選挙前に広がる「自己検閲」-トルコ資産急落後も大統領批判見られず

  • エルドアン大統領はインタビューの中で中銀に利下げを迫った
  • 弱気な見方を公表すればライセンス剥奪されると恐れるブローカー

トルコでメルト・ウルケル氏を知らない市場アナリストはいない。国内最大級の証券会社で調査責任者をしていたが、エルドアン大統領が権力強化のため2016年に起きたクーデター未遂の背後にいたかもしれないとの観測を公表し、解雇されたのだ。

  これが今、教訓となっている。6月24日の大統領選挙と総選挙を通じエルドアン大統領は一段と権力基盤を強める可能性が高いが、トルコを拠点とするストラテジストやエコノミストらが公表する調査リポートの中で大統領批判はほとんど見られない。エルドアン大統領が中央銀行に利下げを迫り、それが通貨リラの急落を招いて以後もだ。

  同大統領はロンドンで今月行われたブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、選挙でトルコが完全な大統領制に転換した後、利下げ要求に中銀は従わなければならなくなるとの予想を示した。

  イスタンブールにある国営金融機関で働くアナリストの1人は「弱気なコメントを書こうとするたびに、上司や同僚からウルケル氏に何が起きたかを聞かされる」と匿名を条件に話してくれた。

エルドアン大統領(中央)-ロンドンで5月14日

撮影: Simon Dawson/Bloomberg

  
  たとえエルドアン大統領についてはっきりと語らなくとも、選挙前に相場が大きく動揺していることにトルコの市場調査担当者は神経をとがらせている。イスタンブールを拠点とする証券会社アルヌス・ヤティリムは21日朝の顧客向けメモで、「神よ、トルコを救いたまえ」と記し、「市場が指導力と方向を必要としているのに、中央銀行はただ見守っている」と指摘した。

  「弱気もしくは率直なリサーチコメントが欠如し、大丈夫だという誤った感覚」があると指摘するのはインベステック銀行のロンドン在勤トレーダー、ジュリアン・リマ-氏だ。

  同氏は4月20日の顧客向け電子メールで、そうした「自己検閲」の広がりを伝えた。「昨日の昼食を共にしたブローカー2人は、市場について独自の見解を表明することは許されていないと非常にあからさまに認めていた。もし弱気な見方を公表したら、ライセンスが剥奪され、職を失うだろうと言っていた」と記した。

2016年7月のクーデター未遂(イスタンブールで)

写真家:Burak Kara /ゲッティイメージズ

  AKインベストメントで働いていたウルケル氏はリポートの中で可能性が最も高いとは言えないと明確にした上で、エルドアン大統領がクーデター未遂の背後にいるのではと示唆した後、資本市場のライセンスを取り消された。同氏はまた大統領を侮辱したとの罪にも問われた。

  ブルームバーグはウルケル氏の携帯電話に電話し取材を試みたが、同氏は現在の職業や同氏に対する刑事訴追の現状についてコメントを控えた。

原題:A Big Chill Has Silenced Turkey’s Market Analysts(抜粋)

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