再エネの主戦場は「海」、三菱商など洋上風力を拡大-欧州や台湾で

  • 三菱商は英で世界最大級の事業に参入、住友商はフランスで出資交渉
  • 石炭火力や原発の停止により発電規模の大きな洋上風力の新設進む

三菱商事などの総合商社が海外での洋上風力発電事業への投資を拡大する。環境意識の高い欧州に加えて、新たな市場として台湾にも注目。発電時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを活用した電源の需要が高まる中、陸上風力や太陽光などと比べて発電規模の大きい洋上風力を主力と位置付けて取り組みを強化する。

  「北海沿岸に位置し、絶えず風が吹いている」。三菱商は3月、英国で発電容量95万キロワットと世界最大級の洋上風力発電所の開発から建設、運営を担う事業への参加を決めた。海外電力事業部の竹内優介・発電事業開発チームリーダーは、事業の命運を握る立地の良さに自信を示す。

三菱商事が出資するオランダの洋上風力発電 

Source: Mitsubishi Corp.

  周囲に障害物のない洋上風力は陸上と比べて発電効率が良いとされる。一般的な陸上での風力発電の設備利用率が発電容量の20-30%であるのに対して、三菱商が参加する案件は50%超を見込む。土地の制約が少ないことから大型の風車を導入しやすく、大規模な事業開発が可能となる。

  英スコットランド北部の沖合約22キロの海域に、直径160メートル超の大型ブレード(羽根)を備えた風車を100本前後設置する計画。発電容量は原発1基分に相当する。総事業費4000億円のうち、約7割を邦銀などから借り入れる。三菱商は33.4%を出資し、スペインのEDPリニューアブル(EDPR)、フランスのエンジーと共に取り組む。年内に着工し、2022年の運転開始を目指す。オランダ、ベルギーに次いで3カ国目の進出となる。

  ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによる昨年12月時点の予測によると、世界の洋上風力発電の規模は17年の1800万キロワットから、30年には1億1500万キロワットと6倍超に拡大する。フランスは23年、英国は25年までに石炭火力発電所を廃止するほか、ドイツは22年末までに原発を廃止する計画だ。既設の発電所閉鎖に伴う代替として、洋上風力発電所の新設が見込まれる。

黎明期のアジア市場

  ベルギーと英国での洋上風力発電事業に出資する住友商事はフランスでの2つの開発案件の取得についても、権益を持つエンジーなどと独占交渉に入った。同社広報部はコメントを控えているが、関係者によると今夏までにも取得する見通し。ドイツの洋上風力発電に出資している伊藤忠商事も資本提携する中国中信集団(CITIC)グループと共同で欧州を中心に拡大を狙う。

  現在、世界の洋上風力発電の8割超を欧州が占めているが、新たに注目を集めるのが台湾。25年までに原発を廃止する計画で、政府が洋上風力の導入を進めている。このほど実施した入札では、三菱商が現地の中国鋼鉄やデンマークのコペンハーゲン・インフラ基金(CIP)と組んで応札し、固定価格で政府に電力を販売できる権利を確保した。今後、建設許認可などが必要となるが、24年の運転開始を目指し、発電容量30万キロワットの事業開発を共同で進める方針。

  三井物産も入札を通過した他のグループへの参加を決め、台湾での事業参入を目指す。米谷佳夫執行役員・プロジェクト本部長は「洋上風力は欧州が先行しているが、アジア市場は黎明(れいめい)期にある。特に台湾は風況も良く、政府主導で投資、開発環境の整備が進められており有望」と期待する。

課題はコスト競争力

  一方、今後の課題となるのはコスト競争力。欧州では政府が一定期間、固定価格で電力を買い取る契約を結び、洋上風力の普及を後押ししてきた。ところが、風車の大型化などで発電コストの低下が進み、ドイツやオランダなどでは固定価格で買い取るという政府の支援がない形での入札も出始めた。他業種からの参入も相次ぐなど競争は厳しい。

  そうした中、各社が重視するのはより早期の段階からの事業参入。丸紅・海外電力プロジェクト第三部の岡垣啓司副部長は「リスクも大きいが、利益を最大化する余地は開発段階からの参入が一番大きい」と指摘する。同社は11年、既に運転を始めていた英ガンフリート・サンズ洋上風力発電に出資。3月に出資分を売却した別の案件は建設中の段階で出資した。蓄積した経験を踏まえ、今後は開発段階からの参入を狙う。

  環境、社会、企業統治を重視したESG投資が世界的に広まるなど、企業の脱炭素化への取り組みには注目が高まっている。三菱商は発電事業における実際の発電量に基づく再エネ比率を現在の約1割から30年には2割以上に高める目標を掲げた。住友商は発電容量における同比率を20%から35年に30%に、同じく丸紅は今後4-5年で2倍となる20%への引き上げを目指す。洋上風力の拡大が目標達成の鍵となる。

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