【コラム】保護主義的な言動が市場を揺さぶる理由は何か-エラリアン

トランプ大統領

Photographer: Chris Kleponis/Getty Images

金融市場は長い間、政治的・地政学的動向の波及を無視することができた。しかし現在では、こうした出来事が成長や企業利益に引き起こしかねない混乱に対し、市場はずっと敏感になっていると見受けられ、それには十分な理由がある。脅威は拡大しつつあると考えられる一方、それに対する防御は弱まっている。全面的な貿易戦争の可能性が世界システムの慢性的な欠陥を是正する機会に転じない限り、ここ数年は効果的だった一連の守りは金融市場と経済の領域で圧倒される恐れがあり、経済領域でそうした事態となれば、打撃は一段と大きくなる。

  世界の株価は25日に下落し、S&P500種株価指数とダウ工業株30種平均はそれぞれ1.4%安、1.3%安となったほか、ナスダック総合指数は2.1%下げた。株安は、トランプ米政権が中国企業による米テクノロジー企業への投資の制限を検討し、より幅広く言えば、技術輸出の精査を強化する可能性もあることを受けたものだ。緊張の高まりを背景に、中国と欧州は米国の関税賦課を封じ込め、逆転させることを狙った報復措置に踏み切ったが、米国は一段と厳しい姿勢でそれに応じた形で、米国が新たな保護主義的措置を講じる可能性が高まった。

  金融市場が政治的・地政学的要因を自信をもって無視してきた期間が長く続いた後、株式を含むリスク資産がより敏感となっている理由は主に3つある。

  まず、全面的な貿易戦争は回避可能であって、現在の緊張は知的財産侵害への対抗策や通商協定の刷新、非関税障壁の削減を含む、一段と公正な貿易につながるような交渉プロセスの一環であると信じる見方が依然として多い点が挙げられる。だが、不確実性や意図せぬ出来事のリスクが高まっているのは疑いない。このような懸念は、今では貿易と国境を越えた投資の流れの両方を標的とする保護主義的な言動が最近広がっていることで浮き彫りとなっている。

  第2に、市場はもはや、世界的な経済成長の同時加速という説明で安心する状況にない。もっと慎重になって判断力を高めるだけのしっかりした理由がある。米国を顕著な例外として、成長の勢いが失速し始めたのは、ソフト・ハード両指標が既に圧力にさらされている欧州だけでない。中国では24日、国内の経済活動てこ入れのため、一部の銀行を対象とする預金準備率引き下げの発表があった。

  最後に、米金融当局が金融引き締めに向けた動きを継続するとともに、最近では、世界のシステム上重要ないかなる中央銀行からも、ボラティリティー(変動性)を抑制して安心を与えるような言葉が発せられていない。こうしたことで、ボラティリティーが高まった場合であっても、金融資産の価格について、以前と同じような流動性の支えやサーキットブレーカーにもはや頼ることはできないと投資家は認識しつつある。強力で安定をもたらす押し目買いの地合いはこうして弱まり、新興市場など構造的不均衡に直面する部分では特に、テクニカルな行き過ぎの可能性が大幅に増すことになる。

  これまでのところ、保護主義に伴う不快感の大半は金融面の変数に限定され、経済的な変数には及んでいない。さらに、世界的な貿易・投資戦争に見舞われる高い可能性を市場が完全に織り込む決心をした場合に比べ、動揺は深刻化していない。知見に富んだ合理的な政策策定が世界中で行われ、各国のほんの一部に利益となるが全体にとって厚生や繁栄を減じることになる事態を最終的には回避できるとの確信によって、混乱は封じ込められている。

  これが単に希望的観測にすぎないものでないよう期待しよう。

(このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Why Protectionist Rhetoric Roils Markets: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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