三菱モルガン社長がハラスメント根絶を決意、「体育会的文化」が温床

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  • 「事実をしっかり調査した上で厳正な処分をしていく」-荒木新社長
  • 研修や処分だけでなく企業体質を変える必要ある-専門家

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荒木三郎社長は、ブルームバーグの取材に応じ、同社がハラスメント問題に直面していることを明らかにし、その根絶に向けて取り組む決意を表明した。背景には、同社内の「体育会的文化」が温床となっているとの認識を示した。

  4月に就任した荒木社長(60)は、ハラスメント問題について「エクイティでそういうのが起きている、あったというのは承知している。他の部署でも発生している」と実態を語った。今後必要に応じて「事実をしっかり調査した上で厳正な処分をしていく」方針を明らかにした。

荒木三郎社長

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  三菱UFJフィナンシャル・グループでは、東京とニューヨークで2件のハラスメント訴訟が起きている。同社は原告らの主張内容を否認している。三菱モルガンは6月までに大規模なハラスメント防止研修を実施し、7月から社長自身が全国を回り直接社員に撲滅を訴えていくという。

  三菱モルガンの人事部は5月下旬、「ハラスメント防止研修の実施」について部店長などに通達。副参事以上の社員に25分のDVDを視聴させ、ハラスメントを行っていないか、容認していないか、どうしたら職場からなくすことができるか、議論するよう指示した。ブルームバーグが入手した社内メモで明らかになった。

  同社は部店長らにハラスメント研修とその後のディスカッションの内容を6月中旬までに人事部に報告するよう指示していたが、社外などに研修内容を漏らすことは厳禁だとしていた。荒木社長はまた、7月からタウンホールミーティングを全国20数カ所で開催、「フェースツーフェイス」で社員から質問を受け付け、ハラスメント撲滅を直接唱えていくという。

  元東京都庁の職員で、一般社団法人職場のハラスメント研究所の金子雅臣所長は、「企業のトップが切羽詰まった状況でないにもかかわらず、このようなハラスメント撲滅の決意表明をするのはめずらしく、効果的で評価できる」と述べた。一方、単に研修や処分では十分でなく、企業体質そのものを変える必要があると指摘。金融機関は一般的に、「利益優先で、残業など順法意識が低い傾向がある」という。

「体育会的文化」

  同社長はハラスメントについて、「根絶するのはなかなか難しい問題だ」と述べ、その背景に「体育会的なノリでやってきたという文化の中で育った人たちが多い」と指摘。そのために「すぐに変われといってなかなか変わりきれないものがある。息の長い取り組みになると思う」と語った。

  国内では、大学の運動部を舞台にパワーハラスメント問題が指摘されている。5月には日本大学アメリカンフットボール部で、日大の選手が関西学院大学との試合で悪質なタックルをしてクオーターバックを負傷させる事件があった。その後の調査で、監督とコーチが選手に指示をしたことが判明している。

  厚生労働省が発表した2017年度の全国の労働局などに寄せられた労働相談の件数は、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が7万2067件と、過去最多を更新した。また、4月に同省が発表した28年度の実態調査結果によれば、32.5%の会社員が過去3年間に「パワハラを受けたことがある」と回答。4年前の調査では25.3%だった。

Saburo Araki, the head of MUFG’s brokerage venture with Morgan Stanley, says he wants to end workplace harassment.

(Source: Bloomberg)

東京とNYで訴訟

  同社では昨年12月、エクイティグループ機関投資家営業部で特命部長を務めていたグレン・ウッド氏が育休取得をめぐるハラスメントを受けたとして、東京地方裁判所に損害賠償などを求める訴訟を起こした。三菱モルガンは3月、ウッド氏の主張は事実に反し名誉と信用を著しく傷つけたとして解雇を通知。荒木社長は個別事案については「コメントしない」と述べた。

  訴状によると、同氏は15年に育休取得を申請したが、当初人事部から母子手帳を持っていないことを理由に許可されず、正式に認められたのは出産の約2カ月後で、父子関係を証明するものとしてDNA鑑定書を提出した。育休取得から復職後には業務上必要なミーティングに参加できなくなるなどハラスメントを受け、心身に変調をきたすようになったという。同社は賃金支払いのない休職命令を出した。

  またニューヨークでは3月、日本株の営業を務めていた藤井俊輔(スコット・フジイ)氏が人種や国籍などに起因する差別やハラスメントを受け、それを問題視すると報復措置として解雇されたと主張。MUFGセキュリティーズアメリカに150万ドルの損害賠償と地位の確認などを求めた。

  裁判所への提出文書によれば、勤務評価は高く、報酬も増加傾向にあった。大口顧客から同氏が評価された際には、日本人の上司らから情報共有を怠ったとして根拠のない叱責を受け、また同氏にわからないように日本語で小声で話すなど、嫌がらせされたという。

  社長に就任してから3カ月、ハラスメント撲滅の指揮を執る荒木社長。改革への意気込みを問われれこう答えた。「なかなか言葉では言い辛いけど、常に頭の中にある」。

英語記事:MUFG-Morgan Stanley Venture Chief Vows to Stamp Out Harassment (1)

(第6段落に専門家のコメントを追加しました.)
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