劣勢日本株、米中摩擦で8月まで低迷もープットコールレシオ上昇

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  • TOPIX騰落率は先進国でワースト3位、当該国中国にさや寄せ
  • プットコールレシオは2007年以来の高さ、海外勢も再び売り越し

Photographer: Kiyoshi Ota/ Bloomberg

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世界の主要株式市場で日本株の劣勢が顕著だ。海外景気にスローダウンの兆しがうかがえるほか、通商摩擦への懸念も重なり、下落率は米国と直接対立する中国株に迫っている。日本も米国との間に自動車関税問題を抱え、その結論が出る8月下旬まで不人気が続く可能性がある。

  東証1部全体の値動きを示すTOPIXは3月を底にしていったん持ち直したが、米国のトランプ政権が保護主義的な通商政策を強硬し続け、6月半ばから再度崩れた。13日午前終値時点の年初来騰落率はマイナス5.2%と先進24カ国でのパフォーマンスはスイス、ギリシャに次ぐワースト3位だ。

米中首脳

Photographer: Qilai Shen/Bloomberg

  アセットマネジメントOneの鴨下健ファンドマネジャーは、「世界の貿易量の拡大とともにTOPIXの1株利益は増大してきた。貿易摩擦が活発化すると、世界の中でも輸出大国の日本に対し海外投資家が嫌がり、過去は1株利益に先んじ、まず12カ月先PERが下がっていく傾向がある」と言う。

  半導体などで日米の貿易摩擦が強まった過去のケースでは、日本経済が強い時代だったため、市場は消化できたものの、「今は日本経済が弱く、自動車などに関税をかけられると、インパクトが出てしまう」とも警戒している。

  ブルームバーグ・データによると、TOPIXの12カ月先予想PERは13倍台前半にまで低下、年初は16倍を上回っていた。投資家の弱気姿勢はオプション取引のデータでも確認でき、日経平均オプションのプットコールレシオは6月末に1.77倍と2007年以来の高水準に達した。プット(売る権利)の総建玉をコール(買う権利)の総建玉で除して算出される同レシオの上昇は、弱気派の増勢を表す。

TOPIXの12カ月先予想PERの推移

  一方、米国のS&P500種株価指数は昨年末の水準を上回っている。日本株は6月中旬まで米国株に連動する傾向が見えたが、6月後半以降は下落ピッチを速めた中国株にむしろさや寄せした。SMBC日興キャピタル・マーケッツのストラテジスト、ジョナサン・アラム氏(ロンドン在勤)はCSI300指数が円ベースでは足元で年初から10%台後半へ下落している中で、「今アジアで最も大きなストーリーは中国株。日々の動きを見ると、日本株は中国からのサインで動いているようだ。中国株の弱さは貿易戦争への恐れに起因する」と話す。

  米国は6日、直接の対中国関税としては初となる340億ドル相当の中国製品に対し25%の追加関税を発動。月内の公聴会を終えた後に160億ドル相当の中国製品への追加関税発動も検討しているほか、10日には中国からの輸入品2000億ドル(約22兆2000億円)相当を対象にした新たな関税リストを発表した。5月23日には乗用車とトラックの輸入が米国の安全保障を脅かすかどうかの調査を開始し、結果次第で自動車輸入に最大25%の追加関税を検討する。

  米国の対中関税発動で日本は中国経済への依存度が大きい設備投資関連などが悪影響を受けるリスクがあり、産業ピラミッドの裾野が広い自動車分野が米保護主義のターゲットになれば、直接経済にダメージが及ぶ可能性も出てきた。これらを警戒し、日本株売買代金の7割を占める海外投資家は再び売り越し基調となっている。東京証券取引所の投資部門別売買動向(東証、名証2市場合計)によると、海外勢は3月まで現物株を5カ月連続で売り越した後、4月は買い越しに転じたが、5、6月は2カ月連続で売り越した。

  アセマネOneの鴨下氏は、「日本株の先行きは貿易戦争への懸念がさらに高まるかどうかにかかっている。米国による自動車の輸入関税は日本にとって次の焦点」と指摘。関税がかからないことがメインシナリオだが、「万一かかると、日経平均の2万円割れは覚悟しなければならない。米国商務省による発動是非に関する8月下旬の結論付けまで、株価は大きく動きにくいだろう」と予想した。

  市場が貿易問題の材料に敏感に反応する根底には、グローバル景気の回復が成熟化している点が挙げられる。シティグループが算出する米経済サプライズ指数はことしに入り右肩下がり、6月には昨年9月以来、9カ月ぶりに一時マイナスに沈んだ。SMBC日興のアラム氏は、「単純な真実は、日本が世界経済に敏感な極めてシクリカルな市場であることだ。多くの国で1-3月の景気減速の兆候がある中、貿易摩擦の恐れがあると日本株が結果を出すのは難しい」とみている。

  もっとも、しんきんアセットマネジメント投信の山下智巳主任ファンドマネジャーは、「貿易問題があり、ことしは上値が重い」としつつ、「景気が悪くなっていく中、弱気がまん延しているわけではない。懸念材料が多く、少し弱気に傾いている向きがいる程度」との認識だ。米国による2000億ドルの対中追加関税が本当に発動されれば、話は別だが、「リストが出た段階で本気度が試される状況。実行されれば、米国も相当なダメージを受けるため、実際にかけるかどうかは微妙だ」と言う。

  ムニューシン米財務長官は12日の下院金融委員会での証言で、自身とトランプ政権当局者は通商問題を巡る中国との交渉に応じることができるとの認識を示した。「中国が構造改革を行う意向がある限り、私と米政権はそれに応じることができる」と話した一方、「われわれは関税を唱道しているのではなく、公正な貿易を提唱している」と述べた。

(2段落を更新し、米中貿易に関する最新情報を文末に追記.)
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