つぶせないほど大きくなったアント-急成長で規制強化の矢面に

  • 「余額宝」はMMFとしては世界最大-顧客数は米国の全人口以上
  • どんなミスでも市場のみならず社会の混乱につながる恐れ-董希淼氏

地球上のどこを探しても螞蟻金融服務集団(アント・ファイナンシャル)のような企業はない。

  中国のアリババ・グループ・ホールディングを創業した馬雲氏が率いるアントは、オンライン決済から保険、融資、信用記録、資産運用などに至る多岐にわたる事業を展開。米国のペイパルやガイコ、ウェルズ・ファーゴ、エキファックス、それにブラックロックが手掛けるそれぞれの事業の一部を全て1社で提供するような会社だ。

馬雲氏

写真家:大隅智広/ブルームバーグ

  優秀なモバイルアプリと中国のミドルクラス台頭のおかげで、アントの「余額宝」はマネー・マーケット・ファンド(MMF)としては世界最大に成長。同社は3カ月ごとに2兆4000億ドル(約260兆円)余りのモバイル決済を扱う。アントの顧客数は8億7000万人に上り、その多くにとって日々の生活の中でのほぼ全ての金融・財務取引で同社は欠かせない存在となっている。

  だがこうした急成長こそがアントに難題を突き付けている。中国当局はアントなどの金融会社が12兆7000億ドル規模の中国経済にとってのシステミックリスクとなり得ることを懸念しており、これら企業の成長を難しくする可能性のある新たな規制を準備している。

  中国人民大学の董希淼上級研究員は「日の出の勢いを見せるアントへの当局の対応は若干鈍いが、何か手を打たなければならないというのが現在のコンセンサスだ」と指摘。「アントは大き過ぎてつぶせなくなってしまった。どんなミスであれ、市場のみならず社会の混乱につながる恐れがある」と話す。

Big Leagues

Jack Ma's finance startup is already among the sector's most valuable companies

*Ant's potential valuation is based on an April 11 report from Bloomberg News, which cited people familiar with the matter

Source: Bloomberg

  規制強化に向けた動きは、特にアントにとっては微妙なタイミングだ。同社は100億ドルの資金調達を取りまとめようとしているさなかで、近く新規株式公開(IPO)に向けた準備を始める可能性もある。そうなれば、4年前にアリババがニューヨーク証券取引所に上場を果たして以後で最も注目されるIPOの1つとなる。

#tictocnews(出典:Bloomberg)

  ブルームバーグ・ニュースの質問に対し、アントは「常に当局と密接に協力し、中国金融セクターの健全な発展を支える」のが同社の原則だと説明。同社に出資している9300億ドル規模の政府系ファンド(SWF)、中国投資(CIC)は問い合わせに対し、アントの経営には関与しないと回答した。

Leading the Pack

Ant's Yu'E Bao is the world's largest money-market fund

Source: Bloomberg

  中国人民銀行(中央銀行)にファクスでコメントを求めたが返答はなかった。アントの一部事業は、すでに人民銀など当局の管轄下にあるが、グループ全体としては規制の対象となっておらず、財務内容もほとんど一般開示されていない。アントに問題が生じても突き止められず、中国金融システムの安定性をリスクにさらすというのが最悪のシナリオだ。

  すでに規制が強化されたアントの事業もある。1日当たりの「余額宝」購入について上限が設けられた。米国の全人口より多い顧客を持つ同MMFへの資金流入に歯止めをかけたい人民銀からの圧力が背景だ。

原題:Jack Ma’s Too-Big-to-Fail Financial Giant Faces a Clampdown (1)(抜粋)

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