JT社長:増税後の加熱式たばこの価格、他社より「選択肢は多い」

  • 増税値上げで加熱式人気が再加速も、紙巻きと価格差広がる可能性
  • 高年齢層は「ボリュームゾーン」、全国販売網生かして挽回狙う

日本たばこ産業(JT)の寺畠正道社長は、10月のたばこ増税を控え、同社の加熱式製品「プルーム・テック」の専用たばこでは価格転嫁を巡る選択肢が他社よりも多いとの考えを示した。競合する製品に比べると税率が低い上に、製品の供給に制限があることを理由として挙げた。

  寺畠氏は13日のインタビューで、加熱式たばこ市場への参入では後れを取ったと述べ、「競合他社がどのような価格戦略を取るか、しっかりと見据えた上でわれわれのポジションを取らなければならない」と話した。税率の低さや流通量の制限から、増税後のプルーム・テック専用たばこカプセルの価格戦略について「取り得る選択肢はいろいろある」と述べ、価格を据え置く可能性があることを示唆した。

  政府は今年度の税制改正大綱で、加熱式たばこの課税区分を新たに位置づけ、紙巻きの税率を大きく下回っていた加熱式の税率を引き上げることを決定。今年の10月から5回に分けて、2022年度まで毎年度段階的に増税する。税制改正前の税負担率を見ると、米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の「アイコス」が49%、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の「グロー」が36%、プルーム・テックが15%と各社の製品間の税負担に大きな差がある。

  朝日新聞などの報道によると、加熱式たばこアイコスを販売するフィリップ・モリス・ジャパンの井上哲副社長は5月、増税に伴いアイコス専用たばこ「ヒートスティック」を値上げする方針を明らかにした。値上げ幅は明らかにしていない。

  野村証券の藤原悟史アナリストは、10月の増税後の価格設定について、「販売本数も少ないプルーム・テックは利益への影響も少なく、現状では税率も低い。値上げなしでもやっていけるだろう」と分析する。ただ、加熱式たばこの購入に当たり消費者は価格をそれほど重要視しておらず、値上げしなかった場合に他社との販売競争で有利になるかについては疑問が残ると指摘した。また、紙巻きたばことは異なる形状のカプセルを使うため生産コストが高く、税制改革が完了する22年度までに値上げは不可避とみている。

人気再燃の可能性も

  政府は紙巻きたばこも4年かけて1本当たり3円増税する方針で、今年の10月には1円引き上げる。すでにPMIは紙巻きたばこの全銘柄の値上げを財務省に申請している。寺畠氏は加熱式と紙巻きに価格差を設ける会社もあるかもしれないと述べ、加熱式たばこの人気が「再加速する可能性もある」との見通しを示した。

  アイコスとグローの全国販売開始時期はそれぞれ16年と17年。一方でJTは今月、プルーム・テックの全国販売にこぎ着けた。他社の後塵(こうじん)を拝したJTにとって、追い上げのチャンスとなり得るのが高年齢層の消費者の開拓だ。同社の調査では、喫煙者の4割超を60歳以上の高齢者が占めており大きな市場となっている。

寺畠社長

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  寺畠氏は高年齢層を「かなりのボリュームゾーン」と評し、プルーム・テックが若年層だけでなく幅広い年齢層の消費者に売れていると説明。他の2社の製品とは異なる低温加熱式のため火事ややけどの心配がなく、掃除の手間も不要のため扱いやすい点が高年齢層に好評だという。PMIは4月の決算発表時に、日本の高年齢層に同社の製品が浸透しきっていないとの見解を示していた。

  JTの強みは国内に張り巡らされた販売網にある。野村証券の藤原氏は、「高年齢層の開拓はマンパワー勝負。その点ではJTに分がある」と指摘する。若年層はインターネットなどからの情報で加熱式に転向するのに対し、そういった情報に接する機会の少ない高年齢層の開拓に当たっては地方のたばこ店への営業が効力を持つと語った。

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