決算前のトヨタ株変動、投資心理反転の表れか-市場関係者の見方

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  • インサイダー取引の可能性低い、決算プレビューの禁止も背景に
  • トヨタは今回初めて取引時間内に決算開示-投資家と対話強化の一環

決算開示直前から動意含みとなった9日のトヨタ自動車の値動きについて、市場関係者の間では弱気に傾きすぎていた市場心理が反転へと向かう表れだったとの見方が広がっている。

  トヨタ株は9日朝方から前日比1%安を中心にマイナス圏で推移していたが、決算開示16分前の13時9分に1万4700株、同21分に1万株などと断続的に買いが入り、一時はプラス圏まで浮上。その後、正式開示を受けて3.8%高で取引を終えた。10日も一時2.4%高の7604円と2月7日以来の高値となった。慎重な見方に傾いていた一部の投資家が弱気姿勢を巻き戻した中で、ポジティブサプライズとして受け止められ、決算評価の勢いは続いている。

イベントに賭ける

  開示前から株価が下げ渋り傾向を強めたことについて、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は「それまで我慢していた、短期でイベントに賭けている人たちがそういう動きをする可能性はある」と指摘する。為替が足元でやや円安方向に振れている中、「上値を抑えた要因が一部ではげてきている。前期と同じように最初は減益でも増益になるといった読みなどから短期的な買い戻しが入り、さらにそれにつられた買いもあったのではないか」とみる。
  
  決算前日の8日のトヨタの株価は0.6%安と、TOPIXが0.4%高で取引を終える中で軟調さが目立った。自動車株は円高や北米販売の失速、保護主義政策などの懸念材料がある上、トヨタは従来保守的な決算を発表する傾向にあることから、投資家にはトヨタ株に対して「警戒感があった」と丸三証券の服部誠執行役員は言う。トヨタの株価収益率(PER)は9倍と、TOPIXの14.5倍を下回る。

  東海東京調査センターの仙石誠マーケットアナリストは、輸送用機器は懸念材料が多い中でアンダーウエートにしている投資家は多く、トヨタ株も「ここ1年、そんなに積極的に保有している投資家がいない」と指摘。ここから一段下げるというよりも、株主還元や為替動向などへの思惑から発表後の上昇を見込み、「リスクを取りに行った投資家の行動ではないか」と話した。

  さらに、アナリストによる決算プレビューが禁止され、日本株市場が企業側の決算数値を事前に織り込むケースが少なくなったことで、発表後の「個別株の動きが大きくなる傾向にある」と丸三証の服部氏は言う。開示前にトヨタ株が動意含みとなったことについて、「もしインサイダーであればもっと先に動くはずだ」とインサイダーの可能性は否定した。 

来年も継続

  トヨタは投資家との対話強化の一環として、今回の決算から初めて東京証券取引所の取引時間中に決算を発表。決算説明会も2部構成とし、豊田章男社長が中長期的な会社の取り組みを説明する時間も確保したほかメディアだけでなく銀行や保険会社など投資家の出席を認めるなどこれまでにない試みを行っていた。小林耕士副社長は決算会見で来年以降も取引時間内の開示を続けたい、と話した。
  
  9日午後にトヨタが発表した19年3月期営業利益見通しは前期比4.2%減の2兆3000億円と、市場予想の2兆1599億円を上回った。想定為替レートは前期より6円円高の105円と設定。為替・スワップ等の影響を除けば1300億円の増益となる。野村証券の桾本将隆アナリストは、原価低減を徹底し、次世代技術に積極投資する経営への意思が表れた決算で、ポジティブな印象と10日付リポートで指摘。目標株価を8500円から9300円に上げ、投資判断「買い」を継続した。

  想定よりも強気の見通しを示したことで「トヨタ単独というよりも、マーケット全体にいい影響を与えた。市場に安心感が出てきている」と服部氏は話す。また、足元の為替市場がトヨタの想定為替レートよりも円安傾向にある中では、しんきんアセットの藤原氏は業績の「さらなる上方修正の期待も出てくる」と話す。トヨタ株は10日午後2時42分時点で、TOPIXの上昇寄与度首位。

(5段落と9段落に市場関係者の見解を追加しました.)
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