通貨戦争のリスク後退、ムニューシン米財務長官が懸念解消で成果

  • G20会見で「強いドル」政策変わらず、為替介入せずと言明
  • G20では通貨戦争の可能性議論されず、貿易摩擦の問題に集中

U.S. Treasury Secretary Steven Mnuchin.

Photographer: GREG BAKER/AFP
Photographer: GREG BAKER/AFP

ムニューシン米財務長官は20日、通貨戦争のリスクが高まる中で、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれるアルゼンチンの首都ブエノスアイレス入りした。しかし22日の会議閉幕までに同長官は、世界の当局者らの緊張を和らげるのに成果を上げた。

  ムニューシン長官は約48時間で、米為替政策がシフトするのではないかとの懸念を打ち消した。21日の記者会見では、強いドルへの長きにわたるコミットメントは変わらないとあらためて強調。米国はドル相場に介入するつもりはないとも言明した。

  トランプ米大統領は20日のツイッターへの投稿で、中国と欧州連合(EU)が為替相場を操作してきたと批判し、ドル高が米国の「競争上の優位性」を鈍らせていると不満を表明した。こうしたコメントを受け、投資家の間にトランプ大統領が輸出拡大を図り、ドル安を目指す新たな政策を始めたのではないかとの懸念が広がり、ドルは20日、この4カ月で最大の下げとなった。

  しかし、会議の期間中、各国・地域が通貨の競争的切り下げを行う通貨戦争の可能性を論じる参加者はほとんどいなかった。スペインのカルビノ経済相は22日午後、記者団に対し、「われわれはこの議題を議論しなかった」と語った。

  G20参加者の討議はその代わり、世界的な貿易摩擦の問題に集中した。現在、米国と貿易相手国・地域の報復関税の連鎖が、企業景況感の低下や世界的なサプライチェーンの混乱、消費者物価の上昇を招くのではないかと懸念されている。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事はこの問題の深刻さを警告するとともに、国際協調を通じて互いの溝を埋めるようG20に呼び掛けた。

  G20は閉幕に当たり、共同声明を発表。貿易摩擦が激化する中で世界経済へのリスクが強まっていると警告した。

  ムニューシン長官は外交能力を発揮した為替問題とは対照的に、貿易に関する米政権のスタンスや、中国に対する激しい批判を和らげることはなかった。同長官は21日、記者団に対し、ホワイトハウスは引き続き、米国の輸出品や投資に対し市場を開放するよう各国に圧力を加えていくと発言。また、人民元安は市場の諸力によるものか、それとも政府の介入によるものなのかと疑問を投げ掛けるとともに、主要通貨でこの1カ月の下落率が最も大きかった元相場を米国は注視していくと述べた。

  オーストラリアのモリソン財務相が米国の貿易を巡る不満は理解できると発言するなど、一部参加者は貿易問題での米国の立場への共感を表明した。

  しかしEU当局者らは米政策に比較的厳しい見方を示し、米国との通商交渉にEUは統一した立場で望むべきだと論じた。25日にはEUの行政執行機関、欧州委員会のユンケル委員長がホワイトハウスでトランプ大統領と貿易問題を話し合う予定。フランスのルメール経済・財務相は、米国が関税を手段として使おうとする限り、交渉の前進は見込めない可能性が高いと発言。「われわれは銃を頭に突き付けられて交渉することは拒否する」と語った。

原題:Fears of Currency War Ease After Mnuchin’s Two Days in Argentina(抜粋)

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