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雨宮日銀副総裁:「物価の上がりにくさは明らか」-一問一答

日本銀行の雨宮正佳副総裁

日本銀行の雨宮正佳副総裁

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

日本銀行の雨宮正佳副総裁

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

日本銀行の雨宮正佳副総裁への一問一答は以下の通り。インタビューは25日に行った。

インタビューを基にした記事はこちら

-現在の政策の効果と副作用

「今は副作用が効果を上回るに至っているとは思ってないが、これはだんだん累積的にたまっていくものなので、注意深くみていく。政策の判断は毎回の金融政策決定会合できちんとやっていく」

――物価のモメンタムは維持されているか。

「中期的に見れば潜在成長率を若干上回るペースで成長するというのが中心的な見通しなので、需給ギャップはだんだん改善していく。その中で労働需給のひっ迫が続けば、ゆっくりではあるが企業の価格設定スタンスも変わってくるので、人々の物価観も変わってくる。需給ギャップと人々の物価観という二つの点からみて、基本的にモメンタムは維持されている」

-総裁は7月の会合での物価点検の必要性を指摘したが、総括検証は否定した

「2016年9月の総括検証は、マイナス金利という全く新しい政策を採用した上、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)がマイナスになるなど、政策や物価を巡る環境が大きく変わった時に行った。今はコアCPIはプラスで、長短金利操作は円滑に機能しているので16年とは環境が違う」

「そうは言っても、物価の上がりにくさは明らかになっているので、春先前の円高や企業の価格設定行動が慎重だとか、いろいろな理由が考えられるが、もう一度きっちり分析して議論しようという声が大きくなった」

「毎回の金融政策決定会合で物価や経済動向を総括的に検証しようと努めているが、今年に入ってからの物価の動きを考えるともう一度分析や議論を深めましょうということだ」

-次の一手は物価の好転を受けての正常化ではなく、金融機関等への副作用に対応するための政策修正という見方がある

「物価安定目標に向けたモメンタムを維持するために必要な政策の調整を行うのが今の基本的な政策の枠組みだ。その心は、モメンタムが大事なので、一定のタイムフレームやデッドラインの下でメカニカルに政策をやるわけではなく、モメンタムを維持するために調整をする」

「必要な政策の調整は排除すべきではないし、そのために毎回の金融政策決定会合で議論している。政策の判断は効果と副作用の総合判断なので、どちらかだけ見て判断するということではない。あくまで2%に向けたパスがどの程度確からしいかということと、それに伴い発生する副作用の総合判断だ」

-80兆円めどと実際のかい離、削除の可能性について

「何か問題が起こっているとは思ってない。一方で、80兆円のめどは、日銀が金利を低位に維持するという姿勢を示すものなので、変更や削除する場合は全体としての金融政策の枠組みを議論する中で決める。ある条件を満たしたら削除するというように、個別にピックアップして議論する問題ではない」

-新発10年債の取引がない日が増えている

「日々の取引についてコメントするのは難しいが、これだけ日銀が大量に国債を購入しているわけだし、金利を政策ターゲットにしているので、価格のばらつき、ボラティリティーが小さくなる、それで取引量が小さくなるということはどうしても起きがちだ。ただ、それによって売りたい人が売れない、買いたい人が買えない、その時に適正なプライスがつかないという状態には至っていないと判断している」

-出口のリスクについてどう考えるか

「欧米が正常化に向かおうとしているときに日銀だけ緩和を続け、世界経済や市場にネガティブショックが起きた場合、追加的な緩和余地が限られることを考えると、早めに出口を出て政策対応余地を作っておいた方が良いという声があるほか、早めに出口に向かうことで市場動向等に悪影響を与え、デフレに後戻りしてしまうリスクを高めてしまっては元も子もないという声もある」

「結局、出口の議論や出口に向けた動きは、早過ぎてもいけないし、遅過ぎてもいけない。両方のリスクがあると言うことに尽きる」

「出口までにはまだかなり距離がある。いずれ経済や物価の好転が続いて出口に向けた環境が少しずつ整っていくはずなので、そうなればわれわれとしても金融政策決定会合で議論した上で、詳しく情報発信していくことになる」

-各国の中央銀行が日銀の経験から学び取れることは何か

「政策金利がゼロ制約にぶつかった後も、非伝統的政策が一定の効果を持った。日本でこういう政策をやった結果、経済が大きく改善し、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった。第一の教訓は、短期金利がゼロに直面した後でも政策対応は余地があるということだ」

「一方で、経済、金融の関係を含めて、物価の決まり方は非常に複雑で、一筋縄ではいかないことも同時に明らかになっている。一部で、あるいは海外の経済学界でも非常に単純に捉えていた向きもあるが、そう簡単なものではない。経済や物価という現象やその背後にあるメカニズム、決まり方について、その複雑さを謙虚に受け止める必要があるということは、非常に重要なレッスンだ」

「三つ目に、海外の中央銀行を見てもそうだが、金融政策手段はその時々の経済、物価動向を踏まえ、常に進化することが可能だということも重要な経験だ。これからも前例にとらわれず、しかしあくまで物価の安定という中央銀行に課せられた責務を達成するため、そうした気持ちで取り組んでいくことが必要だ」

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