商船三井:大型新造船に浄化装置設置方針、排ガス新規制対応-関係者

  • 中長期の用船契約結ぶ荷主と協議し判断、すでに2隻を発注済み
  • 1基5-6億円の設置費用は1年程度で回収可能-アナリスト

商船三井は再来年から始まる環境規制に対応するため、今後大型船を発注する際には排ガスから硫黄酸化物などを除去する浄化装置を設置する基本方針を固めた。「海運業界の2020年問題」とも呼ばれる船舶の排ガス環境規制に対する国内海運会社の対応策が明らかになるのは初めて。

  方針は非開示であることから、複数の同社関係者が匿名を条件に明らかにした。同社は現在船隊の規模を縮小しており、新造船の発注は中長期の用船契約を締結している荷主向けが中心となる。スクラバーと呼ばれる排ガス浄化装置の設置には大型船であれば1隻当たり数億円かかる。追加のコストを運賃に上乗せする必要があるため、設置は鉄鋼、石油、自動車会社など荷主から合意を得られた船が対象になる。現時点では設置案を持ちかけた荷主企業のほぼすべてが応じているという。

商船三井のばら積み船

Source: Mitsui O.S.K. Lines

  商船三井がスクラバー設置の対象とするのは、石炭や鉄鉱石、穀物などを運ぶばら積み船、原油や石油・石油化学製品を運ぶタンカー、自動車専用船などの船舶。コンテナ船は、商船三井と日本郵船、川崎汽船の3社が共同で設立したコンテナ船事業の統合会社に事業が移管されており対象外となる。

  現時点では、18年度に完成する予定の大型ばら積み船とタンカーの計2隻にスクラバーを設置する予定。同社広報部は年間の新造船発注隻数については非公開としているが、関係者によると、大型新造船の発注は年間で少なくとも10隻程度を想定しているという。

海外でもスクラバー設置の傾向

  海外ではスクラバーの設置を選択するケースが増加している。スクラバー製造会社の1社、米CRオーシャン・エンジニアリングは15日、スコットランドの海運会社からタンカーや重量物運搬船など14隻用にスクラバーを受注したと発表した。商品取引会社トラフィギュラ広報担当のビクトリア・ディックス氏によると、同社は新造する32隻の原油・石油製品タンカーすべてにスクラバーを設置することを計画しており、第一船の受け取りは10月を予定しているという。世界全体で約20社のスクラバー製造会社があり、国内では三菱重工業三菱化工機富士電機が手掛けている。

  国際海事機関(IMO)は大気汚染防止策として船舶が排出する硫黄酸化物を減らすため、船舶用燃料の高硫黄C重油に含まれる硫黄分濃度の上限を、20年に現在の3.5%以下から0.5%以下まで厳格化することを決定。対応策は、スクラバーの搭載、軽油や低硫黄C重油など適合燃料への切り替え、硫黄分を含まない液化天然ガスなどでの代替の3つに分けられる。

  同社広報担当の岩上俊哉氏は、この方針については把握していないとし現在確認中とコメントした。

1年で回収可能との試算も

  JPモルガン証券の姫野良太シニアアナリストは、大型船のスクラバー設置費用として5-6億円、現在主流の高硫黄C重油と低硫黄燃料の価格差が1トン当たり250ドルで、燃料消費量を年3万トンと想定すると「設置費用は早ければ1年程度で回収できる試算となる」と指摘する。さらに「荷主が運賃の増額を認めれば回収はより早まる」と話した。

  海運会社にとっては荷主企業から選ばれる条件として環境規制への対応が重要なポイントとなっていることから、「早期に対応するほど企業全体としてさまざまなメリットを享受できる」との見方も示した。

  スクラバーには課題もある。国土交通省は17年2月に公表した資料で、スクラバーには排ガスを洗浄するために大量の海水を使用するタイプがあり、洗浄に用いられた海水は海中に排出されることから海洋環境への影響評価を行う必要があると訴えた。英海事コンサルティング会社ドゥルーリーのアナリスト、シェファリ・ショキーン氏は4月のリポートで、スクラバーがこれまで以上に「汚い解決策」として扱われ始めていると指摘している。

  ショキーン氏は、スクラバーは他の2つの選択肢と比べて温室効果ガスの排出削減にもつながらないことから、今後規制強化の対象となる可能性もあり、短期的な対応策に過ぎないと強調した。

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