トランプ政権の保護主義対抗へ新たな「防波堤」-日欧EPA署名へ

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  • 「自由貿易前進へ、揺ぎない政治的意思を示す」-共同声明
  • 日欧が危機感共有、保護主義への「防波堤」-みずほ総研・菅原氏

日本と欧州連合(EU)は17日、経済連携協定(EPA)に署名した。世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める巨大な自由貿易圏を「防波堤」に、日欧が連携し、トランプ米大統領の保護主義的な通商政策への対抗姿勢をアピールする。今後、議会での承認など早期発効に向けた手続きを進める。

安倍首相とトゥスクEU大統領(左)、ユンケル欧州委員長(右)

Photographer: Martin Bureau/Pool via Bloomberg

  日EUは同日発表した共同声明で、EPAへの署名について「自由貿易の旗を高く掲げ続け、力強く前進させていくとの揺るぎない政治的意思を世界に対して示すもの」と意義を強調。その上で、「世界貿易機関(WTO)を中心とするルールに基づく多角的貿易体制の極めて重要な役割を強調し、引き続き保護主義と戦う」と明記した。安倍晋三首相は共同記者会見で、日欧EPAは「アベノミクスの新しいエンジンになる」と述べた。

  日欧EPAは2013年に交渉を開始し、焦点だった日本から輸出する自動車への関税撤廃や欧州から輸入するチーズへの市場開放について双方が歩み寄り、昨年7月に大枠合意した。当初、安倍首相が11日にベルギー・ブリュッセルを訪問し署名式を開く予定だったが、豪雨災害を受けて外遊を中止。署名はいったん延期となったが、中国との首脳会議で16日に北京を訪問する予定だったユンケル欧州委員長とトゥスクEU大統領が、急きょ来日した。

  みずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員は、EUが日欧EPAの署名を急ぐ理由について、トランプ政権への危機感が共有されたためで、「本来ならもう少し時間がかかってもおかしくなかった」と指摘。同協定に保護主義に対抗する「防波堤の意味合いが加わった」と強調した。

  外務省の資料によると、世界貿易の約4割を占める日EU経済圏で協定が実現することで、政府は日本にとって実質GDPを約1%(約5兆円)押し上げ、雇用を約0.5%(約29万人)増加させる経済効果があると見込む。日欧EPA、米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP)を加えた日本の署名・発効済み自由貿易協定(FTA)カバー率は、25.2%から36.5%に広がるという。

  一方、トランプ大統領は15日に放送されたインタビューでEUが貿易面で「われわれを利用」しているとして「敵」と呼んだ。トゥスク大統領は16日、中国との年次首脳会議の冒頭発言で、トランプ氏に対し、世界秩序を損ねるのではなく改革することに力を入れるよう呼び掛け、貿易摩擦が「熱い対立」に至る可能性もあると警告した。EUと中国は同日、保護主義と一国主義に抵抗していくことを明記した共同声明を発表した。

  慶応大学の木村福成教授は、EUはアジアとの連携強化に向け、中国とも通商交渉を進める可能性があるとの認識を示す。EUが求める高いレベルの自由化やルールを中国が受け入れるのは「難しいかもしれない」としながらも、交渉が進み中国の政策が変化すれば「プラスが大きい」と指摘。今後も世界的に「メガFTAを使って保護主義に対抗するということが前進していく」と述べた。

(署名式、共同記者会見を受け、見出しと第1、2段落を更新します.)
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