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米朝首脳会談、トランプ大統領は少なくとも状況悪化させるな-社説

What could possibly go wrong?

What could possibly go wrong?

Photograph: Kyodo News/Getty Images

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トランプ米大統領は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と12日に会談するに当たり、「完全かつ検証可能で不可逆的な」非核化(CVID)を北朝鮮側から勝ち取りたい構えだ。それを手にすることはないだろうが、だからといって、会談が失敗に向かっていることにはならない。目標には至らなくとも駆け引きは成功と考えられる可能性があり、そのような見方をするのはホワイトハウスに限らない。

  金委員長の優先事項は体制の存続で、そのためには何らかの形で核兵器を保持するのが不可欠だと計算していることだろう。むしろ、シンガポールであり得る合意について、以下の2点を問うのはどうか。一つは短期的に脅威が減るか。もう一つは北朝鮮の将来的な核武装後退への道が開けるかどうかだ。

  米国がさらなる協議に合意する前にまず行うべき第1段階は、北朝鮮の核プログラムの前進を遅らせることだ。ミサイル試射および核実験の自発的な一時凍結を成文化し延長すべきであり、その順守を監視する措置も含めるべきだ。核物質の再処理・濃縮を直ちに中止することなども主張すべきで、ここにも順守を盛り込むべきだ。これらの措置が後になって逆戻りするにしても、北朝鮮が安定した核ミサイルの武力を配備する能力は先送りされる。

  次に米国は、北朝鮮にある戦略的な武器備蓄のあらゆる要素に制限を設ける堅固で期間短めの工程表を要求すべきだ。弾頭や核物質は申告と査察の対象とすべきであり、ミサイル発射装置や長・中距離の弾道ミサイル、固体燃料ロケットエンジン、開発中と想定される潜水艦発射ミサイルについても同様だ。少なくとも一部の弾頭は解体し、核物質は国外に移動させる必要がある。そうすれば、金委員長が今後の協議を長引かせたとしても、米国はある程度の実を得たことになる。

  このような段階的アプローチでは、北朝鮮に現在ある武器が当分の間ほとんど残されるのは事実だ。だが、完全な核放棄は専門家に言わせれば、もともと10ー15年かかる長いプロセスとなる。

  北朝鮮の能力を抑制する上限を設定し、そこに効果的な査察をプラスすれば、交渉担当者らは完全非核化への現実的な工程表づくりに今後取り組むことができる。国際原子力機関(IAEA)にも北朝鮮の査察に準備する時間が与えられる。その間に、金体制がもたらす脅威は大幅に減る。

  北朝鮮への見返りにも注意深い判断が必要だ。試射の凍結など、金委員長があくまで一時的な譲歩をするだけなら、見返りも同種の内容でいい。例えば、朝鮮半島での米軍事演習縮小、人道援助、国連制裁の一部凍結(解除ではない)など、あとで元に戻せる措置だ。

  トランプ大統領は今回のシンガポール会談で朝鮮戦争の公式終結宣言に前向きと見受けられるが、実際そうなれば、象徴的価値をもたらすかもしれない。だが、制裁解除や国交回復には、北朝鮮側から人権侵害やサイバー戦争、化学・生物兵器開発、麻薬取引、偽造などあらゆる不正行為への実のある行動が出てくるのを待つ必要がある。

  米国はこれら全てで中国と協調すべきだ。両国は北朝鮮が合意を破れば国際的な制裁が完全に「元に戻る」との点で一致する必要がある。と同時に米国は、アジアにおける自国の戦略的な立場を意識し続ける必要もある。トランプ大統領は大きな勝利と呼べる成果を挙げたいだろうが、韓国からの米軍撤退のような譲歩をしてはならない。そのようなことをすれば、中国の域内における立場が劇的に強まり、米同盟国はパニックに陥る。日本や韓国が見放されたと感じれば、自ら核抑止力を持とうとするかもしれない。

  北朝鮮は非常に難しい困難な問題だ。この問題解決で今週前進することは可能だが、トランプ大統領は少なくとも事態を悪化させることがないよう肝に銘じるべきだ。

原題:The Real Test When Trump Meets Kim Is Do No Harm: Editorial(抜粋)

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