日銀が財政再建のキープレーヤーに-金利抑制が新計画達成の鍵握る

  • 国債利払い費含む財政収支の赤字対GDP比3%に抑制-21年度まで
  • PB黒字化目標25年度へ先送り、社会保障費を抑制する「目安」削除
The Bank of Japan headquarters in Tokyo, Japan. Photographer: Tomohiro Ohsumi
Photographer: Tomohiro Ohsumi

政府の新たな財政健全化計画のキープレーヤーは日本銀行。そんな見方が市場関係者の間で広がっている。国債の利払い費の削減が鍵を握る新指標が中間目標として盛り込まれる方向となっており、金融緩和で金利上昇を抑制し続けなければ達成が困難となるからだ。

  5月28日開催の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)では、民間議員が基礎的財政収支(PB)の黒字化目標の達成時期について現行の2020年度から25年度への先送りを提言。21年度までに財政収支の赤字を国内総生産(GDP)比3%に抑制するなど3つの中間指標を新たに設定する。PBは税収・税外収入と、利払い費などの国債費を除く歳出の収支だが、財政収支の歳出には利払い費が含まれる。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、金利上昇による利払い費の増加が財政収支の悪化につながることから、「日銀に対するけん制になる。目標達成を難しくするような長期金利の誘導目標の引き上げは難しくなる」と指摘する。

  日本の債務残高対GDP比は、18年に236%と主要先進国で最悪の水準に上るが、13年4月に日銀が導入した異次元緩和下で金利は低水準を維持している。特に日銀によるマイナス金利導入により、16年2月以降、年限の短い国債の発行コストは実質マイナスで推移。ブルームバーグの試算によると、過去5年間の国債発行コストが消費増税2%分にあたる5兆円程度抑制された。

  みずほ総合研究所の野田彰彦上席主任研究員は「政府から日銀へのプレッシャーがより強まる可能性がある」とみる。デフレ脱却後も利払い費膨張による財政悪化を防ぐため、日銀が出口戦略に踏み出せなくなる可能性を示唆し、日銀が新計画の「キープレーヤー」になるとの見方を示した。

名目GDP比の財政収支赤字

両ケースともに新目標の3%を下回る

出所:内閣府

備考:成長実現ケースは2020年代前半に実質2%、名目3%以上、ベースラインケースは中長期的に実質1%強、名目1%台後半程度の経済成長を想定

  今年度の財政収支赤字は対GDP比4.4%。19年度の消費増税を織り込んだ内閣府の中長期試算では、21年度は2.6-2.8%と目標の3%を達成できる見通しだ。BNPパリバの河野氏は、安倍政権が消費増税後や20年の東京五輪後の景気の落ち込みを回避する追加歳出の財源確保のため、歳出余地を残す狙いがあるとも指摘する。

  新たな中間目標が盛り込まれる一方で、歳出改革の要となる社会保障関係費の抑制目標は削除される。現行の3カ年計画(15-18年度)では、同関係費の伸びを高齢化に伴う自然増に相当する年5000億円に抑制する「目安」を掲げていた。しかし、75歳以上の後期高齢者人口の伸びが20-21年に急減し、団塊の世代が同年齢に差し掛かる22年度以降に急増するなど振れが大きく、数値目標の維持は困難と判断した。

団塊の世代の高齢化、社会保障費抑制の足かせに

2022年以降、後期高齢者に仲間入り

出所:国立社会保障・人口問題研究所

  今年度一般会計予算の社会保障関係費は33兆円と過去10年間で1.5倍に増え、政策的経費にかかる一般歳出の6割近くを占める。前年度比の伸びは5000億円程度に抑制したが、予算総額は97.7兆円と6年連続で過去最高を更新した。安倍首相はアベノミクスによる高成長を実現し、税収を増やすことによってPB黒字化を目指すが、歳出改革なき財政再建は容易ではない。

  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、「アベノミクスで財政健全化は全く進んでおらず、先送りされているだけ」とした上で、歳出が拡大しても財政健全化が進むという「幻想を振りまいている」との見方を示した。

社会保障費は財政健全化の重荷

税収の過半を充当

出所:内閣府の中長期試算(ベースラインケース)

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