米朝会談、すべてが勝者中国の思惑通り-日韓は当惑、何も得られず

  • 中国が提唱してきた「双暫停」モデルに沿った展開
  • 金委員長は拉致問題に言及せず-演習停止発言の意図把握中と韓国
Photographer: GREG BAKER/AFP
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得点を挙げたのは、米国と張り合う中国。米国の友人である日本と韓国に恩恵はなかった。

  トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の会談で最大の勝者となったのは、金氏自身を除けば紛れもなく習近平国家主席率いる中国だ。トランプ氏がここへきて開始したプロセスを、習主席は以前から提唱してきた。

習近平国家主席

写真家:Krisztian Bocsi / Bloomberg

  12日のシンガポールでの首脳会談でトランプ大統領は、期限を設定せずに交渉を進める考えを示し、米韓合同軍事演習を停止すると述べた。北朝鮮がミサイル発射と核実験を停止していることを考えると、こうした状況は中国が数年にわたって主張してきた「双暫停」(北朝鮮は核・ミサイル開発を、米韓は軍事演習をそれぞれ暫時停止する)モデルと対話の成立に当てはまる。

  さらにトランプ大統領は習主席をあらためて親しい友人と評し、北朝鮮への制裁強化における中国の役割に関して習氏に謝意を表した。習主席は米朝首脳の会談自体でも隠れた存在感を示した。同主席はここ数週間で2回、金委員長と会談。金氏は中国国際航空の飛行機で平壌からシンガポール入りした。

  オーストラリア戦略政策研究所のシニアアナリスト、マルコム・デービス氏はトランプ氏の外交について、「中国と北朝鮮、ロシアにことごとく間違ったメッセージを送っている」と指摘。「米国が残忍な独裁者にこうした約束を果たす用意があるのなら、同盟国に対する安全保障上のコミットメントを維持する上で、どれほど信頼されるだろうか」と述べた。

トランプ大統領と金正恩委員長(シンガポール 12日)

フォトグラファー:Saul Loeb / AFP via Getty Images

  米国にとってアジア最大の友好国である日本は、米朝会談で何一つ望むものを得られなかった。金委員長が日本人拉致被害者の問題に取り組むと表明することはなく、弾道ミサイル発射計画を制限する考えを示すこともなかった。

  米韓軍事演習停止の計画についても、トランプ大統領が韓国の文在寅大統領に事前に通知したかどうか、米当局者は確認できなかった。韓国大統領府の報道官は、演習停止というトランプ氏の発言の「正確な意味、意図」を把握しようとしているところだと述べた。同報道官は内部の検討事項であることを理由に匿名を条件に語った。

  米外交官として韓国に駐在した経歴を持つエバンス・リビア氏は、「日米、米韓の同盟崩壊を目指すのなら、今回のことはそのプロセスを始める最適の手段だ」と指摘。「首脳会談の開催そのものに加え、防衛的な軍事演習も終了する。金委員長が示した曖昧で不明瞭に思える前提と引き替えに、米国は大きく妥協した」と述べた。

原題:China Gets Everything It Wanted From Trump’s Meeting With Kim(抜粋)

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