと分析。このため日経平均型を減額した場合、グロース/バリューの区分けでは「バリュー優位に働く」と予想する。

  また、東証1部全銘柄をカバーしているTOPIX型の買い入れ枠が拡大すれば、小型株への資金インパクトが大きくなる。もっとも、弊害の一面もある。「流動性の問題を軽視してTOPIXの買い入れ枠を増やせば、機関投資家が売買できないような銘柄が需給要因で上昇し、指数を押し上げてしまうことも懸念される」とSMBC日興では指摘する。

  みずほ証券の6月26日時点の集計によると、日銀が筆頭株主になっていると推計されるのはアドバンテスト(時価総額に占める比率24.6%)やFリテイリ(同22.5%)、太陽誘電(20.8%)、TDK(19.9%)、東邦亜鉛(18.8%)、トレンドマイクロ(18.2%)など。日銀が現在と同比率でETFを買い続けた場合、Fリテイリの浮動株(上位株主以外と定義)は約5年後に枯渇すると試算している。

日銀ETF買い入れ変更観測に関する記事はこちらをご覧ください

  JPモルガン証券は今回の日銀会合で、10年金利ターゲットの変更に関するソフトなフォワードガイダンスの導入、市場機能を回復させるための方策の導入、という2つの政策変更が行われると予想。うち2つ目の方策ではETFの銘柄別シェアの変更が含まれるとしている。

  JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳グローバル・マーケット・ストラテジストは、日銀が長期金利の誘導目標引き上げについての検討を始める場合でも、「誘導目標を上げて金融緩和が後退するというよりは、緩和を長く続けられることで効果はより高いと日銀はコミュニケーションをとるだろう」とみる。米国が利上げを続ける中では「長期的には為替市場に対する大きな影響はなく、株式市場も大きく荒れることはない」と述べた。

  一方、東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジストは、今回の日銀会合による日本株へのマイナス影響が長引く懸念があるとする。今回は現在のイールドカーブコントロールを緩和する方向に布石を打ち、「銀行株にプラスとなる半面、円高で輸出関連株にはマイナスで、為替に連動しやすい日本株は全体として調整の方向になる。実際の緩和は10月ごろになりそうで、短期では織り込みきれない」と話していた。

  日銀会合が始まった30日の東京株式市場は、日経平均が前週末比0.7%安と、TOPIXの0.4%安より下げが大きかった。医薬品や電機、小売などグロース業種が下落し、TOPIXグロース指数は0.9%安。一方、銀行や輸送用機器などバリュー業種は上昇し、バリュー指数は0.02%高だった。

(最終段落にきょうの市況を追記します.)
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