デンソー常務:数千億円規模のM&Aやりたい、自前主義から脱却

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  • 電動化や自動運転などに対応、技術や人材の確保へ積極的に投資
  • 株価も意識、配当性向35%程度と自社株買いは毎年200億-300億円

トヨタ自動車グループ最大の部品メーカー、デンソーは電動化や自動運転などの新技術で急速に変化する経営環境に対応するため、自前主義など従来の企業文化からの脱却を進めている。M&A(企業の合併・買収)も含めた他社との連携を加速させ、数千億円規模の大型案件を手掛ける可能性もあるという。

  経営企画や経理などを担当する松井靖常務は28日の愛知県刈谷市の本社でのインタビューで、デンソーでは長年、自社での技術開発を基本としてきたが「車が高度化、複雑化しているので自前主義ではもうやりきれない」と、積極的にM&Aを活用する姿勢に転じたと話した。「自己資金と資金調達まで考えればかなり大きな額までできる。一発勝負なら1兆円だせる」としながら、現実的には1件しか買収しないことは考えにくく、「数千億円規模のM&Aをやれたらいいなと思っている」と話した。半導体関連などさまざま分野が対象になりうるという。

  デンソーの前期(2018年3月期)の自己資本比率は62%でトヨタやアイシン精機、ジェイテクトなどトヨタグループの主要部品メーカーよりも高い。カーシェアリングや車載通信の普及なども含めて「100年に一度」とも表現される転換期に、1兆円近い潤沢な手元流動性を持つ同社がM&Aに積極姿勢に転じることで今後の成長への期待が高まると同時に、従来にないリスクも抱えることになる。

  デンソーは今年3月、800億円規模の資金を投じて半導体メーカーのルネサスエレクトロニクス株を買い増し、保有比率を0.5%から5%に引き上げた。昨年にはカーナビゲーションなどを製造する富士通テンを子会社化(買収額は非公表)したり、イビデンと資本業務提携し、パワートレーン分野の開発を始めるなど他社との協業を活発化させてきた。

  松井氏は不足しているIT人材の確保や、ユニークなビジネスモデルを持つベンチャー企業への投資も進めるとした。ベンチャー投資は数年前までは年間5-6億円ほどだったが、現在は50-100億ほどに増えているとし、日本、北米、イスラエル、北欧などさまざまなエリアで広く企業を探していると話した。

  自動車業界では、自動車を製造して販売するビジネスモデルを超え、未来の移動サービス(モビリティー)をにらんだ資本提携が活発化している。デンソーのライバルである独ボッシュは今年2月、米ベンチャーを買収してライドシェアリングに参入すると発表。トヨタも6月、東南アジアの配車サービス大手、グラブへの10億ドル(約1100億円)の出資を表明したほか、国内ITベンチャーにも積極的に投資するなど独自の戦略を進めている。

IRも改革

  一方、トランプ米大統領が米国に輸入される自動車や部品に最大25%の関税をかけることも検討していることについて松井氏は「重大な懸念。過度な貿易戦争はあるべき姿ではない」と警戒感を示した。トランプ政権が発動した鉄鋼とアルミニウムへの関税強化は同社にとって10億円以上、さらに米中の貿易摩擦で香港から米国への電子機器輸出などへの関税が増えれば数十億円のインパクトがそれぞれあるだろうとし、「多大な影響がある」と述べた。

  松井氏によると、広報やIRなど対外的な情報発信についても変革を進めている。従来は保守的で情報発信に消極的だったが、「沈黙を守ることはむしろリスクになる」とし、IR活動の回数を増やすなど積極姿勢に転換を図っているという。昨年11月に25年度に7兆円の売上高目標を掲げたのもその一環としている。

  株価についても従来より意識するようになったとし、配当性向は「35%くらいを安定的に出していきたい。一回上げた配当は下げない」とし、ここ数年実施してきた200億ー300億円の自社株買いも今後も継続していきたいと述べ、こうした方針をさまざまな機会で発信していくと話した。

  デンソー株は1月に7176円と上場来高値を付けたものの、その後下げ進み、5日の終値は5162円と高値から約28%の下落となっている。現状の株価とPERは低すぎるとし、「積極的に発信しているけれどまだわかってもらっていない」と投資家とのコミュニケーションを強化していくとした。

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