武田薬がシャイアー買収で直面する2つの課題-ウェバー氏の一問一答

  • シャイアーと武田薬の認知度は日米で差、前例なく戸惑う株主も
  • 「タケダイズム」と研究開発で武田薬がリード、国際性では共通点も

武田薬品工業は、製薬大手シャイアーの買収で世界大手の一角を狙う挑戦を続けている。237年続く国内最大手のかじ取りを担うのはフランス人で51歳のクリストフ・ウェバー最高経営責任者(CEO)。11日のインタビューで、目下の課題について聞いた。

クリストフ・ウェバーCEO

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  株主の賛同が買収実現の条件となっていることから、ウェバー氏が直面する第一の課題は彼らの理解を得ることだ。武田薬とシャイアーの知名度は日米で差があり、異なるアプローチが必要となるが、ウェバー氏は両社の統合によるシナジー効果を強調することで賛同を得たい考えを示した。

  第二の課題は企業文化の異なる2つの会社をどう融合させるかだ。「タケダイズム」を掲げる武田薬の方が経営の基本方針が社内に広く浸透していると指摘し、買収を繰り返して拡大してきたシャイアーは研究開発に力を入れて来なかったことから統合にあたっては摩擦を伴う重複の解消は必要ないとみる。伝統的な日本企業と外国企業の統合になるが、自らが率いる国際的なチームで対応することで成功を目指したいという。一問一答は以下の通り。

ー株主への対応では日米で異なる部分はあるか

  「投資家は皆、統合で新たな事業展開がどうなるのかといった将来像についてより深く知りたいと思っている。ただ、国内の投資家はシャイアーを知らない人が多く、統合について理解するための障壁が高い。アメリカでは、ヘルスケア分野に投資している人の多くがシャイアーについて知っていたし、そのうちの一部は両社について知っていた」

ーシャイアーは現在、買収提案時に示した株価よりも低い価格で取引されているが

  「統合によるシナジー効果が見えていないというわけではなく、前例がないということだと思う。そのため、どのように統合されるのかが見えないのだろう。例えば、日本企業が外国企業を自社の株式で買収するというのは初めてのことだ。ロンドンでの上場が廃止されるため、シャイアーの株式に対し日本の武田薬株かニューヨークの米国預託証券(ADR)が割り当てられるというのも前例がない。

-統合はどのようにして進めるのか

  「その点は心配していない。そうでなければ買収していない。私のチームは非常に国際的で、8つの国籍が混ざり合っており、そのうちの大部分が海外を拠点にしている。シャイアーの事業本部はボストンとチューリッヒにあり、武田薬の海外拠点と同じだ。こうした類似点は非常なプラスになるだろう。統合の難しさから失敗に終わる買収は数多くあり、簡単でないことは承知しているが、私たちは分析を重ねていきたい」

ー統合にあたり最も難しい点は

  「製薬業界における買収や統合では、しばしば研究開発の分野を混乱させてしまうことが多い。長い時間がかかるうえにパイプラインへのインパクトも大きく、とても複雑だ。ただ、武田薬の強みは研究開発で、シャイアーは研究に多くの投資をしてこなかった。つまり、われわれは一方の研究機関を閉鎖したり、統合させたりといった混乱を招くような事態に直面しなくてもいい。研究開発部門の統合は比較的容易に進むだろう」

ー両社の文化の差を埋めるために何が必要か

  「新しい企業体を作っていかなければならないし、すでにそこに向けた努力は始めている。武田はずっと長い歴史を持ち、価値観という点でも非常に強い文化を持っている。私たちは患者中心でやってきた。患者の助けになることをして、社会からの信頼を獲得し、会社の評価を築き上げ、事業を発展させていく。希少疾患薬に注力してきたシャイアーも、同じく患者中心の企業だと思っている。組織として武田薬とそれほど異なっているわけではない。ただ私が見た限りでは、患者からの信頼につながるようなタケダイズムのような強い価値観は持っていない」

ー統合の成功をどのように判断するか

  「3年以内に武田薬をあらためて眺めて、世界の製薬業界でどのように位置づけられているのかを見てみる必要がある。どのようなパイプラインやサイエンスが生み出されているか、成長性、そして革新性といった点を考えることが大事だ」

ーウェバー氏の功績はシャイアーの買収の成否にかかっていると言われている

  「個人的な意図を持っているわけではなく、また自分のエゴを満足させようとは思っているわけでもない。武田薬がよい良い企業となるために必要な、そしてめったにない機会だと思っているから今回の買収を手掛けている。これは日本にとってもまれな機会だ。日本はこれまでグローバル・チャンピオンであるような企業を持っておらず、私たちが今回の買収を決断しなければこの先もずっと持たなかったかもしれない。チャンピオンを持つ国々は、M&Aを通して築き上げていった。グラクソ・スミスクラインサノフィもそうだ。これらのM&Aは非常に困難な道筋をたどったと言うのは簡単だが、何もしなければ一体どんな企業になっていたのだろうか」

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