低ROEに株主から厳しい目、トップ選任反対比率高くー6月総会

  • ワースト1位は東洋製缶、2位日立造船、3位イビデン
  • 約3割が社長、会長らの選任に反対-決定打には至らず

経営の効率性や収益性を示す株主資本利益率(ROE)が低い企業のトップ選任案に反対する比率が6月の株主総会で高まったことが分かった。収益性の低い企業に対する株主の視線は厳しさを増している。

  株主関連サービスのアイ・アールジャパンホールディングスのまとめによると、主要株価指数に採用されている企業のうち、経営トップの反対比率ワースト1位は東洋製缶グループホールディングスで37.4%(前年25.4%)、2位は日立造船の34.5%(同5.9%)だった。今回の総会では、全上場企業の社内取締役の選任で20%以上の反対票を集めた議案が157件と前年(122件)から増加した。

  調査ではワースト10位までの企業のうち1ー8位について、アイ・アールジャパンが推定反対理由として挙げたのは低ROE。9位と10位は「不祥事の疑い」だった。10位までの平均値31.97%は、1年前の総会での同じ企業の反対率(16.53%)の約2倍に達した。

  ブルームバーグのデータによると、TOPIX採用銘柄の直近の平均ROEは9%と、経産省がまとめた「伊藤レポート」で最低限目指すべき目標とされた8%を上回った。一方、ワースト8企業のROEは、東洋製缶Hが-3.79%、日立造船が1.87%など、-8.74~4.31%の間にとどまる。1位の東洋製缶Hは1917年創業の製缶国内最大手中期経営計画でROE5%以上の目標を掲げるが、それを下回る状態が続いている。

  ランキング結果について、東洋製缶H総務部の田上健二氏は「非常に厳しい結果になったと認識している。低ROEで国内外の投資家からの反対票が上積みされたことが要因と考えている。業績改善によりROEを5%以上に引き上げることを目指している」とコメントした。日立造船の広報担当者は17年度の低ROEが原因とし「株主・投資家の皆様の期待に応えるべく、収益目標達成に向けて取り組んでいく」と電子メールで回答した。商船三井の広報担当は総会の結果を分析中だとしてコメントを控えた。

<反対行使率ランキング>

順位企業名反対比率推定理由ROEWACCROIC
東洋製缶H37.4%低ROE-3.79%6.67%1.63%
日立造船34.5%低ROE1.87%3.74%1.51%
イビデン34.3%低ROE4.31%7.62%3.00%
商船三井32.9%低ROE-8.71%3.10%-0.42%
フジメHD32.7%低ROE3.63%5.52%2.11%
パイオニア32.3%低ROE-8.74%5.63%-70.31%
オートバク30.7%低ROE4.26%8.51%3.67%
大日本印刷28.8%低ROE2.63%6.50%2.37%
スルガ銀行28.2%不祥事の疑い2.05%10.4%17.23%
10鹿島27.9%不祥事の疑い20.88%6.61%10.44%

出典:アイ・アールジャパン、ブルームバーグ
 

  野村証券の松浦寿雄チーフ・ストラテジストは「低ROEに対して株主の目が厳しくなっていることの表れで、今後も株主からの風当たりは強まると思う」と述べる一方、上位の東洋製缶H、日立造船などは明治・大正時代創業の古い製造業で「主力事業の収益性が構造的に低く、すぐに高めろといわれても難しい。否決されて社長を解任すれば解決するという話でもない」と指摘する。

  今回の調査で低ROEを理由にトップ人事が否決された例はなかった。松浦氏は「会社側に改革を迫る決定打にはならなかった。株主はこれからも圧力を強めて投票することで意見発信していくしかない」と言う。企業側に対しては「低ROE企業はほぼ、資本コストが収益性を上回っている。その状態が続き、投資家の期待に応えられないなら、上場をやめる選択肢も考えるべきだろう」と指摘した。

  資本コストは支払利息や配当など企業の資金調達に伴うコストであり、企業が成長するためにはそれを上回るリターンを上げなければならない。一般的に加重平均資本コスト(WACC)が運営効率の指標である投下資本利益率(ROIC)を上回ると、投資するほど企業価値が毀損(きそん)することになる。ブルームバーグのデータによると、反対行使ランキングのワースト企業の1-8位でこうした「企業価値の毀損」状態となっていた。

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