リーマンショック前夜、白川日銀の情勢判断に甘さ-08年上期議事録

  • 日本への影響を過小評価、初動の遅れに-邦銀取引少なく
  • 白川総裁は「世界中を覆っている不確実性という霧」と警戒も様子見
Photographer: Akio Kon/Bloomberg
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リーマン・ショック前夜に経済の不透明感が強まる中、政治混乱の末に就任した日本銀行の白川方明総裁は、日本への影響を限定的と見ていた。情勢判断の甘さが初動の遅れにつながり、日銀は長く続く円高との戦いに巻き込まれることになる。日銀が17日、2008年1月から6月に開いた金融政策決定会合の議事録を公表した。

  野党が参院の過半数を占めるねじれ現象の中、武藤敏郎副総裁の昇格が否決され、08年3月に任期満了した福井俊彦総裁の後任人事は難航。結局、先に承認された白川副総裁が昇格する形で決着した。米国で住宅バブルが破裂し、証券化されたサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅ローン)の不良債権化を受けて大手証券ベアー・スターンズが破たんするなど、国際金融市場は騒然としていた。

  白川総裁は4月30日の初会合で、情勢を「世界中を覆っている不確実性という霧」に例え、最大の下振れリスクを米国経済や国際金融市場の動揺と指摘。米国経済について「住宅価格については下げ止まりの兆候が全く見られていない。当面は、実体経済と金融の負のフィードバック(相互)作用に注意しながら見ていく必要がある」と警戒感を示した。

  日銀は「金利水準は引き上げていく方向」としていた先行きの金融政策運営を「あらかじめ特定の方向性を持つことは適当ではない」と変更し、前体制から続いていた利上げ路線を棚上げした。

  ただ日本経済については、白川総裁は「おおむね潜在成長率並みの緩やかな成長を続ける」と述べ、米国のバブル崩壊の影響は限定的との見方を維持した。背景にあったのは、邦銀のサブプライムローン関連取引が相対的に少なかったことや、日銀が有する金融調節手段への自信だった。

  白川総裁は、日本は欧米とは異なり「金融機関の貸し出しも急激に引き締まるということではない」と分析し、国内の金融システム安定維持に日銀の「きめ細かな」流動性・金融調節も貢献しているとの見解を述べ、自信を示した。

  市場機能維持の重要性にもこだわった。白川総裁は「実質金利が低くても市場が正常に機能していない場合には、金融緩和は十分に効果を発揮しない」と主張。市場機能が働かなければ、「金利を少々引き下げても、また追加的な流動性を供給しても状況はなかなか改善しない」と0.5%の政策金利水準を正当化した。

  同様の姿勢は6月会合でも維持されたものの、米国発の金融不安は強まり、9月のリーマン・ブラザーズ証券破綻をきっかけに未曾有(みぞう)の金融危機に突入した。日銀は10月8日に米欧6カ国の中央銀行が実施した協調利下げへの参加を主要中銀で唯一見送り、1ドル=100円前後だった円相場は90円に接近した。

  市場に追い込まれる形で同月31日に政策金利を0.3%に、12月に0.1%に引き下げたが、初動が遅れた代償は大きく、日銀は円高対応に追われる。白川総裁の任期満了間際の13年1月には2%の物価目標が採用され、異次元緩和を導入する黒田東彦総裁の誕生につながった。

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