Photographer: Dimas Ardian/Bloomberg

「テキーラ危機」当時とは違う-新興市場が動揺してもアジアは大丈夫

  • マッコーリーのイドリス氏、90年代半ばのテキーラ危機と現在を比較
  • 今日の「アジア経済はかなり強くなっている」-イドリス氏
Photographer: Dimas Ardian/Bloomberg

足元の新興国市場で広く見られる乱気流は、20年余り前に世界貿易を揺るがした危機への道筋と似たようなパターンをたどっている。

  1990年代半ば、米国の金利上昇がメキシコ通貨ペソの切り下げを誘発。これにより資本逃避に拍車が掛かり、いわゆる「テキーラ危機」を招いた。そして数年のうちに売りはアジア地域へ広がり、新興国市場の危機の中心地となる。同域内の経済は急激に悪化し、複数の通貨が切り下げられた。そこから2018年まで早送りすると、歴史は繰り返すように中南米で危機が醸成されている。ドルと米国金利が上昇する中、アルゼンチンは緊急資金の確保を目指している。

  もっとも、今回に関してアジアは危機の波及に当時ほど脆弱(ぜいじゃく)ではないと、マッコーリー銀行の債券・外為戦略責任者、ニザム・イドリス氏(シンガポール在勤)はみる。中南米に端を発する足元の不安はテキーラ危機を思い起こさせるものの、今日の「アジア経済はかなり強くなっている」と指摘する同氏は、「経常赤字は実際に小さく、外貨準備は以前に比べはるかに高水準で、通貨は変動相場制へ移行している。今の状況は95年当時と全て同じではない」と説明した。
           
      

  こうした見方をするのはイドリス氏だけではない。オーストラリア・コモンウェルス銀行も、中南米発の危機が深刻化した場合、アジア通貨は他の新興国通貨と比較して健闘するとみる。アジア新興国の中でも珍しい経常赤字国の一つであるインドネシアの通貨ルピアは他の通貨に比べて脆弱で、こうした一部の例外はあるものの、今回アルゼンチンとトルコで深刻な売りをもたらした危機は、感染リスクが比較的少ない本質的に特異なケースであることを示唆している。
  
  米国のインフレ率上昇と世界貿易の緊迫化から年初来の上昇をほぼ帳消しにした新興国資産は先週上昇した。新興国・地域の4-6月(第2四半期)のベストパフォーマンス通貨10のうち7つをアジア通貨が占めており、アジア通貨は勝ち組だ。
         

Emerging-Market Scorecard

Seven Asian currencies are the top performing in EM this quarter

Source: Bloomberg

Note: Prices as of late Friday Singapore time

  アジアがより良い成績を上げる理由は次の通り:

経常収支

  シンガポールを筆頭に日本を除くアジアの主要9カ国・地域のうち6つが経常黒字で、台湾とタイでは国内・地域の経済規模の10%を超えている。経常収支の改善は、債券保有者に対してドル建ての返済能力がアジア諸国・地域に備わっていることを意味するとコモンウェルス銀の通貨ストラテジスト、アンディ・ジ氏は指摘した。

経済要因

  少なくとも07年以降の高水準に新興諸国・地域の株価と通貨を押し上げた2年に及ぶ上昇相場は、経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)に支えられた。そしてこの点でアジアがなお際立っている。

  国際通貨基金(IMF)の予測によると、18年のアジア新興国・地域の経済成長率は平均6.5%で、世界の全ての新興国市場の成長率4.9%を上回る。ブルームバーグのエコノミスト調査によると、米金融当局による金融引き締めや米国債利回り上昇という逆風があるにもかかわらず、日本を除くアジアの今年の物価上昇率は2.3%と、世界平均の3.3%よりも伸びが小幅にとどまる見通し。

  FPG証券の深谷幸司社長は、アジアのファンダメンタルズは他の地域より優れている上、政治および地政学リスクも小さい、と指摘。米国債利回りの上昇は米経済の強さを反映しており、アジアは他の地域よりもこの恩恵を受けると述べた。
  
原題:Why Asia Will Come Out on Top as Emerging Markets Get Shaken Up(抜粋)

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