年後半は新興国と欧州に「リスク」と円強気派、クロス円総崩れとの声も

  • 円は割安な状況変わらず調整すべきマグマが蓄積-みずほ銀・唐鎌氏
  • ユーロ・円は120円割れ、豪ドル・円は70円台半ばへ下落との予想も

Japanese 10,000 yen banknotes.

Photographer: Tomohiro Ohsumi / Bloomberg

トランプ米政権の保護主義などを背景にリスク回避で円が買われた2018年前半の円相場。年後半は新興国や欧州を巡るリスクが震源地となる形で一段と円高が進む可能性がある、と円強気派はみている。

  米国の相次ぐ利上げや米中貿易摩擦を受け、インド、インドネシア、フィリピンなど主要アジア新興国の株式市場からの資金流出は今年に入り240億ドルに達している。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、米金利上昇でドル建て資産の投資妙味が改善すれば「新興国通貨は選ばれない」とし、「去年新興国に入ったお金の量を考えるとまだまだ資金流出の余地がある」と指摘。アルゼンチンやトルコを中心とした5月のような新興国市場の混乱が年後半に再燃するとみる。

  みずほ銀はドル・円相場で年内1ドル=98円までの円高を予想している。唐鎌氏は、実質実効為替相場の長期平均比で円が割安な状況は変わっておらず、「調整すべきマグマがたまっている」と分析。「市場全体がリスクオフになっているときにはクロス円(ドル以外の通貨の対円相場)も総崩れになっているだろう」と語る。

全面高

円は2018年前半に主要10通貨全てに対して上昇

欧州は政治の秋

  欧州は秋に政治の季節を迎える。イタリアでは10月にも来年度予算案審議が本格化し、低所得層への最低所得保障や減税などポピュリスト的政策の推進を表明している政府と財政規律重視の欧州連合(EU)との間で対立が表面化する恐れがある。ドイツでは10月の地方選挙を前に、移民政策を巡ってメルケル連立政権内部での対立が深刻化しており、政権崩壊の危機に直面している。

  三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの内田稔チーフアナリストは、「クロス円ではユーロ圏の政治がリスク要因になる。欧州が不安定化するとユーロ・円が急落し、最大1ユーロ=120円割れまでは十分あり得る」とみる。足元のユーロ・円相場は129円前後。また、年後半は米利上げ局面の天井を市場が意識し始めることでドル安に転じ、ドル・円は最大1ドル=104円まで円高が進むと予想する。

  年前半の円相場を揺さぶったトランプ政権の保護主義については、米中間選挙を11月に控えてさらに先鋭化するリスクが警戒されている。米中貿易摩擦の激化で中国景気の減速感が強まれば、鉄鋼石輸出などで中国と関係が深いオーストラリア経済に打撃となり、豪ドルへの影響は避けられない。

  しんきんアセットマネジメントの加藤純チーフマーケットアナリストは、豪インフレ率が上がらずに19年中も利上げは行われない見通しが強まれば、足元で1豪ドル=81円台の豪ドル・円相場は「70円台半ばくらいになってもおかしくない」とみる。

  米利上げ加速期待からのドル高圧力と貿易摩擦懸念からの円高圧力の綱引きで、ドル・円は春以降、108円から111円のレンジ相場が続いている。年前半の値幅は1月高値の113円39銭から3月安値の104円56銭までの9円弱。年後半もこのレンジに収まれば、年間の値幅は10円だった15年を下回り、変動相場制移行後の最小となる。ブルームバーグがまとめた市場のドル・円予測(中央値)は、9月末、12月末ともに109円となっている。

  JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長は、年後半は米経済一人勝ちの状況から世界的に「シンクロナイズドした経済成長」になることでドルが売られる通貨になり、ドル・円は「レンジの下限を試すような展開」を予想。ただし、「105円ぐらいになれば投資家が出てくるだろう」とし、「それほど円は強くならない」とみている。 

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