【コラム】FOMCは来週どんなシグナルを発するか

Photographer: AFP Contributor/AFP
Photographer: AFP Contributor/AFP

米金融当局が来週開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決める公算は極めて小さい。イベントとしては非常に退屈で、市場を大きく動かす可能性はほとんどないと見込まれている。先週には連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が半期に一度の金融政策報告の議会証言を行い、何時間も質疑応答が行われたほか、8月1日までの2日間のFOMC後に議長の記者会見も経済予測の発表も予定されていないことが、こうした観測を強めている。

  しかし、こうした平静な見方はあまりにも偏っているかもしれない。金融当局者は経済に加え、金利やバランスシート政策の道筋について、デリケートな判断を内々に下す必要があり、以下に挙げる4つの問題を巡って以前に市場に発したシグナルを微調整するかどうか決めなければならないだろう。

  米国の経済成長率とインフレ率は金融当局の見通しに沿って加速しつつあるものの、足元の経済・金融環境は幾つかの面で全般的に不透明となっている。具体例は次の通りだ。

  • 金融市場の動向には引き続き困惑させられる。比較的フラットなイールドカーブ(利回り曲線)の下で米2年債と10年債の利回り格差(スプレッド)はわずか30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、過去には深刻な景気減速を示唆してきた水準にまで縮小している
  • 通商政策も極めて流動的で、米国と貿易相手国・地域は虚々実々の報復の応酬を繰り広げている
  • 6月の米雇用統計によれば、力強い雇用創出の継続にもかかわらず、賃金の伸びは上向きの勢いを維持するのではなく鈍化している
  • 失業率は歴史的に見て低水準にあるが、労働参加率の上昇を受けて、労働市場にまだ多少のスラック(たるみ)があるのではないかとの見方が再浮上している
  • 生産性のトレンドは依然としてエコノミストを当惑させている。低調なデータが続いているのは計測の誤りによるのか、さまざまなタイミング上の問題や一時的な問題が要因なのか、重しとなるような長期的な諸力によるものなのか、自信を持って決めるにはまだ手掛かりがほとんどない
  • 米国以外の国・地域では成長の勢いが失われつつあるように見受けられ、米国にとって経済や金融の向かい風となりかねない

  FOMC参加者は経済と政策の基礎評価に当たってこれらの問題全てに直面し、市場にどんなシグナルを送るか決めることになる。パウエル議長が17日の上院銀行委員会の証言で、「フェデラルファンド(FF)金利の漸進的な引き上げ」を継続するとした従来の方針に、「当面」という限定的な表現を加えたことで、何らかの微調整があるのではないかとの観測が台頭した。

  全ての市場ではないが、株式市場のトレーダーはこの議長の表現を、金融当局の政策意図について幾分ハト派色を強めたサインとして解釈した。当局者は次の4つのシグナルを発することによって、これを確認するかどうか決めねばならないだろう。

  • 国際的な状況が以前よりも緩和的でないことを理由に、2018年の利上げ回数見通しを計4回から3回に戻す
  • 次回利上げが9月である可能性を引き下げる
  • バランスシート縮小プロセスの終了時期が早めとなって、連邦準備制度が過去の例に比べて依然として極めて大きなバランスシートを抱えたままの状態となる可能性を示唆する
  • 中立金利は時期によって非常に変わりやすいもので、一段と高めで過去に照らしてもっと一貫した水準に回帰するとの見解を強化する

  私が以前に指摘したように、前議長のジャネット・イエレン氏が今もFOMCを率いているのであれば、現行の不確実な情勢を踏まえてこれら4つ全てのシグナルを発する機会に飛び付いただろう。だが、パウエル議長は現時点では、最初の2項目についてのみシグナルを発しようとするかもしれない。それでも、他の2つのシグナルを将来的に発する可能性がないことを意味するものではない。それには多少時間がかかるだけだろう。

(このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:What Fed Will Signal at Meeting Next Week: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE