パウエル議長が語った「当面」、利上げは自動操縦ではないとのサイン

  • 金利の漸進的な引き上げを「当面」継続する方針を議会証言で表明
  • 利回り曲線の平たん化、中立金利にどの程度近いかのヒントにも

パウエル議長

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、金融政策運営が米経済にどの程度の圧迫となっているかを見極めようとしている。

  鍵となるシグナルは、パウエル議長が17日、上院銀行委員会での証言で、「フェデラルファンド(FF)金利の漸進的な引き上げを継続する」という当局の方針に関して付け加えた「for now(当面)」という2語だ。これは同路線が無条件ではないとの警告と言える。

  財政刺激策が成長の追い風となる一方、貿易摩擦の激化が向かい風になりかねないと懸念される中、パウエル議長のこの2語は、どこまで利上げするか検討する上で金融当局が直面している不確実性を浮き彫りにする。

  TDセキュリティーズUSAのグローバル金利戦略責任者、プリヤ・ミスラ氏は「長期的な成長に対する財政政策の影響を巡る不確実性を踏まえ、議長は選択の余地と柔軟性を確保しようとしている。利上げのペースを緩めたり、中立金利を上回らないようにしたりする可能性を残している」との見方を示した。

  投資家はパウエル議長のメッセージをしっかりと受け止めたようだ。S&P500種株価指数は前日比0.4%高で取引を終え、米10年債利回りはほぼ変わらずだった。

  パウエル議長が政策金利ついて示した条件付きの見通しは、米金融当局者が四半期ごとの経済予測で提示するドット・プロット(金利予測分布図)が時に発してしまう確実性という誤ったメッセージを打ち消す、小さいながら重要な抑止装置となりそうだ。

  金融当局者は6月、金融政策を来年末までに引き締め気味とする必要があるとの認識を示唆した。景気を加速も減速もさせない中立金利を中央値で2.9%と見積もる一方、FF金利の見通しは2019年末までに3.1%、20年末までに3.4%とした。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチの米国担当シニアエコノミスト、ジョゼフ・ソン氏はパウエル議長が用いた「当面」という表現について、「例えば貿易摩擦が理由でデータが悪化し始めたら引き締めペースを緩めるという考えが当局にあることを示すが、その逆もあり得る。減税が想定以上の景気刺激的効果を発揮して、引き締めペースの加速につながるかもしれない」と話した。

  ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁やアトランタ連銀のボスティック総裁といった一部の地区連銀総裁は、利上げがイールドカーブ(利回り曲線)の長短逆転を招くような事態を回避しなければならないと警鐘を鳴らしている。パウエル議長は、長短利回り格差(スプレッド)の縮小は、当局が中立金利にどの程度近づいているかのヒントを与えているのかもしれないとの解釈を示した。

  FRBが議会に提出した半期に一度の金融政策報告には、中立金利の推定に使われるさまざまな政策モデルを説明するセクションが盛り込まれている。それらに基づく中立金利の見積もりには実質ベースで0.1-1.8%と幅があった。当局の2%のインフレ目標を加味した名目ベースでは2.1-3.8%となる。

  また、当局が6月に示した中立金利の見積もりは2.3-3.5%。現行のFF金利誘導目標は1.75-2%なので、0.25ポイントずつあと2回引き上げれば、中立金利レンジの下限に達することになるが、パウエル議長は17日の証言の機を捉え、政策が事前に設定された軌道上にあるのではないと強調した。

  コーナーストーン・マクロのパートナー、ロベルト・ペルリ氏は顧客向けリポートで、「『当面』という表現は、四半期ごとに0.25ポイントずつの利上げという、当局がこれまでに進めている政策が確定された路線でないことを示唆する」と分析。その上で、「当局が利上げペースを緩めるか、一時停止することさえ考えられる大きな理由の1つは、FF金利が現時点で推計される中立水準に近づいていることだ」と記した。

原題:Powell’s ‘For Now’ Caveat a Sign Fed Rate Hikes Not on Autopilot(抜粋)

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