【コラム】米国株が景気回復に同調しない3つの理由-エラリアン

Photographer: Bryan R. Smith/AFP/Getty Images

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今年これまでの素晴らしい企業業績、世界経済の同時成長、記録的水準の自社株買いのどれもが、米国株の印象的な上昇につながっていない。ダウ工業株30種平均は11日まで7連騰したにもかかわらず、年初の水準をわずか0.03%上回っているにすぎない。S&P500種株価指数も同様に、前週を1月2日とほぼ同じ水準で終了した。

  米国株のパフォーマンスは、経済と企業のファンダメンタルズの改善がリスクの圧縮を伴っていることを示唆しており、これは市場の株価収益率(PER)低下に最も鮮明に表れている。実際、米主要3株価指数のうち年初来で6.5%上昇しているナスダック総合指数だけが、企業セクターや経済全般、自社株買いのパフォーマンスのより広範な改善と調和しているようにみえる。

  2018年に入ってのこのデカップリング(非連動)を説明し得る幾つかの仮説が考えられるが、以下に挙げる3つは投資家が今後直面するであろう課題に重要な意味を持つ。

  第1は、前向きな進展は既に織り込まれており、いわば本物のデカップリングではないということだ。過去2年を見ると、ファンダメンタルズとバリュエーションの不一致はそれほど目立っていない。17年に経済と企業業績の実際の改善を上回るペースで上昇したので、相場は単に平均へと回帰しているだけだ。この時間差は、今年の相場をけん引する重要な要因のうち2つが昨年既に伝えられた事実で容易に説明し得る。一つは1月からの減税で企業のリパトリエーション(自国への資金回帰)が可能となり、自社株買いの可能性を高めたことであり、もう一つは景気先行指標のポジティブサプライズで、その後実際のデータに反映された。

  第2は、持続可能性を巡る懸念だ。今年に入っての相場の一服感は通常への回帰以上であり、景気と企業業績の改善の耐久性を巡る懸念の高まりを反映しているとの見方が投資家の安心感をそぐ。世界経済の一部では既にモメンタム鈍化の兆候が表れており、それ自体に驚きはない。米国以外のシステム上重要な経済の一部で最近見られた大幅回復は、一時的要因によってもたらされた部分が大きい。成長の同時回復を維持するには、特に欧州諸国で政治的に難しい政策の進展が求められる。この解釈からすると、足元で軟化しつつあるファンダメンタルズへ収束する流れの中で、株価の勢いは弱まる公算が大きく、力強い株式投資パフォーマンスに戻すには、よりパワフルかつ持続力がある成長モデルに向けた政策主導型の大きな改善が必要になる。

  第3は、人工的な支えが失われつつあることだ。持続可能性を最も懸念する者は、中央銀行の政策変更も不安視する。市場の不安定化を示唆する兆しがあれば即座にボラティリティーを抑えるという姿勢から中銀が後退しつつあることは、トレーダーや投資家に一層明白になりつつあり、株式を中心に金融資産の再評価を強いるリスク要因を際立たせる。異例の金融緩和を解除し始めた米金融当局に、年内遅くから来年にかけて欧州中央銀行(ECB)や日本銀行が続く公算は大きい。人工的な支えが外されることで、市場は他の2つの変化にうまく対応することがより重要になる。
  
  この3つの仮説全てが現在の市場に影響していると強く思っている。多くの投資家にとって十分ユニークな答えになっていないかもしれないが、ここには重要な視点が含まれている。
  
(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:Why Stocks Don’t Reflect Improving Economy: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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