パウエル議長好みの金融政策ルール、ウィリアムズ氏が過去に提示か

  • ウィリアムズNY総裁はファースト・ディファレンス・ルールを紹介
  • 簡単な公式の形で失業率やインフレ率の実際の変化に対応

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、米金融当局の知識の限界に注目を集めるのをためらうことはない。

  パウエル議長は6月13日の記者会見で、金融政策で最も重要な概念上の疑問に金融当局が答えを出す能力について、極めて率直に疑念を表明した。その疑問とは、景気を加速も減速もさせない中立金利の水準がどこにあり、厄介なインフレを引き起こさずにどこまで失業率を低下させることができるかの2つだ。

  パウエル議長は「観測されないこうした変数に執着し過ぎるわけにいかない。あまり正確さや自信を持って語るべきではない。われわれはその推計に努めている」と説明。実際に強調すべきなのはハード(確か)なデータの変化を監視することだと語った。

  パウエル議長のこのような発言は、経済の理論モデルに飽き飽きしているFRBウオッチャーには新鮮に聞こえるかもしれない。議長の「平易な言葉」を使ったアプローチと不確実性に対する謙虚さは金融市場で働く人々の間で人気を博している。ただ、だからといって、新たなデータに金融当局がどう行動するかがそれほど分かるわけでもない。

  中立金利と自然失業率の水準の推計は、欠陥はあるものの、政策の道しるべとなることから有益だ。そして金融当局者がその推計を公表すれば、経済に変化があった場合に当局がどのように反応するか予測可能性を与えるのに役立つ。

ウィリアムズ氏の論文

  「観測されないデータ」に不安を感じハードなデータを好むパウエル議長の期待に応えるような、金利設定のための指針がありさえすればよいが、実は議長にとって金融当局者で最も先輩格と言える同僚の1人であるニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁がかつて、そのような手引きを提示していた。

  ウィリアムズ氏はサンフランシスコ連銀のエコノミストだった2002年、中立金利と自然失業率の推計についての信頼性の欠如と、金利設定に当たっての問題点を扱った論文を、現在マサチューセッツ工科大学 (MIT)スローン経営大学院教授を務めるアタナシオス・オルファニデス氏と共同で執筆。両氏が示した解決策は「ファースト・ディファレンス」ルールと呼ばれることがある。

  異なった経済情勢に対し一定の金利水準を提唱する金融政策ルールは多数あり、米金融当局はそれらに厳格に従うのではなく、幾つかを参考にしている。ファースト・ディファレンス・ルールは、パウエル議長を煩わせるような観測されない変数に一切依存することなく、ウィリアムズ、オルファニデス両氏は「こうした概念について生じ得る誤解に影響されない」と記していた。

簡単な公式

  ファースト・ディファレンス・ルールはその代わり、簡単な公式の形で失業率とインフレ率の実際の変化に対応するよう当局者に提言するもので、金融当局がどのように政策運営を進めるべきかについてのパウエル議長の説明にぴったりと合致する。

  同ルールの最も荒削りなバージョンを用いて19、20両年末時点の失業率とインフレ率の当局者予想の中央値を代入すると、それぞれの時点にふさわしいフェデラルファンド(FF)金利はいずれも2.3%とされた。これは、現行のFF金利誘導目標レンジ(1.75-2%)から0.25ポイントずつ2回利上げすれば到達する水準で、当局者が6月の最新予測で示したそれぞれ3.1%、3.4%を大幅に下回る。

  しかし、最近の顧客向けリポートで同ルールについて記したドイツ銀行のシニアエコノミスト、マシュー・ルゼティ氏は注意を呼び掛ける。ルゼティ氏は、パウエル議長の見解はウィリアムズ氏の論文に合致すると考えられ、ウィリアムズ氏が金融当局内で影響力があるのも明らかだが、いかなる政策ルールにも両氏が機械的に従うことはないと話した。

  ルゼティ氏によると、同ルールには複数の別バージョンがあり、金融当局が半年ごとに議会に提出する報告書にあるような一段と複雑なものの場合、提唱された金利水準は当局予想にもっと近い数値となるという。

  「米金融当局はこうしたルールを指針として見ている公算が大きいが、当局の反応がどのようなものになるか実際に推測できるとは思えない」とルゼティ氏はコメントした。

原題:Here’s a Rule to Help Powell Manage Fed’s Uncertainty Problem(抜粋)

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