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「早く安く酔える」高アルコール飲料が人気-物価は上昇も給料増えず

  • テキーラ3杯超相当のアルコール、市場規模は5年連続2桁増
  • 10年前にも高アルビール、人気広がらず撤退-依存症リスクもはらむ

「おやじ的には早く安く酔えるのが良い」。退職を間近に控えた安部史郎さん(58)は高アルコールの缶チューハイがお気に入りだ。「酔わないと自分を解放できない。味もおいしいし、大好きだ」と語った。

   アルコール度数の高い缶チューハイなどの飲料の人気が高まっている。実質賃金の低下などで節約志向が拡大しており、価格が安いうえに手早く短時間で酔える飲料の消費を後押ししている。コンビニなどでは350ミリリットル缶が約140円で販売されており、度数9パーセントの飲料の場合、価格は同量のアルコールを缶ビールで摂取する場合の3分の1で済む。

Canned Mixed Drinks As Higher Alcohol Products Gain Popularity In Japan

サッポロ「り・ら・く・す」アップルビネガー(左)とレモンビネガー

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  市場調査会社インテージによると、缶チューハイや缶カクテルなど割らずにすぐに飲める「RTD(レディー・トゥー・ドリンク)」と呼ばれるアルコール飲料の市場規模は、2013年度の2400億円から17年度には3300億円にまで拡大。このうちアルコール度数1-3%の商品は微減となったものの7-9%の高アルコール商品は5年連続で2桁成長を続け、17年度には13年度比7割増まで拡大した。特に40-50代の男性で消費量の多さが目立った。

高アルコールの伸び続く

RTDの市場規模

出所:インテージ

  サントリーホールディングスの調査によると、ビール大手各社の高アルコールRTDの売上数で見ると、同社傘下サントリースピリッツの「ー196℃ストロングゼロ」(アルコール度数9%)がトップ。17年には高アルコールRTD市場でおよそ半分のシェアをストロングゼロが独占した。女性を主なターゲットに据えたサッポロビールの「りらくす」(8%)は4月の販売開始以降、1週間で年間販売目標の2割にあたる21万ケースを達成。同社広報担当によると女性の社会進出が人気を下支えしているという。

給料増えず節約志向

  背景には節約志向がある。総務省の家計調査によると、17年の世帯の消費支出は292万1500円と00年比で13%減となるなど減少傾向が続いている。全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は4月まで16カ月連続で上昇しているが、17年度の実質賃金は前年度比0.2%減少しており賃上げが追い付いていない状況だ。

  キリンビールによると、RTD購入時の選択基準で「コストパフォーマンスがよい」を選んだのは66%。自宅でRTDを飲む人の数は各年代で上昇傾向にあり、17年までの10年間で3割増加した。同社広報担当者は物価上昇や将来不安など「生活防衛意識の高まりが価格以上の満足感を求めるより賢い消費へ変化している」ことが背景にあると話す。

家飲み文化

  ユーロモニターインターナショナルの宇都宮あかりアナリストは「根強い節約志向は家飲みトレンドにもつながっている」と指摘する。「日本の1人あたりのRTD年間消費数量は世界トップクラスで、今後も成長が見込まれている市場」と見る。インテージのデータでは17年度のRTD市場における高アルコール飲料の構成比は約57%だった。

  日本コカ・コーラは5月28日、日本で初めてとなるアルコール飲料3種類を九州限定で発売した。味はいずれもレモンサワーだが3%、5%、7%とアルコール度数で変化をつけた。宇都宮氏は「高アルと低アルでは求めている人が違う」と指摘。高アルコールはコスパを求める消費者に、低アルコールは女性や大学生など若い世代に需要があるという。

  高アルコールのビール系缶飲料も出そろう。17年7月にサントリーが「頂」(7%)を発売したのを皮切りに、1月にはキリンの「のどごしストロング」(7%)、4月にはアサヒビール「グランマイルド」(7%)が市場に出回った。5日にはサッポロが「レベル9」(9%)を発売する予定で、競争が激化している。

Canned Mixed Drinks As Higher Alcohol Products Gain Popularity In Japan

キリンビール取手工場の「キリン・ザ・ストロング」生産ライン

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  ただ、高アルコールが定着しつつあるRTDと比べて、高アルコールビールの見通しは不透明だ。宇都宮氏は、度数の高いビールはぬるくなった時の味に癖が出やすいと指摘する。足元では目新しさから消費者に受け入れられているが、長期的には「やはり普通のビールがおいしいということになるのでは」と予想する。

10年前は短命に

  ビール各社は約10年前にも高アルコールのビール系飲料を販売していたが、需要は伸び悩み一時的なブームで終わった。サントリーの広報担当者は「スッキリした味わいのままアルコール度数を高め、アルコール特有のクセや強い刺激が目立ってしまった」と解説。今回は麦芽量を増やし、コクのある味わいを実現したという。

  口当たりの良い高アルコール飲料は健康リスクもはらむ。アルコール健康医学協会によると、アルコール度数8%の500ミリリットル缶1本に含まれるアルコールの量は32グラムで、テキーラショット3杯超に相当する。

  駒木野病院(東京都八王子市)のアルコール総合医療センター長を務める田亮介医師は、高アルコールRTDについて「飲みやすい分、飲みすぎてしまう。短時間で酔うために作られたようなもの」と評し、アルコール依存症を誘発しやすいと警鐘を鳴らした。

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