高齢者の若返りにコミット、社会保障費減へRIZAPなど官民連携

  • 長野県伊那市の健康増進プロジェクトで体力年齢が平均37歳若返り
  • 医療費や介護費削減に期待、民間投資家から出資金募るケースも

高齢者の若返りで自治体の社会保障負担削減を-。「結果にコミットする」というフレーズで一躍有名となったトレーニングジム大手のRIZAP(ライザップ)グループが、独自のプログラムで高齢者の健康増進を実現し、医療・介護費減につなげた成果報酬を自治体から受け取る新事業を展開している。

  第1弾として長野県伊那市で試験導入された。自社のトレーニングジムで蓄積した10万人分のデータを活用したプログラムをもとに今年1ー3月に週1回、市民46人(平均年齢65歳)に体操や食事の直接指導を実施。同社は15日の決算発表で、プログラムを終了した39人の筋力や柔軟性から推定した「体力年齢」が当初の平均78.7歳から36.9歳若返り、同市から計175万円の報酬を得たことを明らかにした。

東京・巣鴨での敬老の日のイベント

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  人口約6.8万人のうち65歳以上が3割を占める同市との契約は、体力年齢が10歳以上若返った参加者1人あたり5万円を受け取る内容だ。さらにプログラム終了後の4-6月の医療費削減分の一部も追加報酬として受け取ることができる。ライザップの瀬戸健社長は、「結果が出なかったら1円も要りません」をうたい文句に、全国約1700自治体の半分へのプログラム導入を目指す。

  高齢化で増える社会保障費の削減に向けた官民連携が広がっている。健康増進や生活習慣病の予防事業に対して成果指標を導入し、地方自治体はその達成度合いに応じて民間事業者に報酬を支払う成果連動型の民間委託契約だ。

  2017年度の社会保障給付費は約120兆円に上る。NIRA総合研究開発機構は、25年度の給付費が16年度比で21%増の約141兆円に膨らむと推計。うち医療費は同25%増の47兆円、介護費は74%増の16.7兆円に増えると予想している。急務の歳出削減の切り札として期待されているのが予防の取り組みだ。

RIZAPの提供する健康増進プログラムに参加する伊那市民

Source: Rizap. Source: Rizap Group

  経済産業省は、生活習慣病の予防で医療費は数百億円、認知症予防で介護費は3.2兆円の削減につながると試算している。同省ヘルスケア産業課の岡崎慎一郎課長補佐は、「予防は玉石混交。効果のないものが跋扈(ばっこ)すると、予防産業全体がしぼむ」とし、「成果を出せるものが生き残っていける仕組みが必要だ」と指摘する。

  ライザップの瀬戸社長は「財源が限られる中で、健康も投資対効果が求められる時代」と指摘。「われわれがリスクを張って、成果に対して報酬を完全連動させるからこそ、自治体も住民も関わっている人は誰も損をしない」と自信をみせた。

SIB

  自治体から委託を受けた民間事業者が投資家から出資金を募るケースもある。「ソーシャルインパクトボンド(SIB)」と呼ばれる投資スキームだ。各国の社会的課題に応じて組成され、若者の就労支援、生活困窮者の支援などで先行しており、日本のような医療・介護分野での活用は始まったばかりだ。

  国内初となるSIBは17年に神戸市と東京都八王子市で導入された。神戸市は糖尿病の重症化予防事業、八王子市は大腸がん検診の受診率向上事業を民間事業者に委託している。事業はNPOや民間企業、銀行からの出資金を元手に実施され、自治体から得た報酬を投資回収に充てる。

  神戸市は、糖尿病の重症化予防のノウハウを持つ「DPPヘルスパートナーズ」(本社・広島市)に受診促進や保健指導を委託。同社がSIBの中間支援組織「社会的投資推進財団(SIIF)」や三井住友銀行から資金提供を受け、17年度から3年間の契約で事業を展開している。

  神戸市は市民の生活習慣や腎機能の改善、人工透析の予防につながった場合、最大で約3400万円を同社に報酬として支払う。糖尿病の1人当たりの医療費は初期段階の年5万円から人工透析になると年500万円に膨らむ。同市は今回の事業による医療費削減効果は最大1億7000万円強と試算しており、事業報酬を大幅に上回る。

  SIIFによると現在国内で50件ほどのSIB案件の組成が進んでおり、金融機関も注目している。三井住友銀行は、神戸市のSIB案件を新たな投資商品として個人投資家へも販売した。同行の絹谷健二成長産業クラスターグループ長は、社会に良いインパクトを与える投資に「世の中の資金が流れる時代が来る」とみている。

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