日本総研・高橋氏:デフレ脱却の最後のチャンス-財政出動で万全対策

  • 日銀の金融政策に与える影響「一切ない」-中間指標に財政収支
  • 消費税だけでなく、社会構造の変化に合わせた税体系を検討を

経済財政諮問会議の民間議員を務める日本総研の高橋進名誉理事長は、足元の堅調な経済状況は「デフレ脱却の最大であり、最後のチャンス」とした上で、2019年10月の消費増税に向けて積極的な財政出動を実施し、景気の腰折れを回避すべきだとの考えを示した。

  高橋氏は3日のインタビューで、「日本経済の成長力を強化し、潜在成長率を上げる取り組みが必要だ。そこを一気に加速するためにお金を使って対策を打っていくべきだ」と語った。内閣府によると18年1-3月期の潜在成長率は1.0%。

  高橋氏は、軽減税率が導入されることなどから、前回の増税時に比べて景気が落ち込む「蓋然(がいぜん)性は低い」ものの、景気が後退した場合に10ー20兆円規模の大々的な経済対策を打つ財政的な余裕はないと指摘。20年の東京五輪後の需要変動も見据えた予防的措置として「万全の対策で臨む」必要性を訴えた。

  具体的には、住宅や車などの消費変動対策に加え、ITや人工知能(AI)の導入加速、インバウンド需要の取り込みなど、潜在成長率を引き上げるような対策に資金を振り向けるべきだとの見方を示した。必要な景気対策の総額は言及を控えた。

  政府が6月に策定した骨太方針では、現行の8%から10%への消費税率引き上げに伴う需要変動に対応するため、臨時・特別の措置を19-20年度の当初予算で講じると明記した。安倍晋三首相は2月の諮問会議で、消費増税による「駆け込み需要と反動減といった経済の振れをコントロールし、需要変動を平準化する具体策を政府一丸となって検討する必要がある」と発言していた。

成長だけで財政健全化できず

  同方針に盛り込まれた新財政健全化計画では、政府の基礎的財政収支(PB)黒字化達成時期の25年度への5年先送りに加えて、国債利払い費の削減が鍵を握る財政収支の赤字を21年度までに抑制する中間指標が明記された。市場関係者の間では、現行の金融緩和を続け、金利上昇を抑制するよう日銀に無言の圧力がかかっているとの見方が広がっている。

  高橋氏は「金融政策に影響を与えるとか、日銀に対するメッセージということは一切ない」と言明。「目先だけ考えれば、日銀に対するプレッシャーという考え方も通用するかもしれないが、長い目でみればそうではない」と述べ、中長期的な金利上昇を踏まえた財政運営を念頭に、財政収支を指標に加えたと説明した。

  政府が新計画策定の前提としている高い成長率(実質2%、名目3%以上)を批判する声もある。高橋氏は「成長しない経済で財政健全化は無理だが、成長だけでできるはずもない」と述べ、PB黒字化目標の達成は、社会保障改革にかかっているとの見方を示した。今後3年で改革に必要な措置を打ち出す方針だ。

  政府は、中間指標の達成状況を確認する21年度に歳出入改革も再検討する。高橋氏は将来的にさらなる消費増税を検討する前に、徹底した歳出改革に踏み込まなければ国民負担の増加につながると強調。また、省エネや電気自動車(EV)へのシフトなどで税収減が見込まれる自動車関連税など、社会構造の変化に合わせた抜本的な税体系の見直しも検討すべきだとの考えを示した。
  

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